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三年間無能を演じ続けたアンジェリカ、断罪をプロデュースする  作者: 薄氷薄明


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前編

 毒が入っていると気づいたのは、カップを半分ほど飲み干してからだった。

 

 侯爵邸の小応接室。桃色の絨毯に、夕日が長い影を落としている。白いティーセットはオレンジ色に染まり、紅茶の水面が小さく揺れていた。アンジェリカ・アッシェリマンは静かにカップを置いて、指先の微かなしびれを確かめた。

 

 遅効性。南方産の植物毒。量は少ない——眠らせるには充分だが、死なせるほどではない。三年間、毒物学の本を独学で読んできた知識が、こんなところで役に立つとは思わなかった。

 

 誰が入れたのかは、分かっていた。

 

 分かっていても——正直に言えば、少しだけ泣きたかった。毒を盛られたことへの怒りではなく、それが自分の身内から来たという事実が、じわりと胸に滲みた。人は案外、予想していた痛みでも、ちゃんと痛むのだ。

 

 アンジェリカは腹の奥で深く息を吸った。それから静かに立ち上がり、窓を開けた。庭の薔薇が夕風に揺れている。母が愛した白い薔薇。今は義妹が「趣味が悪い」と言って放置させているせいで、半分は枯れかけていた。

 

 その枯れかけた薔薇を見ながら、アンジェリカは決めた。

 

 これを、計画の始まりにしよう、と。

 

 悲しみは後でいい。今は頭を動かせ。

 

 彼女は解毒薬を取り出した。三年前から常に携帯していたそれは、自分で調合したものだ。小瓶の蓋を開けながら、アンジェリカは窓の外の薔薇をもう一度見た。枯れかけていても、根はまだ生きている。根さえあれば、薔薇はまた咲く。

 

 私もそうだ、と思った。根は、まだ生きている。

 

 ——三年前のことを、少し話さなければならない。



 アンジェリカ・アッシェリマンとはどういう人間だったのか、まずそこから語らなければならない。

 

 アッシェリマン侯爵家の長女として生まれ、十五歳でダライアス・マチェロヴァ王太子と婚約した——と聞けば、絵に描いたような完璧な令嬢の話に聞こえる。けれど実際のアンジェリカは、「完璧な令嬢」という型から、それなりにはみ出した部分を持っていた。

 

 まず、料理が好きだった。

 

 侯爵家の令嬢が厨房に入ることは行儀が悪いとされていたが、子どもの頃から隙を見ては料理番に混じり、スープの味見をしたり、パンをこねたりしていた。料理番頭のテレーズは最初こそ驚いたが、すぐに「お嬢様は飲み込みが早い」と言っていろいろと教えてくれるようになった。

 

 テレーズが作る冬のシチューが、アンジェリカの一番の好物だった。温かく、少し塩辛く、根菜がほっくりしていて、寒い夜に体の芯まで染みるあのシチューを、彼女は死ぬまで忘れないと思っている。

 

 次に、人の話を聞くのが好きだった。

 

 正確には——話の「行間」を読むのが好きだった。人がどこを誤魔化しているか、どこを本当に言いたいのか、会話の流れを見ていると、なんとなく分かった。これは特技と呼ぶには地味すぎるし、誰かに自慢できるものでもない。ただアンジェリカにとっては、景色を眺めるのと同じくらい自然な行為だった。

 

 そして——人が好きだった。

 

 これは矛盾して聞こえるかもしれない。「観察する、行間を読む」と言うと、どこか冷たい人間の話のように聞こえるからだ。しかしアンジェリカがそれをするのは、人に興味があったからだ。警戒のためではなく、純粋に——人間というものが、面白かったのだ。使用人も、貴族も、王族も、みな違う顔を内側に持っていて、その顔が外にちらりとのぞく瞬間が、アンジェリカは好きだった。

 

 そういう意味では、彼女は少し変わった令嬢だったかもしれない。



 十三歳の夏の夕方、庭師の老人が一本だけ枯れかけた薔薇の前で途方に暮れていた。

 

「どうしました?」と声をかけると、「この薔薇は毎年この時期に弱る。水をやっても肥料をやっても直らない」と言った。アンジェリカはしゃがんで根元の土を触り、隣の健康な薔薇と比べた。

 

「こっちの根の近くに、何か硬いものがあります。根が伸びられないんじゃないかと」

 

 老人が掘ってみると、大きな石が出てきた。

 

 翌年、その薔薇は一番大きく咲いた。

 

 アンジェリカはこのことをずっと忘れなかった。問題は表にあることはまれで、たいてい根っこに隠れている——そう学んだから。

 

 婚約が決まったとき、アンジェリカは素直に嬉しかった。

 

 ダライアス王太子は当時十七歳で、整った顔立ちと礼儀正しい立ち居振る舞いを持っていた。アンジェリカが彼に好感を持ったのは、一つには、嘘をつくとき目線がわずかに右にずれる癖があることで、それが愛おしくもあったからだ。基本的には、正直な目をしていた。

 

 三年間の婚約期間、アンジェリカはそれなりに幸せだったと思う。

 

 少なくとも——義妹が現れるまでは。

 

 しかしそれも今となっては遠い話だ。現在のアンジェリカは、プロローグで語ったとおり、毒の入った紅茶を飲んだ翌朝に目を覚まし、三年分の計画を動かし始めた。

 

 ここからは、その三年間を振り返りながら語ることにする。



 ライラ・アッシェリマンが侯爵家に来たのは、アンジェリカが十七歳の春だった。

 

 父アッシェリマン侯爵が、旅先で見つけた「身寄りのない少女」だと言った。詳しいことはすぐには教えてもらえなかった。ただ、血縁があるかもしれないとも言った。

 

 ライラは十四歳で、亜麻色の巻き毛と、薄い青の瞳と、誰かを頼りにしているように見えるわずかに上目遣いの仕草を持っていた。初めて会った日、彼女はアンジェリカの手をそっと握って、「お姉様、よろしくお願いします」と言った。その手が、子犬みたいに震えていた。

 

 アンジェリカは——正直なところ——好感を持った。

 

 知らない場所に来て、知らない人たちに囲まれて、それでも精一杯礼儀正しくしようとしている。健気だと思った。この子が幸せになれるよう、自分にできることをしてあげたい、とも思った。

 

 最初の三ヶ月は、穏やかだった。

 

 アンジェリカはライラに刺繍を教え、社交界の礼儀を教え、侯爵邸の使用人たちに紹介した。ライラは覚えが早く、真剣に学んだ。夜ふけにアンジェリカの部屋に来て「今日はこんなことがあった」と報告するのが習慣になった。その時間は、アンジェリカにとっても悪くなかった。妹がいればこういう感じなのかもしれない、と思った。

 

 変化が始まったのは、ライラが社交界に初めて出た夜からだった。

 

 その夜会で、ライラはダライアス王太子と初めて会った。翌日、ライラは「殿下は素敵な方ですね」とだけ言った。

 

 その目の光り方が、いつもとほんの少し違った。

 

 アンジェリカはそれを見て——なんでもないと思おうとした。思おうとして、でも思えなかった。もとより、アンジェリカには読めてしまうのだ。人の目の光り方の意味が。


 一年が経った頃、アンジェリカは父に呼ばれた。

 

「ライラのことだが」と父は言った。「実は彼女の出自を調べた。アッシェリマン家の傍流に当たる娘だ。正式に養女として迎えることにした」

 

 その話し方が、いつもより少し硬かった。父はアンジェリカの顔を見ながら、何かを待っているようだった。反対するか、怒るか、泣くか——そのどれかを。

 

「分かりました。ライラが落ち着いた場所を持てるなら、良かったと思います」

 

 アンジェリカがそう言うと、父の顔から何かが抜けた。安堵なのか、落胆なのか、判別できなかった。

 

 ライラが養女になってから、侯爵邸の空気はゆっくりと変わっていった。使用人たちがライラの言葉に先に反応するようになった。父も変わった。食事の話題がライラ中心になった。アンジェリカへの言葉は以前と同じ量だったが、どこかよそよそしく、申し訳なさそうになった。

 

 それが——怒りより、じくじくと痛かった。

 

 そしてダライアス殿下も、変わった。二年目の夏の夜会で、アンジェリカはそれを確認した。殿下がライラの方を向くとき、目の動き方が違う。礼儀正しい振る舞いではなく、もっと素の部分が出ている。

 

 アンジェリカはその夜、馬車の中で一人になってから、初めて泣いた。

 

 泣きながら考えた。これは感情の問題だ。しかし感情の問題を、頭の問題として解けるなら、解いた方がいい。

 

(問題の根っこはどこにあるのか。薔薇の石は、どこにあるのか)

 

 彼女は窓の外の夜空を見た。それを探すことが、まず最初にすべきことだ、と思った。

 


 メレディス・モンテインと最初に話したのは、社交界のとある夜会の、人気のない庭でのことだった。

 

 その夜、アンジェリカは少し疲れていた。ライラが殿下の隣でよく笑い、殿下がよく笑い返す姿を二時間見ていた。笑顔を貼り付けながら過ごして、それから庭に出て、噴水の縁に腰を下ろして、誰もいないことを確認してから、ため息をついた。

 

「一人で星を数えているのか、それとも泣くのをこらえているのか。どちらですか」

 

 振り向くと、木陰に男が立っていた。二十代前半、騎士団の制服。サラッと流れる赤みがかった茶色の髪に、静かで直接的な目をしていた。モンテイン騎士団長の息子——確か、メレディスという名だった。

 

「……どちらでもないわ。ただ涼んでいるだけです」

 

「噴水の縁に腰かけてため息をついている人を、涼んでいると表現するのは少し無理があると思いますが」

 

 普通ならここで「失礼しました」と言って去るか、取り繕った会話を始めるかのどちらかだ。しかしこの男は——どちらもしなかった。ただ立っていた。立って、こちらを見ていた。

 

「……正直に言います。泣くのをこらえていました。でもこらえ終わったので、もう大丈夫です」

 

「そうですか。それは良かった」

 

 それだけ言って、メレディスは噴水の縁の反対側に腰を下ろした。距離は充分にある。見張るでも慰めるでもなく、ただ隣にいるという体で、空を見上げた。

 

 アンジェリカは——正直、面食らった。こういう対応をされたことがなかったのだ。慰めの言葉でも、的外れな励ましでも、憐れみでも、見て見ぬふりでもない。ただ、一緒に座っている。

 

 しばらく二人で空を見ていた。


「アッシェリマン令嬢。あなたは今、何かを我慢しているように見える。それは今夜だけではなく、もう少し長い時間のことのように見える」

 

「……ずいぶん直接的なのですね」

 

「回り道が得意ではないので。気に障りましたか」

 

「いいえ。むしろ……久しぶりで、少し驚いています。本当のことを言ってもいい相手に会ったのが」

 

 言ってから、アンジェリカは自分でも少し驚いた。こんなことを言うつもりはなかった。しかし言葉が出た。この男の前では、なぜか言葉が先に出た。

 

 それがメレディス・モンテインとの最初の夜だった。

 

 それから月に一、二度、二人は人気のない場所で話すようになった。庭の隅、図書室の奥、厩舎の裏。どちらも「会いましょう」とは言わなかった。ただ、同じ場所に同じ時間にいた。

 

 ある夜、メレディスが言った。

 

「アンジェリカ様。あなたは今、何かを計画しようとしているのではないですか」

 

「……どうしてそう思いますか」

 

「あなたを見ていると分かります。泣くのをこらえているとき、怒りをこらえているとき、そして——何かを考えているとき。今夜の顔は、考えているときの顔です」

 

「……あなたは、私の顔をよく見ているのですね」

 

 メレディスは答えなかった。ただ少し目を逸らした。

 

「……計画、と言えるほど固まってはいません。でも——このままで終わらせたくないとは思っています。このまま黙って追放されて、誰かの道具として使われて終わる——それだけは、嫌です」

 

「当然だ」

 

 短く、迷いなく、そう言った。

 

「手伝えることがあれば言ってください。私にできることは限られていますが、目と耳を使うことならできます」

 

「……なぜそこまでしてくれるのですか」

 

「不当なことが行われているのを見て、何もしない理由がありません」

 

 アンジェリカはしばらく彼を見た。行間を読もうとした。しかしメレディスの行間には、ほとんど何もなかった。言葉の表と裏が、ほぼ同じだった。

 

「……分かりました。一つだけ、お願いがあります」

 

「言ってください」

 

「しばらくの間——私が何をしても、おかしくても、弱くても——信じていてください。それだけでいいです」

 

 メレディスは静かに頷いた。

 

「約束します」



 計画を動かし始めたのは、プロローグの毒の夜より、三年前のことだった。

 

 正確には「計画」と呼べるほど最初から整っていたわけではない。むしろ最初は、ただの観察だった。アンジェリカは日々何が起きているかを記録し、なぜそれが起きているかを考え、誰が何を望んでいるかを整理していた。記録は暗号化した日記として残し、日記は床下の古い箱に隠した。毎夜それを書くことが、彼女の精神を保つ方法でもあった。

 

 観察の中で、アンジェリカが最初に気づいたのは——「ライラが無意識に誘導されている」という事実だった。

 

 ライラの行動パターンに不規則性がある。殿下と接する機会が急に増えたタイミングと、父が態度を変えたタイミングが、ほぼ重なっている。偶然ではないかもしれない。誰かが意図的に状況を設計しているとしたら——ライラ自身ではなく、ライラを動かしている誰かがいるとしたら?

 

 だとすれば、ライラは加害者ではなく、道具だ。

 

 もう一つ気づいたのは——アンジェリカが「優秀な婚約者」であることが、ある人間にとって都合が悪い、ということだった。アッシェリマン侯爵家は王国の有力貴族だが、現侯爵は政治的にはやや保守寄りで、改革派の王太子とは思想的に距離がある。もしアンジェリカが王妃になれば、アッシェリマン家の影響力が王室に直結する。それを望まない勢力は、確かにある。

 

 それが分かった日から、アンジェリカは「無能な令嬢」を演じることに決めた。



 演じる内容は、慎重に設計した。単純な「失敗」ではなく、「愛嬌のある失敗」。完全にバカだと思われると役に立てなくなる。だから「頑張っているのにうまくいかない」「善意だが空回りしている」という方向で演じた。

 

 夜会では、ドレスの裾を少し踏んで転びかけた。でも転び方は優雅にした。笑いを取れるが、品は失わない。ダライアス殿下とのやり取りでは、少し的外れな質問をした——でも的外れすぎない。「頭が悪い」ではなく「少しピントがずれている」という印象になるよう計算した。

 

 三年間、アンジェリカが実際にやっていたことは三つある。

 

 一つ目。毒物学と薬学の独学。父の書斎にある古い医学書を少しずつ読み込んだ。プロローグで解毒薬を携帯していたのは、この結果だ。

 

 二つ目。法律の独学。王国の民法、貴族法、刑事法を、夜ふけに密かに読んだ。婚約破棄には法的な手続きがあること、追放には条件があること、そして——王国大法廷への告訴権は、身分に関係なく市民全員が持つこと。この三点が、後の計画の骨格になった。

 

 三つ目。証拠の収集。これはメレディスの協力が大きかった。騎士団の立場から、アンジェリカが直接触れられない情報を集めた。ライラを取り巻く不審な動き。父の財務記録の変化。殿下の周囲の人間関係の変化。全ての情報は、アンジェリカの暗号日記に蓄積されていった。

 

 そして最も重要なこと——待つこと。

 

 急げば粗が出る。粗が出れば警戒される。計画は、相手が「もう安心だ」と思った瞬間に動かすものだ。だから——泣きたい夜も、笑えない朝も、ただ待った。三年間、ただ待った。



 夜会の招待状が届いたとき、アンジェリカはすぐに分かった。これが、その夜だ、と。

 

 王太子主催の秋の夜会。例年より規模が大きく、王国の上位貴族がほぼ全員招かれていた。侯爵家への招待状には「特別なご報告がある」という文言が添えてあった。

 

 アンジェリカはその招待状を読みながら、深く息を吸った。それから、クローゼットを開けた。

 

 その夜のドレスを選ぶのに、十分かかった。

 

 普段の「無能令嬢」のイメージに合わせるなら、少し派手すぎるドレスを選ぶべきだ。でも今夜は——最後に着る「婚約者のドレス」だ。アンジェリカは水色の絹のドレスを選んだ。母の形見で、少し古いデザインだが、生地の質は今も素晴らしかった。

 

 これを選んだのは計算ではなく、ただの感情だった。最後くらい、好きな服を着てもいい。

 

 夜会は盛大だった。広間には百五十人以上の貴族が集まり、音楽が流れ、シャンパンが運ばれた。アンジェリカは笑顔を貼り付け、「無能令嬢」として振る舞いながら、広間の全体を把握していた。

 

 ダライアス殿下はライラの傍にいた。ライラは薄紅のドレスで、殿下の腕に手を添えていた。その立ち位置が、既に答えだった。


 夜会の中盤、音楽が止まった。

 

 ダライアス殿下が広間の中央に進み出て、一礼した。それからアンジェリカを見た。

 

 目が——右にずれた。

 

 嘘をつくとき特有の、あのわずかなずれ。でもこれは嘘ではない。彼は本気だ。だから余計に、目線が揺れているのだ。

 

「本日は皆様にご報告があります。アッシェリマン侯爵令嬢との婚約を、解消させていただきます。理由は——私の心がすでに別の場所にあるためです。ご令嬢には何の落ち度もありません。これは全て私の問題です」

 

 広間がざわめいた。予想していた言葉でも、実際に音として耳に届いたとき、胸に石が落ちるような感覚があった。アンジェリカは三秒だけそれを感じた。

 

 それから彼女は、泣いた。

 

 泣くことは計画の一部だった。ここで冷静にしていると「実は気にしていない」と思われ、後の計画が読まれる危険がある。また——本当に少し泣きたかった。だから泣いた。計算と感情が、たまたま同じ方向を向いた瞬間だった。

 

 翌日、父が部屋に来た。「しばらく別邸で過ごすことを考えてみてはどうか」と言った。王都から二時間離れた郊外の小さな屋敷だ。体裁よく言えば「療養」、実態は「隔離」。

 

「……分かりました」

 

 抵抗しなかった。抵抗しないことが、ここでの最善手だった。

 

 荷物をまとめながら、アンジェリカは床下の箱を開けた。三年分の暗号日記と、収集した証拠の複写。これだけを旅行鞄の二重底に入れ、他のものは全て置いていった。

 

 最後に窓から庭の薔薇を見た。

 

(また来る。それまで待っていてね)

 

 馬車に乗った。扉が閉まった。馬車が動き出した。

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