第7話:鍵は開いた、でも扉が開かないんだが...?!
──深夜2時。
地下牢の通路に誰の姿もなく、空気は張りつめていた。
今日は、いよいよ脱出決行の日。
グルが偽鍵とすり替えて持ち帰った“本物の鍵”は、
俺の手の中で静かに、でも確かに存在感を放っている。
「本当に……ここまで来たんだな」
「まだだ、油断すんなよ」
俺たちは、牢の格子に鍵を差し込んだ。
カチリ──
乾いた音とともに、鍵は問題なく回る。
俺たちは目を見合わせた。震える手で格子を押す。
──開かない。
「……ん?」
「……は?」
力を込めて押す。引く。蹴る。
びくともしない。
「え、待て。鍵合ってるよな?回ったよな!?音したよな!?!?」
「おい、落ち着け!」
「いやいやいやいや!ここで開かないって何!?仕様!?バグ!?いやここゲームじゃねぇよな!?」
グルが真剣な顔で格子と鍵穴を調べ始めた。
「……これ、錆びてる。ヒンジ(蝶番)が完全に固着してる」
「いやいや、何年掃除してねえのここ!」
「俺の担当じゃねえもん!」
焦りと絶望と、シュールさが入り混じった空気。
せっかく鍵を手に入れたというのに、まさかの物理的に開かないというオチ。
「……やばいな、見回りまであと3分」
「くっ……やっぱり、簡単には行かねぇか」
それでも諦められない。
パンのために、自由の味のために
ここまで来たんだ。
「どうする……?」
「ぶっ壊すしかねぇよ。ヒンジごと外す」
「いや音出したら……!」
「出すな。出さずに壊せ」
「できるの!?」
「知らねえけど、やるしかねえだろ!!」
俺たちは目配せ一つで動き出す。
ナメクジのように動く時間の中で、
希望というパン生地が、今まさに潰れようとしていた。




