第4話:すり替え計画 〜パンのために知恵を出せ〜
「……なあ、グル」
「なんだ」
「副長が鍵を持ってるなら、すり替えるしかバレない方法はないよな」
「お前、いきなり大胆だな」
鉄格子越しの作戦会議。
この牢屋が“戦略司令室”と化している現状に、もはや違和感はない。
「とはいえ、そのまま盗んだらすぐバレる。だから、偽物を用意して“すり替える”んだよ」
「でも鍵ってのは、ただの鉄じゃねえぞ? 形も複雑だし、質感も違う」
「見たことあるの?」
「……昔、牢を掃除してたときにチラッと見た。歯が三つ、柄の部分に赤い布が巻いてあった」
「──なるほど。なら“型”を真似て、それっぽいのを作るしかないな」
◆計画その①:偽鍵を作るための素材集め
•グルが施設内で拾える錆びた鉄片を集める(壊れた檻、鎖の残骸など)
•俺がそれを牢の中で「噛んだりこすったりして加工」
•柄の布部分は、グルの靴下を千切って再利用
「靴下……?」
「悪い。匂いは我慢してくれ。お前がパン焼くまでは風呂にも入れねぇからな」
◆計画その②:すり替えのタイミング
•副長は、深夜になると私室に戻り、2時間ほど仮眠を取る習慣あり
•その間、鍵はベッド脇の“飾り棚”に置かれていることが多い
•看守の巡回は15分ごとだが、“鳴き声に反応する”魔物型センサーが通路にいる
「つまり、静かに動いて、鍵を差し替え、なおかつ臭わず、光らず、喋らず、15分以内に帰ってこいってことか……」
「まさに、社畜スキルの総動員だな」
「無駄に役立ってるのが腹立つな」
計画は立った。あとは素材を集め、タイミングを見極めるだけ。
本当なら、こんな命がけのすり替えなんて馬鹿らしいけど――
俺たちは、パンを焼くために、スローライフを送るために生きている。
そう言い切れるようになっただけ、たぶん前より自由だ。




