朝の大仕事
紅蓮と藍苺の毎朝の風景ですね。
お読み下さった皆様に感謝をm(__)m
驚いた拍子に落ちてぶつけた頭を摩りながらジト目でこちらを見る嫁さんこと、藍苺。いい加減に自分で起きてほしいものである。そうすれば驚いて飛び起きる事も無いだろうし。
「何で毎度……フライパンを叩いて起こすんだよ……」
「何でって…起きないんだもん。他に起きれるなら教えてほしい位だよ。フライパンとお玉が一番効果があるし。それとも自分で起きてくれるならそれが良いんだけど?」
「……起こしてください、お願いします。」
何でか素直に起こしてくれ宣言された。自分で起きる気は無いらしい……おい。起きろよ、自分で。てか、よく寝惚けながら……いや、寝惚けてるからこそ言ってるのか。
「さて、起きたことだし……身嗜みを整えないとね?」
「う゛ぅ゛~」
目を擦り眠そうに返事をする。この状態の時は何言っても無駄だ。半分も聞いてない。これも昔っからの変な癖だ。私はあなたのオカンじゃないんだけどね……。ちなみに藍苺は自身の母親にはこんな風にしたりしなかった今も昔も。小さい頃から確りしてた……様だし。私にだけ……なのは、嬉しい…が、正直複雑だ。
「はいはい……顔洗ってこようね?」
「ん~~。」
「ほら、前見て。目を開けて歩いて……歩いたまま寝な~い。」
子供を世話しているみたいに感じるのは決して気のせいなんかじゃない。こんなに子供っぽいのは朝だけだ。決して家にいる間ダメンズではない。あ、今は女の子か。
む?何やら嫁さんが柱に激突しそうな予感がする。予定変更。急遽部屋で顔をあらってもらうことにしよう。幸い私の部屋には洗面器と水が入った水差しが置いてある。もう、今日はそれで妥協しよう、そうしよう。
「藍苺……ほら、この洗面器で顔洗お?洗面台まで行かなくて良いから……」
「んん~~」
水差しの水を洗面器に注ぐ。この家の建つ場所は常春な環境なので水が冷たすぎる事は無いだろう。寝惚けた頭にはちょうどいい刺激になるだろう。
ポチに起こされ母さんはもう起きただろうか?今この家で起きている異変はきっと白の国で起きていることに関係しているのだろう。母さんには色々と聞き出さないといけないな……。
「うぅぅ゛……冷たい」
「目が覚めて丁度良いじゃない。ほら、水飲んでシャキッと目を冷ましてよ。」
「ん。」
受け取った水で始めに口をすすぐ。歯磨きは目をしっかり覚ましてからしてもらおう。
朝起きて水を飲むのはとても大事だと母が言っていた。水を飲むことで内蔵が目覚め目も覚めるらしい……確かに昔からやっていたからか私は朝の目覚めはバッチリだ。母に感謝だ。
「…………。。(〃_ _)σ∥」
「どうしたの?」
顔を洗い終わり、渡したコップの水を飲んだ嫁さんは何故か目を会わせてくれず、壁に向かって何か落ち込んでいた……。
「ね?どうしたの?」
「いや……えっと………恥ずかしい?」
「へ?」
「だから!、は、恥ずかしいんだよ……泣き顔見られて…さ。」
何年夫婦でいたと思っているんだ。8年だよ8年。色んな物を見てきましたとも。お茶目な所やちょっと子供っぽいところ、恥ずかしい失敗何かも嫌と言うほど見せたし、見たよ。
それを今更恥ずかしがられても……かえってこっちが恥ずかしくなってくるよ。
「……まぁ、恥ずかしがってないで、部屋に行って着替えてきなよ。その後髪結ってあげるから。」
「お、おう。ρ(・・、)」
直ぐ様部屋を出て隣の藍苺の自室に行った。相当恥ずかしかった様だ。だから、8年も色んな所を見てきたんだって……ホントに今更よ?
可愛いなぁもう…………
着替えを終えて戻ってきた嫁さんを各部屋に備え付けられている鏡台に座らせ髪を解く。癖が強いのは主に前髪付近。重力に逆らいつつ好き勝手に跳ねていた髪は前よりは纏まりを見せている。が、気を抜けばたちまち元通りになってしまうだろう。それに、髪というのは湿気に弱い。根気よく髪にドライヤーを当てながら解かし少しでも纏まるように癖をつけるのだ。
これがもう、一苦労だ何の……まぁ私が好きでやってることなんだけどね。
「ん~。ストパーに憧れるな……」
「そお?真っ直ぐ過ぎても変化なくて地味だよ?多少の癖があった方が個性が出て良いと思うけど。」
「それは癖っ毛じゃないからそう思うだけだ。」
「それ分かる気がする。自分とは違う事って憧れるよね?」
「まぁ…確かに。……って、イテテテテテテテ……」
今日は髪がよく絡む……どうやら今日の嫁さんの御髪はご機嫌斜めな様だ。どうしてもダメな場合は……
「椿油でもつける? 少し位ならべたつかないと思うけど……ホントに心持ちちょっぴり…」
「髪洗った時、泡立ちが悪いからやめとく。」
油ってシャンプーの泡立ちが悪くなるよね?だから癖っ毛だけど整髪料の類いは昔っからつけたがらない。それに今は紐で髪を結っているので紐が汚れるのが嫌だそうだ。少しだからそんなに汚れないと思うけど……。
「分かった。さ、前向いて。髪結うから。」
「ん。……今日は上に結うのか?」
「そ。で、私は下に結ってます♪逆にしてみました。」
「……何か、髪が逆立ってるぞ?」
嫁さんの髪は長さがバラバラなので上に結うと結った付近の短い髪が逆立ってしまうのだが……それも個性だと思えば良いんでないか? 前髪も纏まらず鳥の巣状態になっている。
「それも今だけだよ。全部の髪が同じ長さに延びたらもう少し纏まるからさ。前髪は無理だけど。」
「ん~~。そうかなぁ…。前髪は諦めてる。」
それでも大人しくしているので髪型に不満はないのだろう。そうだ。明日は嫁さんの髪を密編みにしてみよう。たまには良いよね?
結ぶ紐は藍色…と言ってもどちらかと言うと明るい紺色の紐を使う。私が間違えて使っていたあの紐だ。今の今まで忘れていたあの紐ですよ。漸く嫁さんに返せる。
「はい、終わり。」
「……紐が違う……」
「あの騒動前に間違えて使っていたからね……あれから2週間も経つのに気が付かなかったからさ。今日変えといた。」
「…ふぅーん……(別に気にしなくても良いのに…)」
それにしても……黒っぽい色に青系の色はあまり映えない……やっぱり黒には赤系の色が似合うよね。実際の藍苺の髪は紺色に近い黒だけど。
「なぁ…」
「ん?何?」
私に向かい合い真剣な顔で話始めた。
「なぁ……二人の時はベルって呼んで良いか?」
思わぬ言葉にちょっと驚く。
「もう違うってのも分かってはいる。けど、俺の人格は未だに“ジン”なんだ。お前は“紅蓮”だけど、俺には“ベル”としか思えない。今を否定しないが、前も否定したくない。その、何て言ったら良いのかよく分かんないけど……たまにはジンって呼んでくれないか?俺もベルって呼びたい……ダメか?」
……あぁ……やっぱり悩んでいただね。この問題は一概にコレって正解が無いから難しいよね。
私も少し悩んでいたのだ。いつも“嫁さん”
と呼んではいるが、心のどこかで“ジン”と呼びたかった。けど、ここでは私は“紅蓮”でジンは“藍苺”だ。だから……
「……二人っきりの時だけならね。そうそう、この名前ね…誰かに言ったらダメだよ。操られたりするかもしれないから。大事な名前だから……私の名前を言っても良いのは“ジン”だけだよ。だから、私にも名前を言っても良いと許して。」
「当たり前だろ“ベル”。」
前世の名前を呼ばれると何だか嬉しくなる。あぁ、私の前世は決して夢の出来事ではないと実感できる。この頃は記憶と知識の書を見ないと前世の記憶があやふやになってきたのだ……。だが、こうして名前を呼ばれると……私という存在が確かにあの場所に存在していたとどこか安心できるのだ。
「それとさ……」
「ん?」
「血の契約……俺としてくれ。」
驚きだ。まさかジンからそう告げられるとは思わなかった。
「え?……えっと…り、理由は?」
コレまた真剣な顔でこう言った。
「どちらも操られないため……それに、俺は嫉妬が強いって知ってるだろ?」
「そーですね……(ヤバ、何か、火がついてるよ……誰だよジンに火をつけたやつ!!)」
「なぁ? するよな?」
勿論拒否権なんて無いからな♪と釘を刺してくるジンに若干冷や汗が出る。ま、まぁ…ジンなら良いかな……いや、でもそうなると死亡フラグが建ちそうで恐い……う゛~~ん……
「そうすると死亡フラグが……」
「あ、そんなのもあったな……でも、知ってるし回避出来るだろ?」
「うん。二人共知ってるし……ん~~」
「そもそも、フラグ何て関係無いだろ。へし折れば良い。フラグはへし折るか投げるか爆発するもんだろ。」
イヤイヤイヤ……それってとあるゲームのネタだろ。ヤバイ、ジンまで白神みたいになってきた…。
「それに、俺もベルも良い具合にチートだし、早々死なないし死なせない。お前は俺より先に死ぬなんて許さない。俺の後しか許さない。」
「ねえ、ジンさん?今変なフラグ建てなかった?」
「知るか。」
何だか昔の性格に戻ってきた様だ。頼もしいやら不安やら……。
「元々さ、ベルはあの呪詛で死ぬ筈だったんだろ?詳しいことは聞いてないけど……白神が気を利かせて死を回避できた。なら、白神をフラグ回避に役立てれば良いだろ。使えるもんは使え。」
罰当たりな発言ではあるが一理ある。私達は巻き込まれた身だ。神々に責任があると言えば半数以上ある。とは言え、白神自身に責任は無いと言えば……無いのだろうが、連帯責任というものがある。異世界では御世話になったが、やはり死亡フラグを回避する事は別だろうな……よし。
「そうだね……うん。ちょっと考えとくよ。」
「あぁ。一人で抱え込んでも良いことなんて無い。昔もイヤと言うほど実感しただろ?」
「……何のこと?」
「嫌がらせ。受けてただろ。……俺に言えば良いのに……まぁ、一人で撃退してたけど……ストーカー被害にあってるのに何で黙ってたんだよ……」
ん?はて……ストーカー被害とな。心当たりが無いのだけど?
「お前……気付いてなかったのか?盗撮は立派なストーカーだろ。」
「盗撮……?」
「着替え中の写真送られてきただろ?アレだよ。送り主は同じサークルの男だったぞ。(絞めといたから何もなかったから良いものの)」
盗撮……あぁ!下着一枚の写真か……え?アレって嫌がらせじゃなかったの?
そう言えばアレは知らぬ内に解決していた。確かジンがどうにかしたとか何とか……。
「黙っていたのによく知ってたね……」
「あの写真、手紙付で俺宛に来てたぞ。「お前の奥さんは貰った。彼女は元々俺のものだ。」的な事が書いてあったぞ。」
「うわぁ……なにその気持ち悪い手紙。」
「大丈夫だ。絞めといたから。」
なるほど。なら良いか。それに昔の話だ。
話し合いで死亡フラグ云々は白神に脅す事に勝手に決めた。後で白神に聞いてみよう。あいつ、私を加護しているせいで呼んだら来るようになってしまったのだ。ま、便利な機能だと納得してしまおう。
さてと、身嗜みも整えたし、リビングに行きましょうかね~~。
藍苺は前世から寝坊助です。前世では目覚ましを一分毎に鳴らしていました(笑)




