第5話:副長の私室に忍び込む作戦 〜匂いでバレたら即死です〜
その夜、グルは息を潜めて地下牢から抜け出した。
重たい空気と石造りの壁。馴染みすぎた風景を背にして、目指すのは“副長の私室”。
「……鍵はベッド横の棚。魔獣センサーは通路に一体。見回りの足音は……今のうち!」
今夜の彼は、社畜ではない。
スニーキング・ゴブリン。
この牢獄の最弱戦士が、今、パンのために命を賭ける。
「....頑張れ...ゴブ...さん。」
◆① 通路のセンサー対策
「匂いを嗅ぐ魔物がいる」
→ グルは泥水とクモの巣を全身に塗って“臭いを上書き”。
「……うっ、これでモテる要素ゼロだな」
→ 通路を這うように進み、センサー魔物の鼻の下を息を止めて通過。
◆② 私室の前にて
扉には鍵はかかっていない。中で副長はいびきをかいて寝ている。
「……よし、棚の上……これか!」
テーブルの上に、赤い布の巻かれた本物の鍵がある。
傍らには、ゴブリンがこっそり用意した“ニセ鍵”をそっと握る。
「成功率50%……いや、40%か……?」
ごくりと喉を鳴らす音さえ、異常音に聞こえる。
慎重に、鍵を“すり替える”。──カチリ。
「……やった」
振り返ったとき。
副長が寝返りを打ち、毛布がずるりと落ちた。
「っ……!」
ピクリ、とグルの耳が動いた。
目を開けたら終わり、声を出されたらアウト。
だが副長は、ただ一言つぶやいた。
「……焼きたてのメロンパン……食べたい……」
「……お前もかよ」
すかさずグルは、偽鍵を残し、本物を手に取ってその場を離れる。
魔獣センサーを逆ルートで突破し、地下へと戻ったその顔には──
いつになく誇らしげな笑みが浮かんでいた。
「俺様は.....今、パンに一歩近づいた……」




