黄の国では……
紅蓮が2週間眠っている間に起きた出来事の短編集……お目汚しになるかもしれませんが、読んでいただければ幸いです。
紅蓮が2週間の眠りについて今日で一週間。私も漸く落ち着いたわ……。一週間前は取り乱してマトモに自分の考えも言葉に出来なかったほど……私もまだまだね。
「麗春様、これはどちらに?」
「それは無用の長物。売り払って国を立て直す資金にでもしましょう。そんな金ぴかの成金趣味は下品だわ……あ、待って、そっちは国宝級の宝物よ宝物庫にしまっておいて。」
「この薄汚い花瓶がですか?」
「それは初代黄の王が王妃に贈った物の一つよ。薄汚く見えるのは古いからよ。その花瓶自体の価値は無いけど、国宝であることは変わらないのよ。」
「一つと言うことは……まだあるのですか?」
「えぇ、確か……王妃に贈られたのは全部で四つ。首飾りと指輪、それから腕輪とそのお皿見たいな花瓶よ。」
今私は黄の国で国を立て直す手伝いをしているところ。そして今城の至るところから装飾品をかき集めて趣味の悪い物と国宝級の宝物を別けているところ。
花瓶が国宝級の宝物と知っているのはそれがゲームのサブシナリオに出てくるキーアイテム、初代王妃の遺品だから。ゲームではこれら四つの内花瓶を除いた三つが盗まれそれを一番の好感度の高いキャラ(性別関係無し)と二人で見つけるというなんともお約束な恋愛パートなのだ。
実は汚いと言われるこの花瓶……一番のお宝なのだ。見た目に騙されることなかれ。これは千里の彼方まで見通す水鏡なのだ。そして嘘を見破る事も出来る優れもの。なのだが……
「(この水鏡が曲者なのよね……)」
この花瓶…改め水鏡は人を選ぶ。複数のキャラに満遍なく好感度を上げていると言うことを聞かない。水鏡の映す場所に三つの王妃の遺品が有るのだが……パートナーになったキャラが僅差で選ばれた場合、合計10回は違う場合を映す。そう、この水鏡は浮気者を嫌うのだ。
何でもこの水鏡は初代王妃の浮気防止でもあったらしく、間違えて映るのなら浮気していると証明する。これとは別に初代王妃が初代王に首飾りを贈った……勿論浮気防止の物。似た者同士だったのね……歴史上はどちらも浮気はしなかったようね。
「(長い時の中でこの水鏡の能力は忘れ去られた。でもそれは良いことなのかも知れないわ。)」
強すぎる力は争いを生む。この水鏡は水を注がなければただの薄汚い花瓶にしか見えない。このまま宝物庫に埋もれてたままの方が良いわ。
にしても、その王の首飾りを首輪代わりにでも付けとけば良いんじゃないの?後で舞子に提案してみましょう。あの子、黄童子に掛けられた術が解けてから多少素直になったのよね……。まだツンケンしているけど、反省は多少しているのよ?
自分の行いを反省して罪を背負っていくなら、私は……多目に見ましょう。私だって鬼じゃないわ。狐と虎なのよ?
「これくらいで良いでしょう。」
粗方分別を終え朱李の所に戻りましょうか。
この数年後その水鏡がシナリオ通りの騒動を起こすのはまた別の話。
********
俺は今、絶賛睨まれている。誰に?
「…………」
「…………」
黄の国の王、KY王子…改めKY王……は言いづらいか、ならKY陛下だな。そのKY陛下に四六時中睨まれているのだ。未だに横恋慕男なのかコイツは……
コイツとの確執(彼方の一方的な)は俺とレイが15の時。本当にゲームと同じなのか確かめるためレイと幼馴染みの白の王と黄の国に潜入した。白の王、狛李は無理矢理付いてきただけだが……
「……チッ」
何なんだ……人の顔を見るなり舌打ちとは……喧嘩売ってんのか? 受けてたつぞ?
「なんだ。さっきから……喧嘩売ってんのか?」
「……ふんっ!」
何なんだよ……。俺よりも年上の筈なのにこれじゃ子供だろ……子供?……あ、
「お前……レイの事で嫉妬か見苦しいぞ。」
「五月蝿い! お前が居なければ……」
居ても居なくてもレイはウジウジ横恋慕男は嫌いだぞ。男顔負けの男らしさを発揮することもある程男前な奴だからなレイは。何より……
「俺とレイは結婚しているんだ。もういい加減にしろ。何時までイジケているんだ?」
「チッ…(誰が……言えない……初恋が女と間違えてコイツだなんて……)」
「あ~……レイ早く来ないかな……(コイツといると何だか寒気が……風邪か?)」
KY陛下の仕事を監視して仕事をサボらないようにしている。が、何だか寒気がする。風邪何か引いてる暇は無いんだ。後でレイに風邪薬でも貰おう。
あぁ…レイ……早く会いたい……コイツの視線でストレスがマッハなんだよ。後でレイに胃薬も貰おう……。ハァ……でもこれも紅蓮や藍苺が今後苦労しないためだ……うん。父親として頑張ろう!
「………」
って、おいっ
「逃げ出すとは良い度胸だなぁ……コイツも追加な?」
俺が物思いに耽っているとKY陛下は逃げ出そうとしていた。仕事を投げ出して逃げる奴には……仕事追加の刑だ。有り難く思え。これがレイなら……止めよう。恐ろしくて考えたくもない。
「クソッ……」
「良いから仕事しろ。次逃げ出そうとしたら……山を倍にするぞ。」
脅しではない。この王の仕事部屋にあるドデカイ机に山が二つ……天井まで届きそうな山が二つもある。今までサボっていた分なんだ、何時まで逃げても無くなりゃしないっての……いい加減にしろ。
「(まさかコイツは俺とレイの二人っきりの時間を縮めるのが目的か?)」
「(これはどうすれば良いんだ? こんな難しい事分からん……あぁ……仕事が片付かんっ……!)」
ハァ……これは何時まで掛かるんだ? これが終わる頃にはまた次の仕事が来るんだぞ。もうコイツは王をやめた方が……ダメか。コイツの後継者はまだ十代前半……あまりに幼すぎる。何時また前宰相の様に王を傀儡にする奴が出てくるとも分からないしな……チッ、KY陛下ちゃんとしろよ……
「難しい……」
「(コイツホントに王に向いてなかったな…)」
ま、このまま行けば後数年後コイツの長男の第一王子が王位を継ぐだろう。第一王子は優秀だからな。あの子の母親は注意が必要だが。
「ほれ、後少しだ。徹夜でやれば明日には半分になるだろ」
「半分だと!? それしか!」
「ハイハイ、口よりも手を動かせ。俺だって書類整理しているんだぞ? これもお前が一人でやるならそうすればいいだろ。ん?」
「ぐっ………」
ここは地獄の書類処理場……今日もKY陛下は逃げようとしながら白龍の化身に睨まれながら仕事をしている。今日も黄の国は平和だ。
「ところで、側室達の件だが……子供達の継承権を破棄させて家に帰すぞ。年金を組むからお前の自己財産を全部使うからな。それでも足りないから白の王にお前借金しろよ。大臣達にはレイが話を通した。お前借金王な。」
「はぁ!? ちょっ、ちょっと待て!」
「いやもう話通した。なに、お前は腐っても王族だ。一般人より二倍は長生き何だから小さな内職でもチマチマやってれば……返せるんじゃないか?……多分(ボソッ」
「……いくらだ……」
「ん~~国家予算の半分かな?」
「はぁ!?……(バタッ」
あまりの事に気を失った様だ。別にこの額は誇張ではない。ホントはもう少し有るかも知れない。何せコイツは手を出した女性が多いのだ。側室だけじゃなく、城下の御手付きになった女性達にも割り当てているのだからそりゃ多い。
まさに身から出た錆びとはこの事だな。ざまぁ……とは軽く言えんな今回は。
舞子が仕掛けた呪詛の所為で亡くなったKY陛下の私生児達は全員で20人……全て乳幼児から3歳未満の子供だった。舞子は20人を殺してしまったのだ。子供を無くした母親達には慰謝料と口止めを含めた金を渡した。怒り狂っていた者も多かったが、俺とレイでKY陛下をコキ使うと説得することで何とか……和解したことにしておく。女って恐ろしい……特に子を亡くした母親はその倍恐ろしい。
ふぅ……舞子はこの罪を死ぬまで背負う事になるだろう。それは仕方ないことだ。自分のした事は責任を持たなければいけないのだから。
さて、KY陛下の私生児達は亡くなった者を除けば全員で50人……分かっただけでも。手を出した女性全員が妊娠したわけでは無いのだから……それを考えると「マジでお前馬鹿だろ」とKY陛下の前でポロっと本音が出たご愛嬌だろ。
そんな訳で、子供が居る手を出した女性達に年金を組む事にしたのだ。が、
「(やっぱり、貴族には多い額出さないと納得しなかったんだよ……)」
KY陛下が側室達に贅沢我が儘し放題にさせていた所為でもあるのだ。自分で自分の首を絞めたんだよ。
それにしても、金銭で今のところ許すって言ってるんだからまだ良い方だろ。女は恐ぇーぞ……これで済むならまだ良いって。後々何をしてくるか分からないが……
気絶したKY陛下を叩き起こす。仕事をさせなければならない。休憩は充分していたのだから今度はキリキリ働け。国のために。
あぁ~レイに会いたい……癒しが欲しい……。そしてお前はさっさと起きて仕事しろ。
*******
「紅蓮……大丈夫でしょうか?」
「………分からん」
「このまま……何て無いですよね?」
「……そうならないように願うしか無い。」
紅蓮が眠いついて早一週間が過ぎようとしている。目覚める兆しは無いらしい。直接会いに行けないので詳しくは知らない。
黄の国は変わりつつある。勿論良い方向に。なのだろう。
浮浪者は白の王により贈られた物資により炊き出しを配られている。テントや毛布も一緒に贈られて来たので雨風を凌げるだろう。
王宮の腐敗した貴族達は膿を絞り出すがごとく出された。私の母の生家もその対象になった。麒采と輝駿の母親の生家も対象になったいた。この国の貴族の大半が対象になった。金に物言わせ幅をきかせていた者は爵位を下げられ財産を半分程取り押さえられた。裏で悪どい事をしていた貴族は罪を暴かれ捕らえられた。勿論爵位も領地も財産も取り潰しとなった。
私達は母親の生家という後ろ楯を無くした。だが、母親達は私達の母親と言うことで今後一切、政治に関わることを禁止され、私達と縁を切る事で何処か田舎で隠居する程の額の年金を受け取りさっさと行ってしまった。私達は母親に見捨てられたのだ。いや、まだその方が良い。実際は売られたのだ。
「兄上……」
「泣くな輝駿……泣いたら惨めだ」
「母上は……っ……僕を捨てたのでしょうか?」
誰も「そうだ」とは本当の事でも言えない。いや、言いたくないのだ。それにしても、輝駿のやつ普段の私という一人称が僕になっているぞ。
それだけ輝駿には大打撃だったのだ。私とて悲しい……麒采は先程から涙を堪えながら輝駿の話を聞いている。そんな麒采はふと話しだした。
「なぁ、このまま序列に従えば、雷輝兄上が王になるんだよな?」
「………どうだろうな」
「雷輝兄上?」
正直、父上を見ていると王はなりたくない。それに自信もない。麒采はどう思いこの話を切り出したんだろうか?
「もしそうなら、俺は雷輝兄上を補佐する。絶対に父上のような間違いをさせないように……」
「……そうですね。僕もお手伝いします。僕は王位には興味ないので」
その提案に輝駿も乗ってくる。どうしたものか……
「そうだなぁ……そうだ。私でなくとも王位についた者を補佐しよう。勿論私も努力する。が、何事も適材適所がある。最も王位に適した者が居なければ……それも良いな。」
それから三人で未来の事を語った。父上の様に側室は絶対に持たない。後に王位を父上から継いだ私が最初に兄弟達で決めた約束であった。私に万が一跡継ぎが居なければ兄弟達の子供に引き継がせる……と、いつか権力争いを引き起こす約束をした。
後にこの約束は紅蓮を悩ませる事件の発端になるとは私達はまだ知らなかった。
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ボクの母上は紅蓮兄上の母上と喧嘩した。
何でも、紅蓮兄上の父上が好きだったのに紅蓮兄上の母上に紅蓮兄上の父上を取られたのが悔しいのだと泣きながら叫んでいた。ボクの父上ではなく、紅蓮兄上の父上だ。
ボクの両親は何処か可笑しいように感じていた。父上はボクに色んな物をくれる……けど、頭を撫でて貰ったことも、遊んで貰ったことも無い。白の国に行った時、王宮ので見た白の王と王子達の頭を撫でていた。その時は驚いた。誰もボクの頭を撫でてくれたことなんて無い。ボクの行儀が悪くても誰もボクを叱ってくれない……白の王子達はちゃんと怒られているのに……ボクは気付いた。誰もボク自身を見てくれていない。
紅蓮兄上の両親はこの黄の国を建て直すため働いている。その為ボク達側にいた人達は半分以上いなくなった。別にそれは大したことではないと思う。だってボクを見てくれないから。
その点紅蓮兄上はボクの事をちゃんと怒ってくれた。ボクを見てくれた……でも紅蓮兄上は眠ったまま起きない。
紅蓮兄上は目覚める事無く眠り続けている。藍苺姉上はきっと心細いだろう。何で紅蓮兄上の両親は一人にさせるのだろう……ボクなら一人にはさせない。でも、ボクにはその場所まで行く手段がない。ボクに力が有れば……藍苺姉上の側に居るのに……
ボクなら藍苺姉上を寂しくさせない……一人にしない。悲しませない。
そうだよ。藍苺姉上はボクが側にいれば良いんだ。ボクが強くなれば、飛んでいける程の力が有れば……藍苺姉上を幸せにできる。紅蓮兄上ではなく…ボクが!!
そうと決まれば即行動しよう。先ず手始めに……飛んでいける程の力が有る者を味方につけよう…………
その時のボクはとても簡単で単純な事だと思っていた。そして後から気付くのだった。これが初恋であったと。
初恋とボクが気づくまで後数年。
紅蓮兄上と恋敵になるまで後………
大雅の様子がおかしいのよ……
次の話は白の国の話です。




