目を開けるとソコは?
ちょっとシリアス気味。
お読み下さりありがとうございます。m(__)m
瞼を開けようとする、しかし思いの外重い瞼だ。白神が言っていたように熱の所為で怠いのかもしれない。だが開けないとどうにもならないので開けると……
「え?」
「………?」
嫁さんこと、藍苺が鼻先まで近づいていた。顔がドアップである。
何?寝込みを襲いに来たか? そう言えば前世では朝だと言うのに襲いかかって来たこともあったな……朝だから止めて欲しかったが……いやぁ~若かったなぁ~。
「おい、何か誤解してないか?」
「え?寝込みを襲いに来たんじゃ無いの?」
「襲っ……誰が熱だした奴を襲うかよ! 熱を測ってたんだよ……デコ合わせてさ…。」
フムフム……ただ熱を測ってただけとな。しかし、嫁さんよ。その言いぐさだと熱を出してなかったら襲ってたの?って事になるよ? ま、今は女の子だからそんなことはないが……無いよね?無いって………ナイナイ……よね?
ま、まぁ、それは置いといて……。今何時だろう。
「えっと、お早う?かな? わたし今までどの位寝てた?」
「……六時間は寝てた。今、夜の9時だ。野菜のスープ…レンが作るより旨くないかも知れないけど……食べれなかったら果物あるぞ?桃とか洋梨……林檎と梨も。俺でも皮くらいは剥けるからな。」
……ちょっと不謹慎だけど、こういう時のジンは嬉しい。ま、何時もだって優しいけど、張り切っているところが…可愛いでしょ? でも、本人には言わない。だって可愛いって言うと怒るからね。私にはそんなところも可愛いけどね♪
「じゃスープ貰うよ。」
「お前のレシピ通に作ったし、味見もしたけど同じ味には出来なかった。口に合わなかったら無理すんなよ?」
「味見したんでしょ?なら大丈夫だよ。それに味ってのは人それぞれ……同じ味にはなかなか出来ないものだよ。」
自信なせげに言って盆に乗せてサイドテーブルに置いていたスープの入った器とコップと水差しをベットに設置した長テーブルの上に置く。スープは私が前に作った野菜を潰したスープだった。湯気がたち、時間帯からして温めなおしたのかな? それに水差しがあるのは助かる……汗をかいて喉がカラカラだから。
お風呂も入りたいなぁ……汗でベタベタだし。
スープは美味しそうな匂いで食欲をそそった。嫁さん、料理作れるようになったじゃない。これで私が居なくても……うん。大丈夫そうだね。
そんな先の事を考えながら渡された木のスプーンで野菜のスープを一口……うん、なかなか美味しい。冗談とかお世辞抜きで。
最低でもこれで私が出稼ぎ?に出ても飢え死には無いだろう。母さんは料理をすれば爆発、或いは壊滅的……。父さんは……不安だし。家でわたし以外誰も料理が出来ないからね~。今は嫁さんが出来るから安心なんだ。
………もう少しレパートリーを増やしたら、私も出稼ぎを視野に入れて行動しないと。
高熱が出たと言っていたが、今の体調は至って快調だ。寝汗はかいているけど、きっと言われなければ気が付かなかったと思う。
「スープ熱くないか? ちと火にかけすぎて煮立ってたからさ。まだ起きないと思って……冷めてちょうど良いかと思ったんだが……ホントに熱くないのか?」
「ん?いや、ちょうど良いけど? なら試しにあーん…」
「………は、恥ずかしいだろッ!(///_///)」
顔を真っ赤にしているぞ嫁さん。でもさ、前世でそっちがあーんしてきたよね?私も恥ずかしかったのだぞ?同じ目にあってもらおうそうしよう。
顔を赤く染めてワタワタししていた嫁さんを堪能してスープを平らげた。食欲があった私は、イスに座り、イジケつつ皮を剥いてくれた真っ赤な林檎を食べつつ……私は話を切り出した。
「ジン、よく聞いてね。」
「ん?」
未だに梨の皮も剥こうとしていた手を止めて藍苺――ジンはこちらを向いた。
「私の血を見て暴走したでしょ?」
「………あぁ。不思議と意識はあるんだ。あまり覚えてないけど。」
頬を人差し指でぽりぽりと掻いた。ジンが気まずいときにする仕草だ。
「アレは私の不手際だった。ごめんね。」
「俺にも責任はある。自分の心なのに……ホント、俺って弱いな…」
未だに手に持っていた剥きかけの梨を何も置いてない皿に置く。そして腕を組んだ……これも考えるときによくする癖だね。
「今回の事で俺も考えた……精神的に強くならないとな……けど、どうもお前の…“死”に対して平常ではいられないんだ。」
そう言って組んだ腕を解き、今度は手を組んで顎を乗せ肘を膝についた。
そのままジンは話を続ける。
「前世でのお前の“死”を思い出してから……凄く怖いんだ……また一人になるんじゃないかって。幸せな日常を知ってる分、置いていかれた時の絶望は……計り知れなかった。もう居ないと分かって……一人で家に居るのは……寂しくておかしくなりそうだった!……今、漸くお前に……ベルに逢えた。でも、また喪うのがどうしようもなく怖かった……。」
悲痛な叫び……静かに語るジンは、とても脆く見えた。膝を抱え、自らの腕で体を抱きしめ……一人で耐えていた。
そうか、ジンは一人になったのだ。前世の記憶を取り戻し、トラウマまで………
“私にジンを闇から救うことはできるのか?”
どうだろう。ジンは心が弱っている。弱い私に助けるなんて出来るのか?
直ぐに答えられないが、答は否……かな?今のところ。
私は自分に自信がない。自分に自信がない者に人を助けるなど出来るのか? 私は無理だと思う。人を助ける者は何かしら強さを持っている。それが身体的か精神的かの違いだ。
私には……確かに今の体は身体的に強い、むしろチートだ。だが、だからと言って助けられるのか?
「ジン……正直言ってね、私はあなたを甘やかしてたのかもしれない。そして白の王達も。」
私は“藍苺”に降りかかる災難を払うことしか見ていなかった。それでは閉じ込めているのと一緒だ。何事も経験がものを言う。最悪命の危険は排除するとして、ジンには立ち直ってもらわないといけない。
「私は、ジンにかかる火の粉は全て払おうとしてた。けど、それじゃダメなんだよね。私は……一応身を守ったり、感情をコントロールしたり出来る。けどね、何も始めから出来てた訳じゃないのを忘れてたよ。」
「レン?」
「私は10歳になったらこの家を出ていくよ。世間ではそれ位でも奉公に出てるから働けるし……何より、私がそばに居るとジンが育たない。何かにつけ助けたくて仕方なくなるし……だから、」
「………」
「別居」その一言が頭をよぎった。別に仲違いしてるわけでもない。本当は離れなくなんてない。
でも――――
「いつまでも甘えてたら、甘えさせたら……成長できない。お互いに。」
「それは……別居か?」
「単損赴任……の方が近いかも。後は出稼ぎ?」
おどけてみる。けれどジンは笑わない。当たり前か。
私は構わず話続けた。
「それともうひとつ。原作のシナリオの事で話がある。」
「………」
話をしながらジンの顔を見れば睨まれた。美形が怒ると怖いってホントだ。
「…話は……私達が起こした“イレギュラー”に対して世界がどう動くか?って事なんだけど。」
「……“イレギュラー”に対してどう動くか?」
一応話は聞いてくれるようだ。
「そう。もう原作のシナリオからは外れつつある。父さんの早すぎる解放、母さんの白の王との繋がり、黄の国の改革……まだ有るけど、まぁこんなとこか。あぁ、それと……私達の早い結婚と王宮からの離脱も有るね。」
「……そう…だな。元々のシナリオなら、“紅蓮”と“藍苺”の婚姻は12歳当たり何じゃないか?何も言われてなかったけど、あまりにも早すぎる。麗春さんと朱李さんは転生者だからシナリオ通には動かない。物語としては主人公が腐敗した自国を憂いて動き出すはずだし……手を貸す紅蓮が居ないなら……どうなるんだ?」
ジンの言う通りどうなるのだろう?
そう言えば「妖怪恋舞」のストーリーを話してなかったね。忘れてたのは秘密だよ?
「妖怪恋舞」はミケと父さんや他の何名かで作ったフリーゲーム。しかし、フリーゲームの域を超えた出来だとコアな人たちからは言われていた。
キャラクターデザイン、シナリオをミケが担当、プログラム構成を父さんを中心に数人で作られた。ちなみにメンバーは皆さんサークルのメンバーだ。何て名前のサークルか忘れたけど。
綺麗で魅力的な美形キャラのイラスト、綺麗すぎる背景と3Dの操作キャラ、フリーゲームの域を超えた操作性……趣味でどうしてここまで作れるのか……
バトルでもよりリアルにと、色々評判になった……らしい。私の周りではそんな話は聞かなかった。
特に驚いたのは声だろう。当時のフリーゲームと言えば、平面、キャラはポリゴン、声は所々あるかないか。しかし、ミケ達は完全フルボイスで作ってしまった……。
とは言え、フリーゲーム、それも趣味での制作だ、プロの声優に頼めるわけもない……筈なんだけど……何故か一人プロが混じっていたらしい。そのプロの人、まさかミケに脅されてなかったよね? まあ、遊び心があったか、何かしらメンバーと接点があったんじゃない?
えっと……そうそう、声を担当した人たちは一人を除き全員が素人。重要キャラからモブまで総勢100人以上……とても手が回らない。お陰で私まで駆り出させる始末……中には一人15役を演じた猛者までいる。もう一度言おう、皆さん素人です。
私はミケのごり押しを粘って退け一人だけに絞った。ま、最初は断ったのに結局演じるはめになったのは言うまでもないね。
ま、素人って言っても、役者の卵とか必ずも素人って訳でもない気がするけどね。
ストーリーは世界を壊滅させようとする魔王を倒すと言う一見簡単な善悪ではあるが……ネタバレしてしまうと、仲間が魔王化することもあるのだ。もう一度言おう“仲間が魔王化することもあるのだ”
つまりは……プレーヤーの選択次第で誰が魔王になるか分からないのだ。いくら好感度が高いキャラでも一つ選択を誤れば魔王になってしまうし、魔王を説得出来るが、そこでも間違えば魔王を倒しても世界的にはハッピーエンドでも主人公的にはバットエンドさえありえる。ミケよ、どうしてそうしたのだ?
詳しそうに語ったが私は未プレイだ。ソフトは貰ったがやる気はしなかった。だって、仮にも演じた役、紅蓮が魔王になるパターンが多いんですもの……そう、ゲームシステム上私が…紅蓮が魔王になる事が圧倒的に多いのだ。その次は藍苺らしいけど。
説明は後日もっと詳しくするとして……
何だろ……すごくシリアル…じゃない、シリアスな展開になってきた。ダメだ、シリアスは耐えられない。
「まぁ~、うん。なるようになる……かな。死亡フラグと魔王フラグを折るだけで他は様子見だね。どちらにしろ、ここは現実世界だし、何が起こるかなんて分かりはしない。私達の選択で死ななかった人が……死ぬ事も有るだろうし。」
「そうだな。ここは現実だからな。」
私達だって何もこの世界がゲームの世界だとはもう思っていない。私達は最初から現実だと思ってたけどね。
「現実でどう選択するかによって誰が亡くなるのは心苦しいけど、それが私達の命に関わるなら他人を気にしていられない。勿論助けられるなら努力はするけど。けれど、私達はそれほど万能ではない。」
「助けられるか、出来ないか……俺達はまた選択するのか……。でも、それは現実でも当たり前のことだよな。心苦しいけど。」
助けられる人間と出来ない人間。私達にそんなの選ぶ権利は無い。けれど、どちらか片方しか助けられ無いなら……助かる確率か高い方を選ぶ……のだろうか? はぁ~、こうして私達はどんどん泥沼に嵌まっていくのか?
「ま、今考えてもどうしようもないのかな?」
「うん。だな。」
話は一先ず終わった……と思う。
一段落ついたので嫁さんは桃を手に取り剥き始める……が、軟らかい桃は剥きづらいのか、果汁が滴り落ちる。
「桃を剥くのはコツがいるからね……切れないナイフなら剥きづらいよ。ほら、貸してみな?」
「……結局、レンが剥くことになるのか……」
桃を剥くときは林檎の様には剥けない。軟らかいので少しナイフを入れたら皮を引っ張る様に剥くと良い。どちらからと言えば蜜柑の皮を剥くのに似てあるかな。
剥き終わった桃を種から削ぐ様に切り離していく。桃は種が大きいし、実も軟らかく林檎の様には切れない……缶詰めの桃はどうやって取っているのかとても気になる。
器に入れて嫁さんの前に差し出す。
そうだ、今度桃と洋梨と林檎でコンポートでも作ろう。バターもあるし、パイでも作ろうかな。嫁さんもアップルパイが好きだし、私も食べたいし。うん、そうしよう。
「桃って切りづらいよな……軟らかいし」
小さめのフォークで桃を刺して口に運びながら嫁さんはポツリと言った。
そうだね、ぶきっきょな嫁さんには難しいかもね。特に、力加減が下手だから。
「でも、前より色々出来るようになったじゃない。」
「……そ…うかな?」
やや照れぎみの嫁さんの顔を見ながら明日のことを考える。うん、おやつはアップルパイで決まり。献立何が良いかな?
と、その前に、粗方食べ終えたらお風呂に入ろうと心の端で考えていた私だった。
多少胃の調子も戻って参りましたので再開します。m(__)m
今後ともよろしくお願いします。




