悩み事は湯船で
紅蓮の誰得お風呂タイム。とは言いつつそんな描写はあまり無い。
前回の話から数時間が経過してます。
読んでくださいます皆様に感謝をm(__)m
寝汗でベタついた体を洗いサッパリしてから湯槽に浸かる。風呂は一日の疲れを取る結構重要なものだ。リラックス効果もある。
「やっぱりお風呂は欠かせない。」
広い湯槽で伸びをしながら今日一日の出来事を思い出す。色んな事が有りすぎる一日だった。問題点が多くあった……
先ず始めは八雲の存在だろう。
八雲の持つ物を作り出す能力はこの世界にも少なからずは存在する。所謂錬金術だ。でも、その能力や八雲が使うほど危険ではない。危険なのは“八雲の持つ武器の知識”だ。その事は後で説明しよう。
作り出す能力――錬金術は、作る物の構造や構成物質を予め知っておく必要がある。分解・理解・再構築、物質保存の法則など科学的だ。私にはあまり理解できない。魔法のように見えて科学技術のため科学的な専門知識が無いと出来ない。
まぁ、魔・妖両方の術でも物を作り出す事は出来る。錬金術は魔力・妖力が無い者でも使える、知識と努力をすれば小さな物なら誰でも出来るだろう。ただし、集中力をかなり消耗するだろうから全ての人が出来るとは限らないけど。
そうそう、魔力と妖力は同じ力だよ。人間達は自分達の持つ力は魔力だと思っているけど、元々妖怪の血が少なからず入っているから同じなんだよ。違いと言えば、力の貯蔵量と生産量が圧倒的に妖怪の方が多いくらいの違いだよ。
昔、妖怪を悪だと訴えた国で人間と妖怪を全く違うモノと言いたかった王が区別したのが始まりだとか言われてるけど、定かじゃないね。
っと、八雲の話だった。
八雲はその分解・理解・再構築の理解をすっ飛ばして再構築してしまうのだ。驚異だ。しかも、作る物の知識が不充分でも出来てしまうチートっぷりなのだ。
例えば、銃があるとする。銃を作るなら内部構造や他にも色々な知識が必要だ。けれど八雲は銃の見た目だけで完璧に近く作れるのだ。凄いな。しかも、武器だけじゃなく色んな物も作れるらしい。
説明している私が頭がパンクしそうだ。
と、まぁ。そんな訳で、八雲を野放しにしておくのは危険だと思った訳よ。だからと言って白の王に保護してもらっても、何処ぞの馬鹿が悪用するかわからないから私の目の届く所に置いたわけです。
本音は「便利そうだから。皿とか物が壊れた時役に立ちそう」だからなんどけどね♪
「ふぅ……それにしても、結構距離があったのにドア開けた瞬間、正確に眉間を撃ち抜く何て……腕は良いよな……」
撃ち抜かれて空いたであろう眉間を人差し指で触れる。塞がっているのは知っているが、この体で初めて受けた致命傷になり得た傷だ。どうもちゃんと塞がっているのか心配になる。脳は損傷していないか?とか、ちょっと不安だ。生きているから大丈夫何だろうけど、後から後遺症が出たらヤダし。
脳の損傷で性格が豹変したりもするって聞いたし……大丈夫だよね? 暴力夫にはなりたくないよ。
触れてみてもそんなことは分からないので触っても意味なんて無い。なのに何度も確める辺り私は器が小さいのだろう。
「ん~~っと、……それよりも白の王がどう出るかが心配だなぁ」
また伸びをしてポツリとこぼす。
母さん達経由で話は伝わるだろうけど、メンツを潰した事にもなりそうで正直怖い。あの時は結構頭に血がのぼっていたから考えなしに動いてたけど、心配だ。白の王はどう出るのだろう。
「良くて何らかのペナルティ、悪くて打ち首……いやぁ…打ち首は無い。てか、あってほしくない。」
打ち首は洒落になんねぇわ。でも、白の王の事だ。何らかの無理難題な無茶ぶりを要求してくるかも。例えば……ダメだ、思い付きたくない。
やめよう、今日は疲れた。何せ強行軍だったし、つい二時間前まで高熱で寝込んでいたのだら。けポチや兎天達が一時的に影から出てこれなくなるほど重傷だったのだし、今日はもう寝よう。
「(にしても、藍苺の暴走は本気でどうにかしないと…)」
お湯に顔を半分浸かりぶくぶくと遊びながら考えた。
正直、世界がどうなろうがどうでも良い。私は残忍で冷酷で容赦ない性格なのだから。家族の中でも一番の性格破綻者なのだから。藍苺や家族が助かればそれで良いとさえ思っている。だからと言って誰かを陥れようとか思ってはいないよ。
ただ、守れるのは目の届く範囲、手の届く範囲しか無理だし、守るにしても生憎と腕は二本しかない。藍苺と家族を守るだけで手一杯だ。
とか言いつつ、私が守らなくても母さん達は自分で身を守るだろうけど。今は身を守る術が無い藍苺だけを守るだけ。それもいつかはお役御免になるだろう。
「って、なに考えてんだろ……疲れてるとき考えるとろくな事が無いよな~」
お湯から顔を出して湯槽の縁に顎を乗せる。もしかしたら私逆上せたかな?
ふと、自分の腕を見て思う。何だか前より細くなって……はないか。伸びたのか?身長はまだそこまで伸びていない。
さて、どうしようか? 今はそこまで男女の違いは無い。けれど、子供の成長は早い。その内藍苺の身長を越すだろう。
異世界でも男であったことは多い。けれど、どの世界でも異性を見てもなんとも思わなかった。それであらぬ疑いを掛けられたけど。
けど、それは愛しい異性が居なかったから。この世界では……どうなるのだろう?
私は……
「……って、何考え始めたよ私。ヤメヤメ~。どうせなってからじゃ分からないんだし!」
考えるのは止めにした。今は考えても仕方か無い……仕方か無いんだ。
今は原作通りに進むか、私達にどんな影響があるのかの方が心配だし。嫁さんの暴走は白神が何とかするらしいので一先ず良しとしよう。
あの話のあと嫁さんと随分話をした。シナリオ通りなのか分からないので大人しくしている事に話は落ち着いた。まぁ、大半は無茶な私を諌める言葉だったが。
唐突だが、ただいまの時間午前2時。丑三つ時。虫も眠る時間帯。虫とは言えここ“季節の箱庭”に生息するのは全て魔物か妖怪のみ。その為普通では聴けない綺麗な虫の音を聴けるのが利点かな。
さて、もう皆寝ている時間帯まで嫁さんと話し合っていたために、母さん達と話すことも出来なかった。明日にでも迷惑かけたことを謝ろう。
お風呂から上がり、冷蔵庫の麦茶をコップに注いで一気に飲み干す。風呂上がりは水分補給が大切だよ。皆もちゃんと水分取ろうね?紅蓮との約束だよ?
「夜中のテンションは変だな……何いってんだか。」
寝よう、ホントもう寝よう。
部屋に戻ると、お約束かのように嫁さんが私のベットで寝ていた。昔から何かあると人の寝床を占領してたよね~。大体が真ん中に寝るもんだから私は寝返りでベットから落ちるんだよ……。わかってんのかこいつ……わざとなら後で四の字固めでもしてやろうかな。
嫁さんは寝相が悪い。昔から真ん中で大の字になって眠る……けど、今日はどうやら違った。手足を伸ばすことなく体を丸めて寝ている。こう言う時は大抵嫌なことがあった時だけだ。これは本人も知らない事。会社で嫌なことがあっても何も言わないけど、この寝相でバレバレだった。
「(頑固で見栄っ張りでプライド高くて、私にはあまり弱さを見せたくなくても、寝相は素直なんだよね♪)」
今日一日の出来事は藍苺にとっては嫌な事だろう。聞いた話では包丁を持った私が怖かった様だし、トラウマにならないと良いなぁ。
嫁さんを少し端にずらして自分もベットに入る。そしてふと、思った。私は後何回こうして二人で寝られるのだろう。思春期を迎えればどんなに嫁さんが一緒に寝ようとしても追い返す気でいる。間違いはあってはいけない。
私はもう、親にはならない。……なれない。なりたくない……また間違えるのが怖い。……もうシュウの様に亡くしたくない。
何より……人の命を奪ってきた私が……親になれる気がしない。異世界でどれ程の人の命を奪ったか……まだ、嫁さんには話していない。
だから!……勝手だけど親にはならない。私にはなれるとは……思えないのだ。
大人になれば藍苺を遠ざけるかも知れない。勝手なかんがえだろう。
終わりの無い考えをグルグルと考えながら私は眠りについた……。
********
「漸く眠ったか……」
白い部屋に薄緑のカーテンが風ではためく、その部屋に一つだけあるテーブルに二人座り一人は床に正座している。
喋った真っ白い髪の長い男性は目を瞑りながら言った。彼にはどの様な場所でも自由に見ることが出来るのだ。その能力で紅蓮をサポートしていた。
一方もう一人は灰色の老人。紅蓮の母親達に色々な助言とお節介をやいている。正座しているのは黄色の髪の子供だ。
「全く、お前は何処まで迷惑をばら蒔くのだ。危うく紅蓮は死にかけ、藍苺は世界を破壊しかけたぞ。お前は懲りてないのか?」
「だっ、だってあのガキは随分と前に……」
「前だろうが今だろうがお前のしたことは変わらんよ。我らの掟を何度も破っておるぞ。ワシはもうお前を庇えんわ。のう、黄童子や?お主は何がしたいんじゃ?見た目は童じゃが中身まで分別の無い童になってしもうたか?」
「灰老も私ももう庇えんぞ。堪忍して自分のやってきた事を洗いざらい吐いたらどうだ? 多目に見るのはこれで最後だぞ?」
「ワシらが庇えるのももう最後だじゃ。他の神々がお前に何も言わないのはワシや白神がお前を庇ってるお蔭じゃぞ。その後ろ楯が無ければ……袋叩き、或いは消されるやも知れんのじゃぞ? お主とてそれは嫌じゃろ。」
年上の神二人に諭され、正座中の黄童子は頭を垂れて頷いた。その姿は前までの態度など何処に行ったのか物凄く大人しい。実は黄童子、つい最近まで他の神々にお説教されていて、先程漸く解放されたのだ。その時間およそ二週間弱。ノンストップでのお説教であった。
「お前の前任の神と同じ轍を踏む気か? 同じ様にはなって欲しくなど無いのだぞ。仲間を喪うのも、家族を喪うのも、もう懲り懲りだ。」
「お主の両親じゃな……あれは痛ましい出来事じゃった。」
「……それって二柱の神の事だよね?」
「ウム、そうじゃ。白神の両親は最高神の位に位置していた二柱の神じゃよ。じゃが……」
「私が童の頃に殺された。お前の前任の神によってな。」
「……」
バツの悪そうな顔で白神から顔を反らす黄童子はふと、思った。
「ん?でも待ってよ……大罪を犯した神が死ぬ事はあっても、普通ならそうそう殺せないもんでしょ?何で死んだのさ?」
「……厳密には死んではいない。神々には魂の器が無い。我々は純粋な魂の塊……神が大罪を犯した場合に与えられる“死”は魂の消滅を意味する。それは知っているな?」
「俺らにとっては常識だし、それ。」
腕組みしながら白神は遠くを見つめ言葉を続けた。
「神には役目がある。大罪を犯し消滅した時、新に後任の神を選ぶことが出来るのだ。しかし……」
「しかし?……あ、」
思い出した。そんな間抜け面をさらしている黄童子に苦笑いして白神は続ける。
「その二柱の神……私の両親の後任は未だに決まらない……いや、“決められない”が正解か。」
今まであまり口を挟まなかった灰老神が白神の話を継いで語る。
「お主にはこの意味が分かるじゃろ。」
「………」
「二柱の神は、魂を切り刻まれ飛び散った……。しかし、大半が集まり、後もう少しで完全に戻るだろう。」
嫌なことを聞いてしまった。変だと思っていた。黄童子にはあの何処にでも居そうな“二人”を白神が丁寧に助けるなど不思議でならなかった。何より、自分は世界に干渉し過ぎて怒られたのに白神は平然と誰にも叱られずに“二人”に干渉しているなんて……不公平だと。
しかし、それが理由なら……神々は賛成するだろう。何より、誰も二柱にはなれないから……。
二人は誰でしょう……。




