サヨナラ……したいのになかなか帰ってくれない
新キャラと新たな問題にキレる紅蓮……キレてばかりだね……。
全てとは言えないけれど、粗方野菜を食べたイガグリ含めみんなに用意していた洋梨のゼリーを振る舞う。冷たくしているけれどこれくらいは母さんにも良いだろう。
何もアイス2リットルカップを完食するわけじゃないんだし?
いやぁ~…昔妊娠してるときアイス食べたくて仕方なかったのよ~。食べ過ぎでお腹下したらダメだし……控えたよ。その他にも林檎が食べたくなったり……桃とか洋梨とか……全部甘いもんじゃん。
その所為か、遺伝なのかシュウは甘いもの大好きな男の子になりましたよ。
閑話休題
さて、みんなの反応は如何に……
「まぁ、なんでしょう……透明な……あら、ぷるぷるしていますわ♪」
「洋梨が中に入っているのか?……何で出来ているんだ?」
「冷たくて甘くて美味し~♪」
「食べたことの無い食感です……。」
「これがゼリー……」
「美味しい……(懐かしの食感!!)」
「美味しい♪(あぁ~懐かしのベルのスイーツ♪ 出来ればいつでも食べたい!………ジンめ、いつも食べれるなんて……羨ましいなチクショー)」
「夏の暑い日にはうってつけですね。作り方を知りたいです紅蓮様。」
「実は紅蓮が作ったこの甘味、白の国の特許制度で特許を申請しています。今日、お帰りになるのですから陛下にお聞きになってください。」
「他にも申請しているらしいな紅蓮?」
お、掴みはまあまあ…かな。
「はい、申請しているものは王宮に運びますのでお目にかかるかも知れませんよ? と、言いますか、お帰りになる皆様に持っていって貰う事になっていますから、白の王にお渡しください。」
申請するのは肉の腸詰め(ソーセージ)、燻製の製法、果実の瓶詰め(ジャムのこと)、さっきのゼリー、クッキー(プレーンとゴマ、後から増えるので諸々ひっくるめて)、その他お菓子や料理の数々……。欲張りすぎだといえるだろう……けれど、私に何が出来るだろう他に……これくらいしか思い付かなかった。まだ子供の私にはこのくらいしか出来ないのだ。遠慮なんかしていられない。
使用料は高額にはしないから勘弁してください。
王族や貴族からはぶんどるかもしれないけど。
まぁ、王子達に渡すのはゼリーとソーセージだけなんだけどね。だって多いと持っていけないだろうから……。母さんが一度、白の国に顔を出す次いでに王子達を送って行くことになったらしい。王子達が次いでって……とも思ったが彼等は何とも思ってなかった。心の広いこって…。
で、母さんに預けました。説明も母さんがしてくれるらしい。何でも、言質取るとか足元見られたら大変とか……頑張れ白の王。母さんは本気だ。
実際のところは白の王には何の思惑も無いだろうけど。あの人が結構ノリが良くて、小心者だって知ったし。いい人だよ。問題は周りの貴族だね。
後から「それは我が家に伝わる……」とか言われたら嫌だからその防止もかねてみたいだよ。
とまぁ……特許取るとかいっているけど、日本の制度とはちょっと違うかもね。日本の方はよく知らないけど、白の国では国に4割、権利者に残りの6割入る仕組みだ。結構多いと思う。
とはいえ、使用料が発生するのは商売をする事限定なのであまり入っては来ないだろう。
使用料発生条件は至って簡単。売り物にするかしないかだ。家で作って人にあげたり自分達で食べたりは使用料発生はない。レシピを教えるだけでも使用料発生はない。だが、そこに金銭が絡めば発生する。
例えば、レシピを載せた本。これには使用料が発生する。家で作っても誰かに売ったら、それも使用料が発生する。
金が絡むか絡まないかで決まるのだ。不正は許されない。そこは大国、高度な魔術を用いて使用料発生の有無を知らせるのだ。スゴいな魔術……テクノロジーもビックリ。
ま、例外もあるけどね。例外は、子供の商売を体験する行事とかは無しだね。後は結構あるんどけどここでは省く。
それに何年たっても無効にはならないしね。白の国は妖怪も多いから下手に設定出来ないんだって。
「では国に帰ったら楽しみにしておりますわ♪」
鈴雛姫は朗らかに言いまたゼリーを優雅に食べ始めた……やっぱり生まれや育ちの違いって出るもんだね。私には逆立ちしても無理だわ。
その他の皆さんは黙々と黙って食べていた。そんなに旨いか?そうか、そうか。それはよかった。
食べ終えた食器を洗いながら今後の事を考えていた。
私には先見の明などない。これからの事は本当に行き当たりばったりだ。それで嫁さんや眷属達を養わなければいけない。もしこの事を話せば嫁さんは自棄になって無理をし始めるだろう。現に今も無理をし始めそうだ。
閑話休題
母さんが言うことでは午前10時辺りに迎えが来るらしい。しかも白の国は……迎えが……
「(元ロリコン変態が来るなんて……)」
よほど白の国は私に喧嘩を売りたいのだろうか。心を入れ換えた(黄童子の暗示が解けた)とはいえ、被害者の前に連れてくるなんて……なに考えてやがるあの野郎共……おっと失礼。言葉が乱れたね。
白の王も奴の事はとても気にかけている様で……昔は普通の兄だったんだとさ。藍苺が生まれてからおかしくなった様だ。まぁ、ご愁傷さまなんだけど……出来れば嫁さんに会わせたくない。だって、私でも失礼だが会いたくないよ。
弱さを見せないだろう嫁さんは気丈に振る舞うだろうけど……また悪夢に魘されやしないかと心配になるのだよ。大丈夫かなぁ……
………心配しても仕方ないか。折り合いをつけるのは嫁さんなんだし。私は見守ろう。それしか出来ないのだから……。
そして白の国、黄の国、双方からの迎えが到着した。
「皆様お待たせいたしました。この都度は私の妹がお世話になりました。」
小綺麗な格好のザ・平凡の青年が挨拶してきた。白の国からの迎えの一団と一緒に来たマオ嬢の兄だってさ。
多分顔立ちは良い方なんだろうけど……雰囲気が普通の人って感じに見せているんだよ。貴族や王族にはいないタイプだから何だか好感が持てそうな人だ。外交官にはもしかしたらそんなところが合っているのかも知れない。
けど、気のせいかキナ臭い……
マオ嬢は兄が来たことに驚いているようだった。来ることは予想していなかったのだろう。マオ嬢の兄は妹と話を終わらせこちらに歩いてきた。
「紅蓮様、お久しぶりでございます。白の王より報せがありまして……実はあなた様に燈の氏を贈る事に相成りました。」
………は?
「詳しくはこちらの手紙に記載されております。どうぞ。」
そうやって手渡された手紙を恐る恐る読んでみる……するとそこには……
「…………(怒)」
小難しい言葉で綴られた手紙には要約すると「今回のこと(芋づるに犯人確保)で褒美として氏をやるから国に貢献しろ」だった。
氏とは名字のことだ。誰でも持っているわけではない。その昔、功績を認められた一族にだけ許されている物なのだ。ちなみに、普通の民の中にもたまに氏がある者が居るが、先祖が賜ったりして受け継いで来たからだ。貴族でも持っているのは上級位だ。爵位で言えば伯爵辺りから。
子爵や男爵が持っていることは希だ。
ちなみに白の国の王族は白。黄の国なら黄、とその国の字を名乗る。その他、一族特有の属性を賜る事もあるらしいです。火なら火が入る漢字をあてる。
「どう……いう事ですか?」
「貴方の功績を称えて……」
「腹の探りあいは嫌いなんですよ。何故、黒の国の外交官が白の王の手紙を持っているのですか? それに、功績を称えてなどと……私に首輪をつけたいのが見え見えです。私が本気で喜ぶとは思っていないでしょ? それとも……そんなことも分からぬほど、耄碌尽きましたか?」
後ろでガヤガヤ煩い外野は無視だ。
「………ふぅ……やはり上手くはいきませんよね。貴方は本当に子供らしくない。」
「猫被りは止めてさっさと用件をどうぞ。」
平凡過ぎるのだこの外交官。平凡という皮を被っていたのだ。
「端的かつ直球に申しますと……黒の王は貴方のような稀有な血が欲しいのですよ。家臣に。」
猫を被るのを止めた外交官は目を細めうっすらと笑った……黒いなコイツ。真っ黒だぞきっと。
「なるほど、だから貴方のような外交官が他国で人材漁りをしているのですか。ご苦労様です。」
「それが仕事ですから。」
さらっと言いやがったぞコイツ。やっぱり腹の中まで真っ黒だ。関わりたくないタイプだ。
「失礼ですが、私には過ぎたる褒美です。辞退します。」
「……それは……我が国と白の国を侮辱なさるおつもりか?」
「まさか、滅相もない。」
こうやって圧力をかけてくる辺り本気なのだろうか? 他だ単に力のある者に首輪をつけたいだけなのか……ちょっとわからない。
しかし……大国の威信とやらちらつかせるなんてままだまだ経験が浅いのではないか?この外交官。
話術をもう少し学んだ方がいい。
それと、威圧したいならもっと凄みと威圧感が無いと意味無いよ。鈍感になってる私の心は動きゃしない。
何より私のように圧力を掛けられると反発したくなる質の対処もダメだねこれじゃ……ただ反発を強めるだけだよ。
「私が断ると何か不都合がおありですか?たかが8歳の子供には過ぎたる褒美を辞退しただけですよ。それとも……大国はよほど人材不足なのですか?」
「(レン、言い過ぎ……)」
「お前のところそんなに無能しか居ないのか?子供を脅すくらい」と言ったも同然。引き攣った笑顔を張り付けた外交官は少々青ざめぎみ……ちょっと本当に私って人の顔色を悪くしてばっかだよ最近。
どうするのかな?白の王子達の前でここまで言われたらどう出るのかな?
私今、とても危ない橋を渡ってると自覚していますよ? ただ、アドレナリンがドバドバ出ているので今だけは平然としてます。きっと後から後悔するほど落ち込んだりするでしょうね。
「そのくらいにしてはどうですかな?外交官殿」
ここで思わぬ助け船が。未だに驚きで固まっていた両親(ちょっと頼りないよ二人とも…)を差し置いて助けに入ったのは……元ロリコン変態……すまん本名忘れました。王兄殿下だった。
「抑我々は感謝を述べねばならない立場だろうに。黒の王たっての希望を優先させた我が国にも落ち度はあるが……誠に申し訳ない紅蓮。」
「俺からも謝罪を……父が早まった……すまない。」
「すみません紅蓮。私から父に言っておきますわ。」
「よくわからないけど……父上がご免なさい。」
「私からも謝罪を……しかし、一体何を考えておいでなのでしょう……」
王兄殿下の謝罪を皮切りに王子達が謝りだした。いや、今回は王子達は関係ないから謝らなくていいよ……まぁ、そうしないといけないのも分かるから止めないけど。
「我が国と対立なさるおつもりですか?」
「お兄様……いい加減にしてください。ここは白の国、私たちの国では有りませんよ。恥をかくのならもうお止めになさった方がいいです。それに、私は圧力をかけることは許しませんよ。」
うん、出てくると思ったよ。後ろでワタワタして慌てている舞子親子は自分達にはあまり関係の無いことだから口出し出来ずに黙ってるけど、マオ嬢……ミケなら反論してくると思ったよ。
いつもそうだったよね。私が小学生の頃あらぬ疑いを掛けられたときも、誰も助けてくれなかったのに、転校してきて日が浅いのに助けてくれた……本当に変わってないんだね。
「そもそも紅蓮殿の父上、朱李様は大公爵の跡取り……それを駆け落ち同然で女狐……失礼、今の奥方と国外逃亡なさったのですよ。元々黒の王の妹君と婚約なさっていたのです。その血筋を我が国に返すのは義務です。」
両親にそんな過去が……もっと聞きたいけど、今それどころじゃないか。
「まぁ~、お兄様。その様な非現実的な事を仰るなんて……。それに、外交官ともあろうお兄様がその様に差別的な事を連想させるような事を。未々未熟ですわよ。殿下方がいらっしゃる場で……それでも我が国の外交官ですの?」
「………(なあレン、ミケってあんなに饒舌だったか?)」
「(どっちかっていわれると……嫌味で敵を負かす方だったよ。)」
「(そうだけど……あんなにネジ曲がってたか?)」
「(環境がそうさせたんだよ環境が。)」
「(な、なるほど……貴族って怖いな)」
本当に。貴族ってのは水鳥と似ている。見た目は優雅に水辺で浮かんでいる水鳥も水面下では必死に水掻きで水を掻いているのだ。
上っ面はニコニコしていても、腹の探りあいや嫌味の応酬……怖っ。
「その口ぶりですと、まるで藍苺様は相応しくないと言っていますわよ。それに、陛下のお考えも見え見えですわ。紅蓮様にご自分の姫を嫁がせるおつもりなんでしょ?」
うぇ~。マジでか~。嫌だわ、それ。全力で拒否するわ。
私は嫁さん一筋! 異世界でもそうしてきた。絶対曲げる気はない!! 追い詰められたらその姫殺すかも知れないくらい一筋です。
「元々白龍の性格をご存知の筈です。彼等は何者にも縛られたくないのです。ただ一人、伴侶を除いて。」
そうそう。白龍は一途なんだよ。一度伴侶を決めると死んでも愛し続けます。他になんて目が向きません。例え伴侶を亡くしても再婚はしない。一人寂しく思い出を振り返りながら生きていきます。そんな生き物なのです。
哀れな生き物なんです白龍ってのは。
「……」
「何でしたら、お兄様の実らぬ初恋をここで披露しても良いのですよ?」
「ちょっ!!!」
……ミケはスゴい爆弾を投下した。へぇ……それは是非とも聞きたいですね~。
「待て待てぇ!! 何でその話になるんだ妹よ。」
「それは、野暮な事をしようとするお兄様がいけないのよ。夫婦である二人を引きはなそうとすんなんて……お兄様の初恋の方に言いふらしてしまいそうだわ…」
冷や汗をかきだした哀れな片想い男……もとい外交官は四苦八苦して妹であるミケを説得し始めた。そりゃぁ~初恋の相手に言いふらす何て……傷口に塩を刷り込んで無理矢理塞いだよりも痛そうだ。恐ろしやミケ。
「まさか両親が関わってないわよね……あぁどうしよう朱李……」
「大丈夫だ。何かあれば俺が……」
「それなら私を止めてね? 両親でも容赦なく叩き潰すかも知れないから……」
「……あ、あぁ……(((((゜゜;)」
母さん達は祖国の家族の事を違う方向で心配していた。女って怖い……あ、私も女……じゃないわ今。
「フフフフ……分かってもらえましたかお兄様♪」
「分かったから言うなよ!絶対に言うなよ!!」
「必死ですね……」
「レン、あまり構ってやるな。男ってのは惚れた相手にカッコ悪いところは見せたくないもんだ。」
「女だってそうでしょ?」
この話は一次的にだがおいておくことになった。しかし、藍苺の様子を見ていて少し安心した。何ともないようだ……。隠れもしないし、無理に強気でもない。
その後、少々怒り気味の母さんを心配している(白の王の安否的な意味で)父さんは仕事の引き継ぎも兼ねて黄の国まで舞子親子を送りに出ていった。何度も母さんに「暴れないでくれ」と言って。
どうせお昼までには帰ってこれないだろうから、仕事頑張れの意味を込めておにぎりを渡した……何故か泣かれた……何なんだ父さんよ。
そして去り際イガグリが「好き嫌いを直します」とキラキラした目で言ってきたので。一言
「私に甘えるな。親に甘えろ。」
と、いっておいた。だって、私に懐かれたら親として舞子の立場が無いだろう。え?父親?知らんな。
舞子には「良いことをしたら誉めて、悪いことをしたらキチンと叱ってよ。子供は親の行動を見て育つ。父親が不甲斐ないから母親のアンタが頑張らないといけないよ。」と、言っておいた。
すると……
「分かったわ。見ていてね、大雅を立派な王子に育てて見せるわ!!」
………もしかしてワンコ属性は母親譲りなのか?本当にどうしたよ。
まあ、それはいいとして、母さん達白の国の皆様も父さん達より遅れて家を出た。その時、筆頭侍女・啓璋さんにあるものを託した……。託したというよりあげたと言うのが正解だが。
あげた物は組み紐だ。私がせっせと作っていたあの組み紐ですよ。侍女ってのは王宮の最先端に敏感だ。これを侍女を纏める啓璋さんにつけてもらえば、少しでも流行り………セコいが特許を持っている私にお金が入ってくるとふんでいる……本当にセコいな我ながら。
どの様に使うかは彼女に任せてある。だって、お洒落には疎いから……前世でも何度ミケに呆れられたことか……
「この様な珍しい物を……ありがとうございます。」
「いえ、此方にも色々と考えがあるので。ですがくれぐれも、他のものに渡さないように。解かれでもすれば此方は大損ですから(作り方的な意味で)。」
「承知しました。皆にも教えておきます。」
渡したのは淡い色の紐だけ。濃いものは白の国の王宮で付けづらいだろうから。他国の色は特にね。
ほら、この世界は色の名前が国に使われてるでしょ?
「(未婚の男性が装飾品を異性に贈るのは求婚の意味があるから憚られるけど、私は嫁さんと結婚してるから、単なる友好の証しの贈り物位にしかならないんだよね。よかった。)」
この世界は本当に面倒だ。
「まぁ、その紐は藍苺が髪を結っている紐ですわね。綺麗に編んであって……私も欲しいですわ……あら、ご免なさい……私ったらはしたない……」
流石は流行を先行くお姫様。お洒落には敏感ですか。私から贈るのは少々憚られるので啓璋さんから贈られた事にしてもらう。その方が体裁も保てるし、身元もバレない……よね?
「……そうねぇ……こ薄桃色の紐にします。」
そう言って手に取ったのは私の渾身の出来の組み紐だ。あ、全部いい出来だよ。その中でもよかったんだよ。色は例えるなら桜色。全ての糸が蚕さん達から貰った上質な絹糸。その色は1本1本若干濃さが違い、綺麗なグラデーションになっている。
糸を貰う蚕さん達は色蚕と呼ばれる魔獣から妖怪にランクアップした蚕妖怪だ。彼等はとても大きく、大人の蛾になると二メートルは超すとても大きな妖怪だ。採れる糸の量も半端ではないが、色鮮やかな色彩は見ていて綺麗だ。
糸の太さには個人差(個体差と言わないのは敬意を示して人として見ているから)があり、ロープの様に太いものから、縫い糸の様に細いものまで何でもござれ。強度も下手な防具よりも丈夫。しかも、彼らの食べたい葉や果実、花を渡せば繭になる前でも好きな細さの糸をくれるのだ。色蚕さまさまです。
そんな色蚕さんに白き箱庭に咲き誇る桜の花弁をあげてみた。すると、綺麗な桜色の糸を出してくれたのだ。色にも個人差があり桜を気に入ってくれた蚕さん達が各々違った色の糸を出したのだ。
しかし、本来この世界に存在しない桜の味はあまり好みではない蚕さん達が多かった。きっと量産は出来ないだろう。色の似たような物はあるものの……桜程綺麗な色は出なかった。
ま、始めから組み紐を量産する気は更々ないけどね。作るの大変だし、多すぎれば価値は下がるもんだ。程ほどに、ね。
「それは珍しい色の糸を使い作った物です。もうその色は出せないでしょう。一点物です。」
まぁ、この世界では殆どが一点物なんですけどね。
女性は一点物とか、限定品に弱い。
「あら!なら私ではなく貰った貴女が持つべき物を……ご免なさい……違う物に……」
「姫様、良いのですよ。私にはその色は若すぎます。こちらの落ち着いた若草色の方がいいのですよ。」
「言い方を間違えましたね。差し上げた物は全て一点物です。誤解を招きすみませんでした。」
同じ色を出したくとも、その糸を出してくれた蚕さん達はもう大人の蛾になってしまったのだ……。
だから、間違いなく一点物です。
事情を話して解決した。良かった。自分のあげたもので問題になるのは心苦しいからね。
「………女性はその様な物が好きなのか……」
ちょっと離れた場所からぼそりと零れた一言は高性能な私の耳にはしっかり届いていた。声の主は外交官だった。そうか、片想いの君に贈りたいの?
でも、あげません。味方じゃないしぃ……味方に引き込めたら……とは思うけど、そこは腐っても外交官。そんな手には……
「考えを改めるのなら、彼も譲ってくれるかも知れませんよお兄様?」
「ムムムゥ……」
おや?ミケは味方に引き込む気なのか?でも、無理だと思うけどなぁ……
「しかし、それは父上に特許申請して審査を通った物だな……。確か、量産は出来ないのでかなりの値段が付く筈だぞ。国外に出回るのは当分先になるのだったな……。」
「お目が高いですね狛斗王子。あれは糸から手間をかけて作られるのですよ。それに、紅蓮以外に編めないのです(私も編めるけど……売り物にするほど上手くないのよねぇ)。この組み紐ともう一つは一足先に申請していたのです。」
説明をありがとう母さん。それよりも出かける準備は出来たの?
母さんの説明通り、一足先に組み紐とミサンガ等の工芸品?は申請を先にしていたのだ。あまり作れないけど、それなりに売れそうです。作り方も申請受理されてます。
「あら、それなら今しか機会がかありませんねぇ。それに、作る数も限られている……そうそう我が国、黒の国には入ってきませんねぇ……お兄様?」
ミケの一押しで折れた外交官は結局お買い上げしていった……それでいいのか外交官。
少し黒の国の将来が心配になった今日この頃。
キレてばかりの紅蓮ですが、結構小心者だと思っている節があります。
実態は図太いおばさんです。ホントに図太いです。
さて、こんな長々と続いた小説も後二話で終わります。それまでお付き合いいただければ幸いです。




