始まり
少女は父と母と三人家族、ごく普通の一般家庭に生まれた。普通の生活を送っていた…はずだった。あの時までは。
少女が学校から帰ると、いつもと違うことが一つだけあった。自宅の前に見覚えのない車が停まっていたのだ。
「誰だろ…お客さんかな?」
違和感を覚えながらも、少女はいつも通りに家の中へ入った。
「ただい…え?」
そこに広がる光景はいつも通りではなかった。少女が初めて『血の海』というものを目にしたのはこの時だった。その中に横たわる両親と…見知らぬ男。
「お…とうさん…?おかあ…さん?」
少女の存在に気づいた男が、少女に近づく。その手にはナイフが握られていた。死が目の前に迫ったその時、少女の中で何かが音を立てて崩れ落ちた。
少女にはセンスがあった。普通の人間は持ち得ない…持ってはいけない『殺しのセンス』が。
男がナイフを振り上げた瞬間、少女は男の懐へ飛び込んだ。まさか、先程まで目の前で怯えていた少女が、体当たりをしてくるなどとは思っていなかったのだろう。驚いた男はバランスを崩し、その場に倒れこんだ。男の手から落ちたナイフを手に取り、少女は倒れた男に馬乗りになる。そして、一切の迷いなく男の胸にナイフを突き刺した。
「お前が…お前のせいで…」
「う…あ…」
男が何かを言いたそうに少女に手を伸ばす。が、少女は男の胸から引きぬいたナイフを、男の手に取り突き刺した。男は動かなくなった。
「…お前…が…うう…あああああああああああああああ!」
少女の泣き声はいつまでも続くと思われた。しかし、しばらくして静かになったかと思うと、少女は…
「…ふふっ…あははははははは!みーんな死んじゃった。ははっ!何これ、楽しいなあ!殺すことってこんなに楽しいんだ。あはっ、あははははははははは!」
笑った。




