フラグ回収
不吉な終わり方をした前回。藍苺の運命や如何に!
主の大切な御方のためこの城を隈無く捜索することになった……が、どうやらここは……
『黄の国の王宮ではないか……』
この臭い…忘れもしない。5年以上いた場所なのだから。それにしては人が見当たらない。それに…この臭い……何かの薬品…いや、香か? そんな匂いが微かに匂う……人では気付かぬ程度だろう。それと本のわずか妖気も漂ってくる……
主の御生母様の話では黄の国は一応機能しているはずであった……では何故人が見当たらない。
『先輩! あまり良くない気配が……』
『む、……この気配……側室か?
『どうした天狼……何かの分かったのか?』
『奥方の部屋の方向から側室舞子の気配を感じたのだ……急ぎ戻ろう…』
何故か知らないが……主の言う「虫の知らせ」と言うものなのか…戻らねばならないとそう直感した。不思議なものだ。これは主に何か危険が迫った時有ることなのだが……どうやら今回は奥方にも対応しているのだろうか……主経由で不安感が伝わってきたのやも知れん。主と眷属は密接な絆で繋がっているものだ。そんな主から伝わってくる今の感情は「不安」「哀しみ」「怒り」の感情が混ざりあった複雑な感情だった。
『奥方には奏が着いている…が、元々戦闘には向かぬ…我らの内の誰かが残るべきだった…クッ…』
『後悔は後ですればいい。今は部屋にいち早く戻ることが先決だ』
『そうです。この事は何も先輩だけの事では無いんです。』
考えるのは後ですればいい……確かにそうだな。今は部屋に戻ることだけを考えよう。
『部屋に…居ない……』
『奥方様が居ない……何処に!?』
『奏も一緒に居ないのか…何処に連れ去られたか……抜かった…』
あと一歩…だったのか不明だが、我らは間に合わなかった。なんと言うことか……こうしてはいられぬ、早急に探さねば!
*********
『や、やっと着いた……ハァ~』
『ん、一時間か……及第点だな。』
偉そうに……あ、神だから偉いのか……ハッ…
まぁいいや。そんなことより……嫁さんだよ藍苺だよ!
『ここ……黄の国の王宮じゃん……相変わらず悪趣味な成金趣味だね~黄色と金色は違うんだって…』
『うむ、それに品というのは金色の物を集めるだけではない……これでは宝を集める邪竜ではないか……カラスもアリか』
これと一緒にされるのはどっちも嫌がると思うよ。それより、嫁さんの所に案内してくれるんでしょ? 急ごう……さっきから胸騒ぎが……
『……………』
ん?どうかした? オーイ……?
『…今はどうやら城中の人間は眠らされているようだ。そのままの姿で彷徨いても問題ない。こっちだ』
『…………そっちって……謁見の間でしょ? 目的地ってソコ?』
『ああ、そうだ。さぁ早く』
無駄に長い廊下を歩き謁見の間に向かう……ここを出ていくときこの廊下を通ったな…藍苺と一緒に。まだ一年も経って居ないのに戻ってくるとは思わなかった。龍の姿で翔んでいんのであの時よりも早く着いたのだろう。扉を開けるため人の姿に戻る。荷物は辛うじてポーチを持ってきたので服はあった。持ってきてよかった……
悪趣味な内装はキレた母さんに破壊されただろうに、キチンと元に戻っていた。そして私や嫁さんに飛んできた木片となった扉も元通りになっていた。重たい扉を開けるとそこには……
「藍苺が……大勢……」
氷の様なものに閉じ込められた藍苺らしき大勢の人が居た。多分王宮に居た人達だろう。全員藍苺の姿にされている……私がそう見えるだけかも知れないが。ねえ、これが試練なの? これって試練にしては王道じゃない?こんなんで良いのか?てか、白神はどっちに賭けてんの?
『この中に藍苺が一人だけ、この中から当てるのだ。』
「………」
偉そうに言う。この中からって何人いると思ってんだか。300人は優に居るぞ。簡単に言ってくれるよ…白神の奴………なんてね
「ソロソロ正体バラしたら? さっき入れ替わったのは気づいてるから……側室側の神様」
『………チッ…なんだ面白くない……お前勘が良すぎるな。まぁいい。それよりも、早く助けなくて良いのか?愛しの妻を助けに来たんだろ? だったらさっさと見つけろよ……出来たらの話だけどな…ハハハハハッ』
ハァ…煩い奴だな。こんなことなら引っ掛かってるふりしとけば良かったかも。こんなに煩いなんて思わなかったし…。え? 何で気付いたか?そんなの簡単。頭の中に直接響く音と部屋のなかで響く音って違うでしょ?
え?それも分からない? ごめんごめん…頭の中に直接響く何で早々無いよね。近くと遠くで響く音って違うでしょ?それだよ。気付いたのはそれだけじゃないけど。もう一つは、私の心の声を聞き取れてない事。まぁこれは勘なんだけどさ。
ズラリと並べられた藍苺とその他大勢の入った水晶か氷の棺?は広い謁見の間を埋め尽くしている。綺麗に整列しているので一人一人順番に見ていく。
8歳の私達は子供だ。当たり前だがまだ身長は低い。ここに閉じ込められた人の殆んどが城の住人なら大体は大人だろう。が、閉じ込められた大勢の藍苺モドキはみんな本物と同じ身長に見える……光の屈折か術でそう見えるのか分からないが、見た目はそっくりだ……
「質問なんだけど……」
『なんだ…面白くない事なら聞くなよ』
お前の面白くない事とか知らんよ。
「この国の陛下はどうした? 他のみんなは生きてるの? 」
一応…ね、一応。目覚めが悪くなるだろ、助けなかったら。
『ふん。生きてはいる…がお前が間違えれば……死ぬ。どうだ、お前にとっては目障りな者が一斉に居なくなるぞ……俺に感謝しろよ』
ハッ! いい迷惑だよ。目障りなら自分でどうにかするっての。他人にしてもらおうと思ってない。
「……で? 本物の藍苺を当てれば良いんでしょ。」
全く。どこまで王道なんだよ。捻りのない奴だな……あ、これは白神が考えた試練だったっけ……すまん白神。お前はこのキチガイ神よりましだ。
一人一人見ていくと、全然似ていない者も多くいた。手抜きか?
私が「違うな」と呟くとその水晶が消えて中の人物が出てきた……あ、宰相の息子(変態)じゃん…息してるか……チッ…
……私が違うと口に出して言えば術が解けるようだ。偽者ならば……だろうが。
そうと分かれば、と次々術を解いていく。術が解けると筆頭女官に宰相……オマケに兄上達の母親達……それに宰相の息子その二(女好き)もいた。
あ、説明してなかったけど、あの襲撃してきた宰相のどら息子達。アイツ等ね……白の王に突き出したんだけど……白の王は「コイツら置いといても邪魔だし…のし付けて送り返そう、そうしよう。」みたいな感じで黄の国に嫌味付きで送ったんだって……だからここに居るのも分かるけどさ……城に出入り禁止にならなかったのか…甘いな。
今の今まで忘れてたよ。どら息子共。記憶の彼方に。
次々と解けていくぶん邪魔になってきた人々を避けつつ残る二人に絞りこんだ。そこで少し迷っている。実は……
「(奏が入っている薬入れをもった藍苺と藍苺にしか見えない藍苺がいる。どっちだろ?)」
はっきり言おう、サッパリ分からん。元々自信なんか無いのだけど、試練を受けるとしか言えなかったのだ。だって、自分一人では嫁さんを取り戻す何て出来なかったのだし……ダメだな。
『早く選べ。死ぬぞその二人』
うっさいっての……こっちは真剣に悩んでんだから黙ってて。
そう言えば解けて人の中にKY陛下が居なかったな……この二人顔色悪いけど、もしかして片方は意識が戻らなくなったとか言ってたKY陛下か?
ん? てことは……嫁さんも何処か体調が悪い?
『アハハハハ……クフフハ……気付いたぁ? そうだよ、か弱いか弱い藍苺は後一時間もしない内に死ぬんだよ…アハハハハッ……勿論本物を当てても死ぬけどねぇ~。とんだ手間だよね…アハハハハ…
………死ぬ……本物を当てても……
『アハハハ……そんな可哀想な紅蓮君に嬉しいお知らせでーす♪ 俺と賭けで勝てたら助けてやっても良いよぉ~クフフ……』
「………」
頭が芯こら冷えていく……あの時と同じだ。けどね……こんな時にキレる訳にはいかないんだよ。
「やってやらぁ……さっさと条件を言えよ」
そう言うと奴は姿を現した。どうも何処かで見た顔だ。他人のそら似か?
どうやらご機嫌斜めのようだ。気に入らないと言った顔で睨んでくる。
『チッ…なんだよ~全然慌てないなんてツマンネー。オマエ他人なんかどうでもいいんだな。』
「で? 条件を言えよ」
「ホントにツマンネー」と言ってだらける奴は上に向かって話始める。気でも狂ったか?
『オーイ……石頭とジジィ出てこいよ。紅蓮君が決着着けてくれるってよぉ』
『お主はまた巻き込んだのか!』
仙人みたいなじいさんが現れて奴に突っかかる。まぁ、このじいさんが母さん側の神様何だろう。続いて静かに白神が現れた。こちらは苦虫を噛み潰した顔+眉間に皺を寄せていた。
『どういうつもりだ。』
『何って、決着着かないんだからこの子に着けてもらえば良いじゃん。面白いしぃ♪』
『お前は……この!』
「あーッと、悪いんどけど、早くしてくれない?こっちは命かかってんだから。喧嘩は後にしてよ。」
母さん側の神様なキレ始めたので止めることにする。こっちは急いでるんだ。
『ほぉーら紅蓮君が怒っちゃったよ。』
苛つく、マジ苛つく……コイツホントに側に居たくない。
『………良いのか? コイツは神経捻じ曲がっているぞ。どんな事を言われるか…』
「そうだね。でも、私はただの人。神が仕掛けた呪い何かにはどう対処していいか解らない。白神だっておいそれと人を助けられないんでしょ?」
だとしたら、奴を利用するしか私には思い付かない。それに、悪化しないようにしないと……私には正直荷が重い。
『そうそう。本人がそう言っていだから良いの良いのぉ~。さて、条件だけど~俺が決めても良いよね。』
『調子に乗るな!お前さんは……』
「……早くしろ」
いい加減にしろよ……な?
『暫し待て、我らの声を聞き取れてない様にする。その内に本物を決めろ。』
白神がそう言うと彼等の声が一切聞こえなくなった。するとさっきまで騒がしかったのが嘘のように謁見の間は静まり返った。奴がどれだけ煩かったかよくわかるな。さて、早く本物を特定しないと……
*********
『……えっと……なら、条件は「命を捧げる」何てどう? 人なんて自分の命をポイッとあげるなんて出来ないでしょ。』
『……むむ…不本意だが……仕方無い。ワシは……悩むと思うぞ。どちらも早々には選べんよ。』
『この賭けは私も参加しよう。私は直ぐに是と答えるに賭ける。』
『へー。随分と入れ込んでるね……何?あの子そんなに病んでるの?』
フム……病んでいるとは少し違うな。あれは…依存とも取れるが……どうなのかは本人にも分からんのではないだろうか。
『勿論…紅蓮が藍苺を見つける事が大前提だけど……見つけられるかな♪』
『ぬ、お主……何か小細工をしたな…』
『あったり前じゃん♪ 勝てればいいんだよ、賭けなんてさ。』
その意見には同感だ。
『彼方が差し出すものは命……ならばオマエも何か差し出さねばな。』
『じゃぁ……』
『何を勘違いしている。オマエに決定権はないぞ。条件を決めたのだからな。次は私だ。良いな二人とも。』
途端に不機嫌を露にする戯け者は私に食って掛かる。やれやれ…また子供だ。
『何でさ! 俺が決めても良いじゃん。』
『公平な賭けでなければならぬ。条件は良い。だが、お前は失ってもなんとも思わぬモノではダメだ。だから私がお前の一番嫌なことを決める。』
文句は言わせん。そう締め括ると納得いかない顔で頷いた。
『勝負が着いてから条件を言おう。さて、紅蓮が藍苺を見つけたらしい。声を戻すぞ。』
*********
奏の入った薬入れを持っていたのが陛下だった。勿論間違えずに本物を当てたよ。決め手は髪を結っている組み紐の色。本物は私の組み紐を使っているから……と、勘。てか、勘が大部分を占めてたけどね。
「藍苺……体温が低い……」
何か呪詛でも賭けられているのだろうか。それしかないか。それも強力な……
『無事見つけたな』
白神達の相談も終わったようだ。藍苺の冷たい体を抱き起こし少しでも体温が戻るようにポーチから着物を取りだし藍苺の身体に巻き付ける。効果は期待できないが、何もしないのは何より私の気が済まなかった。
『なーんだ、見つけちゃったのか…ツマンネー。』
『お主…ホンに捻じ曲がっておるのぉ……』
決まったのなら早く条件を言えっての。どうせ、えげつない条件を言うのだろ?
『条件はねぇ……紅蓮君の命だよ。命を俺に差し出すなら藍苺を助けてあげる。どお?やっぱり嫌でしょ!?さあさあ悩みな「良いよ。命だけで助かるなら」は?』
また、先に逝く事になるけど、後悔は……しない。しないようにする。ホントは生きたい…けどね、
「見捨てて生き永らえるよりずっとマシ。」
『はぁ?本気かよ……え? いや、ほら…死ぬんだよ! オマエそれで良いのかよ!』
「………神の癖に約束を違えるのか?」
『…………チッ』
『決まりだな。紅蓮、後悔はないな?』
「今のところは」
『さて、条件をクリアしたのだから藍苺や他のものに掛けた呪詛を解け』
『えー…面倒……その他大勢は別に簡単だけど~藍苺はちょっとばかし複雑なんだよねぇ…俺って掛けるの専門だし。解き方なんて知らない。』
は?
その時の事をあまり覚えていない。気が付けば側室側の神の頭を掴み床に叩きつけていた。
『グベッ……』
奴はとても石頭だったようで床の大理石は粉々になり奴の血が流れていた。
「もういっぺん言ってみな……その飾りの頭を握り潰すぞ……」
白神や仙人の様な神に抑えられ落ち着きを取り戻したが、起き上がった奴は未だ悪びれた様子がない……もういっぺん床とご対面するか?
『バカ者! お前はさっさと他の者の呪詛を解け! 藍苺の方は我らで何とかする。これは借りにしとくぞ。分かったな!』
『う゛~~』
私よりすごい剣幕で白神が奴に怒鳴り付ける。頭を抱えた奴は渋々動き出す。……そんなことより藍苺は………助かるよね? 少し弱気になる。
『儂等の面倒ごとに巻き込んだ者を見捨てるようなことはせんよ。儂とて神じゃ、多少理に触れ咎を受けるともな』
『安心しろ、奴の呪詛は私の力で解ける……が、心を闇に囚われたとしたら……そなたが迎えに行けば良い。誰の力も借りず出来たことだ。今回は二人も神が味方…失敗などないぞ。安心しろ。』
ホントに?
『あぁ。』
……助かるなら。どんなこともする。でも、悪事はしないけどね。
『減らず口を叩ける元気が有るなら大丈夫だな。』
少し微笑んだ白神が、だが…と話を切り出す。なんただろう……嫌な予感がひしひしとするんですが。仙人の様な神は少し困り顔でこちらをみている。だからなんだよ……
『実はな……………なんだ。』
「へー……懲りてないと?」
両神は『うん』とハモりながら頷いた。最後まで厄介な…。
『奴の事は任せておけ……しかし気を付けろ。全て防げるわけではない。』
「まぁ、良いよ。選り好みなんて出来ないんだし。」
何処か投げやりな考えだったと自分でも分かる。真剣な顔で白神が私の頭に掌を翳す……すると私は眠りに落ちた。
********
『白神や。ホンに良かったのか?お主が咎を受けるなら儂が受けるべきじゃよ。儂らが始めた事……主は審判者なだけじゃろ。』
私より随分と年上の外見をしている神・灰老神は
う私に話しかける。確かに今回の事は私には直接的な関係は無いだろう。
『傍観者の間違いだろ。私は……』
『昔の家族が心配なんでしょ~~うわー…美しき家族愛だねぇ~……オェ~』
私が人間で言う青年期であるなら灰老は老年期、そしてこの事件の騒動の発端である少年期の姿の神・黄童子。コイツは少々……いや、かなりお騒がせのトラブルメーカーだ。今回の件もコイツが言い出した。
『お主が言えた義理かの? お主の執着心は誰よりも根深いじゃろ…。特に彼女の事になると見境が…』
『うっさいよ…ジジィ!! アンタに何が分かる。』
灰老の言葉に過剰に反応した黄童子。コイツは彼女に未だに未練があるからな。彼も大変だ、記憶を無くしてなお、執念深く恨んでいるのだから。
『そんなことよりも、黄童子……お前はペナルティーを科す……お前は――――――』
もう二度と、コイツの好きにはさせんよ……だから……………………
―――――――現世では長生きしてくれ―――――
―――――――――母上、父上…………




