脱出~僅かな時間~
まさかの投稿し忘れ……すいませんでたm(__)m
これで終わりまで……後数話…。この間お付き合いいただけると幸いです。
――――何度も何度も…何度も同じ事を、私は繰り返してきた。また私は繰り返すのだろう。自分でもよくもまぁ懲りないな―――――――
さぁ、ここからが正念場だ。2度目の藍苺の夢の中に白神の力を借りてやって来た。しかし……
「前も変な場所だったけど・・今回は物悲しい…より、何か殺伐として前より酷くなってないか?」
前に来たときは大きな姿見の様な映像を写し出していた…多分記憶何だろう……それが数多くある草原の様な場所だった。が、
「姿見が割れて砂嵐になってる……」
さながら壊れたテレビだ。それに草原の草が枯れている……これは藍苺の心に何があったのだろうか?
心が荒れているのかな? だとしたらどうやって助けたら良いのだろ・・・私は気の利いた事など言えるほど器用じゃない。藍苺を余計に傷付けたらどうしょう…………
考えているとふと見ると数多くある記憶の映像の中で不自然に真っ黒な姿見を見つけた。それは直感だった。ここに藍苺がいる。そう分かった。もしかしたら白神が何かしたのかもしれない……
私はその真っ黒な姿見を覗いた。
「何処まで見ても…真っ黒……」
底が見えない。近付いたらもう少し見えるかと思い手を触れて近付く……すると
「うわ……ナニコレ……表面がぷよぷよ……気持ち悪……ん?」
どうもこの真っ黒な姿見は何かぷよぷよしたモノで覆われているようで、この真っ黒が姿見が移すモノでは無いようだ。手触りは弾力性が強い……そうスライム……黒い砂鉄を混ぜたスライムのようだ。
指先で触ると震え、掌で触ると硬くなる……片栗を溶かした水溶液のようだ。面積が大きいと反発力が増し、接触面積が少ないと柔らかい……これなら刃物で容易く斬れるだろう。直ぐに元に戻るだろうが。スライム何て斬撃は効かないと相場が決まっている。だが……
「中に入る時間はあるかも」
中に入りさえすれば良いのだ。手遅れになる前に藍苺の所に行かなければ…
「物理的な攻撃は効かないと思った方がいいか…あ、なら狐火はどうだろう」
狐火なら誤って姿見まで傷付けたりはしない。出来るかも知れない。けれども、ここは藍苺の心の中、何が悪影響を及ぼすか分からない。尊重に行動しないと。
「慎重に、燃やすのはこの邪魔なスライムだけ。……スライムだけ。」
実際これがスライムかなんてどうでもいい。早く、早く行かないと!!
『狐火!!』
スライムってこの世界にもいるけど、こんな真っ黒な奴は聞いた事ないな……あの側室側の神がどっか別の世界から連れてきたのだろうか?それとも、神の力で造ったか……まぁ、そんなの関係なく燃やすだけだ。
弱点属性が炎だったのか、単に術に弱かったのか分からないが、スライム(らしきもの)はみるみる溶けていった。すると姿見には藍苺と思しき人が誰かと対峙していた。
********
目を覚ますとそこは暗い場所だった。周りは何もない……周りに目を凝らしていると前方から歩いてくる人影がある。体を起こしその人影を見つめた。
どんどん近付く人影は暗がりでも分かる程ボンヤリと周りが明るい。近付く人影は紅蓮だった。
漸く会えた……そう思い声を掛けようとする。が、声が出ない。さっきまで動けた身体も動かなくなっていた。
「(これは悪い夢か?)」
そう思いたい。何故なら……紅蓮は俺を……憎しみの籠った目で俺を睨んでいたからだ。
『オマエさえいなければ……私はイマゴロ……タノシク…あの子とクラシテイタ……オマエの所為だ』
今の言葉にさっきの出来事が呼び起こされる……
あぁ、そうだ。俺は……紅蓮に刺されたんだ……恨まれていた……
その考えが頭を支配する。もう愛情など無いだろう……恨まれていたのだから。
けれど、心の片隅で『本当にそう思うのか?』と問い掛けてくる自分が居た。きっとこれは俺の願望何だろう。
『オマエが…いなければ……いなければ……』
壊れたラジオの様に繰り返す……これは夢何だろう。けど、本当に恨まれて………
『そう思う? 私はそう思っていたら構ったりしないよ。』
ホントにそうか? 高い場所から突き落とす方が効果的だろ? その為に優しくするのも……
『手の込んだ復讐だね……』
とても俺には効果的だろ。現に夢にまで見ているんだから。
『本当に……恨まれていると思うの?』
違うのか?
『確かめれば良いでしょ。聞いてみれば?』
…………
『怖いんでしょ?』
………あぁ、怖い。怖くて仕方ない。嫌われたくない……
『なら、尚更聞かないと……昔の私に教えてくれたのは……君でしょ?』
……?
「憎い…憎い…ニクイ…ニクイニクイニクイニクイ…」
紅蓮の姿が歪み新たな姿をとった……ベルの姿になっていた。事故当時の姿だろう……頭から血を流し、両腕で子供を抱えた姿だった。子供の顔は見えないが、シュウの姿だろう。
「オマエの所為だ…ニクイ…オマエの…」
確かベルの死因は出血多量の凍死……あの時の季節は真冬だった。雪は降っていなかったが、氷点下だったはずだ。息子のシュウを抱きしめ体温が失われないように……横転した車の中で息絶えていた。シュウはベルの決死の行動も虚しく凍死だった。
『ホントに……恨まれていると思う? アレの姿に惑わされてない?』
惑わす?
『君の知っている彼女……今は彼か。その彼等が君を恨んでいると……本気で思うの?』
現に本人が、
『それは本当に本人? 君の知っているベルってそんな人? 現にあの事故は君も彼等の所為でもないよ。』
じゃぁ誰の所為だよ。
『運がなかった。私はそう思う。そう思うことにした。そうしないと前に進めないから。』
けど、
『けど、は無し。それに、よく周りを見て。よくアレを見て。ホントに君の知っている彼女と子供なの?』
問い掛けてくる声はどうやら俺の心の声とかではない様だ。何かの意思が俺に話しかけてくるようだ。誰なんだ?
『ホラホラ、集中! よく見れば分かること……』
―――よく見れば分かることってあるじゃん♪―――
―――例えば?――――
―――石像の後ろに本当の仕掛けが隠れてたり―――
ベルみたいなこと言うんだな。
『誰でも言うことだよ』
―――誰でも言うって――――
……ふっ……
『ん?何?どうかしたの?』
……いや、しかし周りを見ろって……身体動かないのにどうやって見るんだよ。
『首も動かないの?』
動かないな……
『感覚は? 地面に突いた腕が痛いとか…?』
そう言えば、手が冷たい……
『そっか……』
そんな事を聞いてどうするんだ? そう思っていると手の甲に温かい何が触れた。なんだ? 何もないのに……
『名付けて、幽霊作戦! 轆轤じゃないけど……』
………おまえ……レン?
『漸く気付いてくれた♪ そうだよ。今直ぐ隣に居るんだよ。嫁さんの目に見えないだけで。』
何だよそれ。
『後ね、嫁さんを刺したとか…私じゃないよ。そんな事をするなら自分の腹を掻っ捌くから。』
するなそんなこと。……違うんだな。
『うん。さて、もう起きる時間だよ。いつまでもお寝坊さんなんだから……変わらないね…』
1つ聞きたい。お前は…俺を恨んでいるか?
『……私はね……自分を恨んでた。何であの日出掛けよう何て思ったのか自問自答した。だから、ジンを―藍苺を恨んでなんかないよ。アレは私が勝手に迎えに行ったんだから。』
……そうか。
『ホラ、もう現実に帰ろ。悩むのはそれからにしよう。ここに居るとジメジメネガティブまっしぐらなんだから…ね?』
……あぁ、……記憶……
『ん?』
記憶が有るんだな。お前も。
『まだほんの少しだけどね。まだ8年ちょいの記憶が無いけど……それはおいおい。』
………帰るか。
『うん。……っと、その前に。このグロテスクな私をどうにかしないと…』
なぁ、今横に居るんだよな?
『居るよ。何なら手を繋ごうか?』
俺はガキかよ……あぁ、そうしよう。それから、
『ん?何?』
アレは大丈夫だ。何せ……俺の夢だからなここは。
ベルもといレンの力は偉大だ。さっきまでの不安感が綺麗に無くなった。この悪夢も呪詛と同じだ。気を確り持てばいい。強気で、例えさっきの声がレン本人では無くても、それで俺は勇気が湧いた。それでいい。
我ながら単純に出来ているな俺って。
*********
光が集まって形を作り出す。姿見から出てくる時体が消し飛んだのだろうか? 厳密には精神体なんだけど。手を繋いでいた嫁さんは直ぐ隣に居た。勿論手を繋いだままで。
「おかえり。まだ厳密には現実にじゃないけど。」
「……ただいま」
少しどけ憑き物が取れた顔の嫁さんに少し安堵する。けれど、これで終わった訳ではない。これから現実に戻らなければいけないのだ。
「ここからが骨だよ……何本折ることになるのか…」
「なぁ、俺が捕まっていた間に事態は進展したか?」
私は話すことにした。白神に精神世界であったこと。その白神に黄の国までナビゲートしてもらったこと。そして賭けの事。賭けの内容も。
私は現実に戻ったら死ぬことになる。どのくらい猶予が有るか分からない。でも、諦める気はない。この紅蓮としての人生がダメでも……来世にまた意地でも生まれてきてやる!
「……勝手に…決めたのか」
「私の命だもんの。勝手じゃない。」
「勝手だろ!!」
確かに今回の事は勝手にしたことだ。嫁さんの非難も分かる。自分が嫁さんの立場なら怒るだろう普通。でも、そうしないと藍苺は死んでいた。全く、神様ってのはロクなのがいないよ。
「私は……謝らない。」
「……だろうな。少し頭が冷えてきた。俺がおまえの立場ならそうした……と思う。」
「……そう言って「俺の所為だ」は無しね。じゃないと成仏出来ないからさ…ね?」
無理にでも明るくしてみる。最後くらい明るく居たい。
「歩こう……多分こっちだ。」
藍苺に手を引かれ歩き始める。ここは藍苺の精神世界、本人である藍苺なら出口を何となくではあるが感じるのだろうか?
終始無言で歩く。前方には眩しい光が集まっている様に見えた。アレが出口か……
「猶予は?」
嫁さんがか細い声で聞く。俯いているので顔が見えない。それにこの声を聞くと不安になる。独りにしても大丈夫なのか。けれど私はそんな不安を押し潰して無理に笑う。こんな時こそ笑顔だ。
「分からない。けど、直ぐに死ぬ訳じゃないと思う。二~三日位は猶予が有るんじゃないかな?」
「怖くないのか?」
「不思議なことにね……けど、心配事が有る」
「ん?」
「嫁さん達ご飯ちゃんと作れるかな?って。」
少し戯けて聞いてみると、手を引いて数歩前を歩いている嫁さんが僅かにコケた。ナイスリアクション。足を止めてこちらをジト見している嫁さん。ホラホラ…そんな顔してると、
「みよーん♪」
「………(怒)」
嫁さんの頬っぺを両端摘まんでビヨーンと引っ張る。シリアスはもう許さん。叩き割ってやる。
「お前な~」
「うわっ!?」
お返しとばかりに私の頭をグシャグシャにする。だが、ストパーをナメるべからず……いや、私の髪だけか? 例えグシャグシャにされても頭を少し振るだけで直ぐ様直るのだよ。
「おまえの髪が憎いな……」
「生まれつきなんだから仕方ないでしょ。でも、私的にはそのツンツンヘアーも憧れるよ? ユルフワなウェーブもちょっと良いな~って思うし。」
最後くらい笑いたい。そんな私のワガママに付き合ってくれてごめ……ううん、ありあがと。
図らずも死亡フラグ…だったのか? まぁ、回収してしまった……かな。理不尽ではあるけど……二人とも死ぬ訳じゃ……はぁ……藍苺……
残された時間は後僅かか…………?
紅蓮に残された時間は本当に僅か……。暫しシリアスが続きますが、ちょいちょい笑える場面を入れていきたいです。




