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さなえの恋の行く末

私と隼人さんは歩いていた。視界がにじむ。けれど、目を閉じれば涙が零れてしまいそうで、ぐっと我慢した。

「…大丈夫ですか?」

隼人さんは静かな声で聞いた。

「正直…大丈夫ではないです」

そう言うと、堪えていた涙が一斉にあふれ出した。

「私はこんなに好きなのに、佐藤さんは私の恋心を親子間の感情で終わらせようとしています。いえ、もしかしたら、この恋心を佐藤さんも気づいていないだけかもしれませんが、それでも、私から離れようとしている」

私は一気に気持ちを吐き出すと、わんわんと泣いてしまった。

「佐藤さんは多分、さなえさんの恋心に気付いていません。だから、告白をしましょう」

「告白しても、どうせ断られます」

「なぜ?」

「佐藤さんは私をただの仕事仲間だと思っています」

そこまで言って、私は佐藤さんとは親子関係であると嘘をつかないといけない事を思い出した。

「あ…仕事仲間と言うのは言い間違えで…」

「いえ、大丈夫ですよ。嘘をつかなくても」

私はびっくりしたが、バレているのなら嘘をつくのはもう辞めるしかない。

「実は私はロボットで、佐藤さんは私を精神科医にするための公務員です」

隼人さんは驚いたような顔をしていた。

「嘘をついているのは分かりましたが、まさかロボットだったとは思いませんでした。ですが、やっぱり告白した方が良いです」

「何故ですか?」

「言わないっていうのは、自分の気持ちを自分で否定することになるからだよ。さなえさんはもう充分に人の心を持ってる。だから、告白しなかったら、自分の気持ちを否定していることにだんだんと辛さが芽生えてくる。そっちの方が振られた時よりずっと悲しんだ」

隼人さんは私の背中を強く押した。

「行っておいで、振られたら終わりじゃない。けれど、言わなかったら始まらない」

私はその言葉を頭の中で反芻した。

「はい!」

私は押された勢いのまま走り出した。

「僕もロボットでも関係ないくらい、好きだったんだけどな」

その言葉は風に紛れて消えてしまったかのように、私に届くことはなかった。


「佐藤さん!話があります。公園に行きませんか?」

私は一呼吸も置かずに佐藤さんを公園へ誘った。

「構わないが、どうしたんだ?」

「佐藤さんにどうしても伝えなくてはいけない事があるんです。私が後悔しないために」

私は佐藤さんから目をそらさず、真剣な眼差しで訴えた。

「分かった。移動しよう」


公園はもうすっかりと夏の色に染まっていた。夏の熱気とは裏腹に私は冷静に口を開く。

「佐藤さんに恋愛感情を抱いています」

「…なんだって?」

佐藤さんは目を見開いた。

「恋愛感情を抱いているんです。佐藤さんに」

「それは、つまり…どういうことだ?」

「『好きです』より伝わりやすいと思ったのですが…『愛している』なら伝わりますか?」

佐藤さんは顔を真っ赤にして、手の甲で口を押えた。

「いや、すまん。充分分かった。伝わった」

佐藤さんの目は泳いでいる。けれど、ハッとしたように目の動きが止まった。そして、覚悟が決まったように

「俺が良いんだな?」

そう私に問いた。佐藤さんの覚悟はアンドロイドとの恋を世間がどう見るかを考え上での物だろう。

「はい、佐藤さんが良いです」

だから私も、『アンドロイドだから』と後ろ指を指される覚悟を持って答えた。

「そうか、俺も好きだ。さなえの事が」

私は一瞬、フリーズしてしまったが、どんな返事であろうと、伝えたかった事を伝えた。

「感情を持てて良かったです」


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