王位?んなもん要らねぇよ
お読みいただきありがとうございます。
変な雰囲気漂う朝餉の席からお送りします、この頃自分はサブ主人公だと思う紅蓮です。
見知らぬ緑の少女が向かいに座りガン見されております。私の両側には白の王側に白の王子、舞子側には黄の国の王子(兄上達)が、緑の少女両側には一姫と末っ子王子……なんだこの席順と位置は。
「紅蓮…この者は私の遠い縁者の娘だ。」
白の王が緑の少女を紹介する。何だか一悶着ありそうな不穏気だな……
緑の少女がニコリと微笑む……何だろ何かあるなこの子。
「紅蓮よ、折り入って頼みがある…」
うぁー…厄介事の気配。白の王よ、あんたは何がしたいのだ?
「陛下、先ずは自己紹介からでしょ?」
「ん? そうだな、忘れていた。この娘はマオと言う。マオ、先ほど話した紅蓮だ。」
「お初に御目にかかります。マオと申します。」
深々と頭を下げた少女マオは何度もこちらを見ては微笑む……
「そして彼方に居るのが客人の黄の国の王子達だ。」
「お見知りおきを」
兄上達に向かいまた頭を下げた。しかし視線は直ぐにこちらに戻る……何なんだよ。
「して、紅蓮。話しと言うのはな……このマオと婚約してほしいのだ」
「お断り致します。」
間を置かずに拒否した。やっぱりロクな事じゃなかった。私の中で白の王の株は大暴落だ。
自分の娘婿に新しい婚約者を紹介する何て何考えてんだか分からない。何か秘策でも有るのか知らないが、私と嫁さんを巻き込まないでくれ…
「紅蓮…コレは大事な事なのだ。」
「王、私はお断りしました。」
「(何が始まったんだ?)」「(分からない…)」「(紅蓮は即答でしたね…)」
兄上達が顔を見合わせてヒソヒソと話している。側室舞子は驚愕の表情を、浮かべている。緑の少女マオはジッとこちらを見ている。
「……」
表情はさっきとは変わり無表情になっていた。王妃や王子達は黙ったままこちらをうかがっている。
「これが命令でも聞かぬのか?」
「藍苺を疎かにするくらいならば……」
こちとら嫁さんだけで充分だ。別に大変とかじゃなくて、この少女は面倒事の塊だ。そんなのと縁を繋げてみろ、大変この上無いだろ。それに……
「何故、彼の者と婚約せねばならないのですか? 私は一介の子供です。如何に彼の国で王子として育ったと言っても、王族とは縁もゆかりも有りません。」
実際あるのは両親だ。それと、嫁さんコト藍苺だ。けれど、嫁さんは黄の国のに来た時点で王位やら王族としての縁を切られた。厳密には、元王族の嫁さんにしか面識がない。
「お前は俺の盟友の子だ。気にかけて何が悪い。お前の為にこの婚約はするべきだ。聞いたぞ、食料事情があまり宜しくない様だな。藍苺にも旨いものを食べさせたいだろう……この婚約でそれが叶うぞ。」
確かに、その条件は喉から手が出るほど美味しい話だ。……けれど………
「そして貴方は何が目的何ですか? ハッキリ仰ってください。まどろっこしいのは嫌いです。」
だんだんと頭に血が上ってきたのが分かる。怒りで我を忘れないように掌を爪で傷付け正気を保った。
「お前ならば悪くはしないだろう。何も家に置けとは言わぬ。マオは実家に置いておけばいい……気に入れば別宅に囲えばいい。」
………………
「どうだ? お前に良い条件ばかりだろう…」
「お断りします。」
「……強情だな」
腕組みしながら呆れ顔でこちらを見る白の王。何処かバカにしているような……楽しんでいるような感じだ。気に食わない…
「紅蓮、何も今すぐに結婚しろとは誰も言っていませんよ。ただ婚約……」
「私はの婚約自体が藍苺に対する裏切りだと思います。何より誰も助けは求めていません。元よりあなた方には何も頼む気は端から有りません。」
王妃も加わり諭すように話す。けれど話を飲む気は無い。白の王に頼むくらいなら、自分が身を粉にして養った方が良い。最も、白の王には貸しを作りたくない。何か危ない気がする。
「藍苺を助けたいのなら藍苺だけを助ければよろしい……私は結構です。白の王、貴方は何を企んでおいでか。」
何を考えているのか分からない表情でこちらを見つめる白の王。ホントに不気味だからやめてほしい…
「紅蓮様……何故婚約を断るのです。貴方にも得が有ります。それに…… 」
緑の少女が会話に加わってきた。髪の毛先が少しカールしている位で後は比較的真っ直ぐな髪ツインテールにしている。改めて見ると母さんよりも薄いパステルカラーの黄緑だ。目も同じ。
「貴方は耐えられますか? 周りに婚約したのに婚約者が寄り付かないと陰口を叩かれても。」
「それは」
反撃の隙を与えないため、矢継ぎ早に続ける。
「私は貴女に二度と会いたくありません。藍苺を不安にさせるくらいならば、あなた方の意図などとどうでも良いです。」
「……ふぅ……紅蓮、実はな…お前に次世代を担ってもらいたいのだ。」
いやはや…話が派手に飛んだな。何を言うかと思えば……くだらない……私にとっては。
「マオでもいいが、俺の娘でも良い。王位を継ぐもよし、次の王に仕えるもよし……お前を…」
「ちょうど良い駒が有るので確保しておきたい? 買い被りすぎです。それに……誰がそんな話を飲むと思った。私をバカにするな!」
アッタマ来た!! さっきから黙って…はい無いけど、聞いてりゃ、「特だ」「為になる」だ、うっさいんだよ!!
「怒ることはない。紅蓮よ、藍苺は気にしないだろう……お前達は政略結婚をしたんだ。何も気にすることはない」
確かにそうだ。政略結婚だった。けど、それとこれと、私の心の中は違う。
「藍苺の為に人生を無駄にするな。お前には…」
「誰が藍苺の為に怒っていると言った? 誰が藍苺の為に断ったと言った? 私は自分の心で決めた。誰かの為になんて言い訳で決めたりしない。いつも自分の為に選んで来た。婚約を断ったのも自分が不愉快になるからだ。協力を断ったのも自分に何かしらの負担が有ると思ったからだ。今まで数ヵ月間一緒に暮らしていたのだって藍苺が望んだからだけじゃない……私がそう望んだから…だから、」
自分でも何を言いたいのさっぱりだが、勢いが止まらない。口を閉じれない。無礼なことは分かっている。でも、止めることが出来ない。気のせいか目の前が赤くなっているように感じだ。
「……私たちに構うな! 本人に了承も無しに勝手に出したくせに、後からうだうだ抜かすな! 今後またそんな事を言えば……如何に白の王でも容赦しない。」
そう、私が自分の心で、自分の為に選んだ。選択した。誰かに否定されるのが嫌いだ。自分の人生くらい自分の為に選ぶ……勿論藍苺も自分で選んでもらう。その事に不満は……多少…かなりあるが否定はしない。
「俺を脅すか……面白い。ならば、藍苺の命が無いと言えばどうする?」
「その時は…確実に貴方の命を消します……たとえどんなに掛かろうとも……ね。」
脅しだが、脅しで終わるつもりはない……本当にそうなったら……実行するだろう。私は最近自分の怒りを抑えるのが難しくなってきた。そう窮奇の姿になった頃から。
私が脅しをかけた辺りから沈黙が続く。兄上達や王族一家と側室舞子親子も先ほどから黙ったままだ。今更ながら気が付いたが、尻尾と耳が出ていた。怒りに我を忘れない様に掌にたてていた爪が皮膚を破って血が出ている……痛みがない。
ああ、コレは頭に血がのぼり過ぎたな。アドレナリンが出過ぎて痛みも感じなくなってるよ。
「ふふふ……」
「アハハハハ……wwwww」
いきなし笑い始めた王と王妃。王何てツボにでもハマったか呼吸困難になりかけている。誰か酸素ボンベでも持ってきてやって。
「父上?母上まで…」
「さっきからなんだったの?」
「喧嘩してたの?」
王子と一姫が困惑ぎみで見つめていた。私も困惑している。もしかして……試された?
「ホラね、紅蓮は強情で、一途だって言ったじゃない♪」
「俺達の子だからな!」
今の声は……
そう考えた時、物凄い勢いで私に突撃してきた物体が「ドスッ」と音をたててぶつかってきた。そして物体から生えた?腕で私を締め上げる……
「ぐっ……ちょっ、タンマ……く苦しい……」
「メキメキ」と音をたてて締め上げるのは、言わずもなが嫁さんでした。そうだよね。私に突撃して締め上げてダメージ与えられる程の怪力は嫁さん以外居ないよね……ちょっ、マジでタンマ!
「よ、嫁さん……ギブギブ!折れるから!肋骨折れるから!!」
「………」
え~、無視ですか嫁さん。メキメキいってますよ?私の肋骨……折れても良いの……?
「ランちゃん、コウちゃんの肋骨が折れそうだからもうその辺にした方が良いわよ。」
「気絶するぞ紅蓮のやつ……肋骨は折れると他の骨より痛いんだよ……」
やんわりと言わずにもっと必死になって言ってほしいよ。てか、父さん、経験アリかい!?
「……たか?……………れ…」
「ちょっ、ホントに力緩めてっ!苦しくて喋れないから。ね?落ち着こう嫁さん!」
ようやっと力が緩んできた……はぁ~苦しかったー。
私の肋骨は何とか無事だった。だが未だに私を締め上げる嫁さんは何かを言っているようだが、声が震えているのか何なのか様子がおかしい……
「どうしたの嫁さん。そう言えばご飯ちゃんと食べた? うっかりしててさ、ポーチに食料入れてたの言い忘れちやって……」
「そんな事よりお前は大丈夫か!」
うんまぁ……嫁さんの突進からの締め上げコンボが無ければもっと無事だったよ。無いけど。
「うん大丈夫。そんな事より……嫁さん?」
身長差が数センチしか無いので私の肩辺りに顔を埋めていた嫁さんは漸く顔をあげてこちらを見た。すると目は少しだけ潤んで見えた……泣くほどお腹空いてたのか?それに………
「ちゃんと寝てないでしょ? 寝不足で目の下に隈出来てるよ。」
そうなのだ、1日しか離れていなかったのにもう隈が出来ているなんて……どうした?
「ホントに大丈夫か? 腹刺されたって聞いたぞっ……ホントに大丈夫何だな?」
あれま、バレてら……。情報源は白の王か?まぁ、どちらにしても……
「大丈夫だから、嫁さんちょっと離してね…しなきゃいけない事があるから…ね?」
渋々といった感じて腕を離さす嫁さん。すかさず自分の爪で傷付けた右手を隠す。バレたらまた締め上げられそうだし。
「白の王、事情をお聞きしたいのですが先ずはお詫びを……御前に在るまじき御無礼…誠に申し訳ありませんでした。」
どうしよ……コレって極刑モノだよ。試されていたと言ってものい言い方は無かったよね…無礼だったよね……後悔ってホントに後からどうにも出来ない。一旦頭に血が上ると制御効かなくて困る。
元々熱し易い性格でもあったので尚更大変だよ。日頃カルシウムをとらないと……牛乳以外で。
「いい、こちらが騙したのだ。だが……あそこまで怒るとはな、流石二人の子だ。」
「だから言ったでしょう、コウちゃんは一途なのよ。(本人たちが気付いてないだけで…)」
「二人の子供だものね。(笑) 頑固は麗春さん、一途なのは朱李さんかしらね~」
世間話のように話す母さんと王妃それと王。父さんはこちらに歩いて来て……
「大丈夫か? 怪我は治っているんだろうが……」
「大丈夫だよ。治ったから。」
崖から突き落とした人の台詞とは思えないとは今は言わないでおこう。
「レイは少しも心配していないように見えるが、あれでかなり取り乱していたんだぞ。あいつは隠れて感情を見せないからな…」
ふぅーん……母さんってそうだったんだ……。いつも笑っていて堂々としているから……知らなかった。
「知らなかった……昨日も冷静見えたけど」
人知れず……か。
にしても……嫁さん?
「裾が伸びるんだけど……離して?」
「ヤダ」
「少しで良いから…一旦離そうよ」
「ダメだ」
「ふらついてるし一先ず椅子に座って…ね。」
「お前は手を放すと直ぐにどっかに逝くからダメだ」
ちょっと……逝くって、漢字が違うからね? 縁起出もないからやめてね。




