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教えて?フロウ先生!―四の姫シリーズ解説短編―  作者: い~ぐる&十海&にゃんシロ
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5話「世界と神々1―始祖神リヒトマギア―」


暖かくうららかな午後…茫洋とした雰囲気の中年風貌が、薬草店にカウンターに紅茶とエッグタルトを乗せる。


「客の入りは少ねぇが、こういう日はのんびりするに限…」


「しーしょーぉーー!!」


のんびりとした午後のお茶の時間という目論みは、思いついてから数分で少女の声と共に掻き消えた。


     ※


「師匠~!先生に『この世界の神々について』でレポート提出の課題出されたの!手伝って!」


「いやお前…そういうのって大人が手伝うもんじゃねぇだろうが。」


自分で調べてレポートに纏めてナンボだろう、と男は返したが少女は胸を張り。


「だから、ウィッチ…魔神の神官な師匠から神様の話を聞いて、私がそれをレポートに纏める、完璧!」


「……あぁ、なるほど…つまり俺に神様について講義しろってことな…。」


「うん!流石に書くの手伝ってなんて言わないわ?私の課題だし!」


にっこりと笑い、エッグタルトを頬張る可愛い妹分に…はぁ、と諦めたように小さく息を吐き出した。

それを見て少女は笑みを深める。彼が折れた時の仕草だと知っているからだ。


「わぁったわぁった…じゃ、まずは始祖神リヒトマギアからな。」


「うん…って、あれ?始祖神?天空神じゃなくて?」


「頭の堅いプリーストは主にそう呼ぶな。『あの堕落した魔神と我らが神が同じ祖であるはずがない!』っつって。」


「えぇ~、そんな理由なの?天空神のがカッコイイからとかじゃなくて?」


「ま、その辺は今は置いとくぞ。リヒトマギアは天空神と呼ばれる通り、世界に広がる空を司る神だ。夜空の星もリヒトマギアの力の残滓だって言われてるな。

 んで、俺らが始祖神と呼ぶ通り…他の12柱の神…ひいてはこの世界を作り出した大いなる始まりの神だ。」


「え、世界を?…神様達で一番偉い神様ってのは知ってたけど…ねぇねぇ、リヒトマギアはどうやってこの世界を作ったの?」


「伝承によると…リヒトマギアはまず、この世界の外に延々と広がっている『混沌の海』を『内』と『外』の二つに分けることで、世界の殻を作ったらしい。

 リヒトマギアは聖と魔…二つの相反する力を持ち合わせた神だから、何かを『分ける』『調和させる』ことが得意なんだそうだ…。

 そして、世界の殻の内側をさらに『表』と『裏』に分けることでこの世界の土台を作ったらしい…この世界は土台の『表側』にあるんだそうだ。」


「え?じゃあえっと…この世界に『裏側』があるってこと!?」


「そうなるな、一説に寄るとそこが魔界らしいが…この辺はナデューのが詳しいかもな、異界の事は異界に詳しい奴に聞くのが一番さね。」


「じゃあ今度聞いてみる!…で、えっと…土台を作ってどうしたの?」


「っと、話が反れたな…リヒトマギアは、殻の内側に残った混沌を『光』と『闇』に分けて命を吹き込んだ…そして生まれたのが。」


「聖光神リヒテンダイトと、闇魔神マギアダルケン…?」


「おぅ、正解。」


俺の説明に割り込んで問いかけてくる少女に頷くと、いやったぁ!と喜色満面に声を上げる。

可愛いが…先生に同じことすると機嫌損ねるぞ?とは何度言っても、俺相手では直らないらしい。


「で、リヒテンダイトは光から赤・黄・青・緑・白……マギアダルケンは闇から赤・黄・青・緑・黒の色を作り出し…そこからそれぞれ5柱の神が生まれた。

 そしてそれぞれの神が土台と殻だけの世界を彩り、今の世界を作り上げた…っていうのが、一応世界の成り立ち…らしい。」


「へぇ…って、らしい?」


「あくまで伝承だからなぁ…流石に真偽までは責任とれねぇし。…まあ、世界の成り立ちはさておき、今度はリヒトマギア自身についてもう少し。」


「あ、そうね。…それでそれで?」


カリカリと白い紙の束にメモ書きのようにビッシリと男の言葉を書き連ねながら次をたずねる少女に、男は小さく苦笑いを浮かべて。


「リヒトマギアは空と星々を司る神だ。光と闇…両方の性質を併せ持つ世界の母…もしかしたら父かもしれねぇ。

 信者が持ち歩く聖印は、白と黒に塗り分けた、または灰色に染めた円盤だな。凝ったのだとそこに星のような装飾をちりばめたりもする。」


「そういえば、創生神殿の入り口にそんなのがあったような…そっか、あれってリヒトマギアの聖印だったんだ。」


「信者の数はリヒテンダイトに並ぶんじゃねぇかな?王都だとリヒテンダイトやリヒテンガルドの信者の数のが多いだろうが、世界中に満遍なく居るしな。

 リヒトマギアの教義はあれだ…『何事も程々が一番』…?」


「…何か師匠が言うと優柔不断っぽく聞こえる。」


「うっせぇっ。」


「っていうか師匠大雑把すぎ!せめてもうちょっと詳しく!」


「え~、俺リヒトマギア信者じゃねぇし…。」


「でも教義とかはちゃんと知ってるんでしょ?」


「…っち、しゃあねぇなぁ…リヒトマギアの教義は『光と闇、双方あっての生命である』だ。良い所も悪い所もあって当たり前、光があれば影ができる。逆を言えば影ができるのは光があるからだ。その両方を自分の中で折り合いを付ける事が大事だ、ってのがリヒトマギアの教義だよ。」


「…なるほど、だから『程ほどが一番』なのね。」


「そーいうこと。」


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