第24話:処刑の刻
その日、空気は違っていた。
牢に差し込む灯りはいつもより強く、兵たちの顔はやけに無表情だった。
兵A「立て」
グル「今日はずいぶん機嫌がいいな。給料日か?」
兵B「黙れ。……命乞いなら聞いてやるぞ」
グル「命乞いするぐらいなら、残業代を請求するさ」
縄で縛られ、連れ出される。
廊下を抜け、いつもの副長室ではなく、広間に入れられた。
石の壁。高い天井。蝋燭が並び、光が強すぎるほどだ。
中央に立つ副長ヴァルド=クレイノア。
角が光を反射し、灰蒼の肌が蝋のように無機質に輝く。
三白眼が俺を射抜き、牙をのぞかせて薄く笑った。
ヴァルド「……終わりだ、グル」
グル「終わりか。やっと退職か。送別会はしてくれるのか?」
ヴァルド「その舌を最後まで動かせると思うな」
兵が俺を膝立ちに押し込む。
鎖で首を固定される。鉄の冷たさが喉に食い込む。
兵A「副長、命令を」
ヴァルド「記録に従え。……人間の居場所を吐かぬ限り、処刑する」
俺は笑った。
背中は焼け爛れ、指は血に濡れ、立つ力すら残っていない。
それでも、声だけは出した。
グル「くだらねぇ夢を笑うな……ツバサは……飛ぶんだ……」
ヴァルド「最後まで……か」
副長が片手を上げる。
兵が刃を構える。
空気が凍る。
――その瞬間、俺の頭に浮かんだのは、牢で笑っていたツバサの姿だった。
パンを食いたいと笑っていた、人間の顔。
(……飛べよ、ツバサ。俺の分まで飛べ……)
刃が振り下ろされ、世界が赤に染まった。




