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俺とゴブリンの牢屋脱出スローライフ

告白の瞬間、俺は轢かれた。
「好きです」――その言葉を口に出した直後、真っ赤なバンパーが視界を埋め尽くす。次に目を覚ました時、そこは異世界の地下牢だった。

チートもスキルもなければ、状況も分からない。あるのは、血とカビの臭い、冷たい石床、そして毎日無言で粥のような何かを運んでくる、ゴブリンの看守だけ。

この牢獄生活に、慣れたとは言いたくない。だが、慣れざるを得なかった。現実逃避の果てに浮かんだ唯一の夢は、ただ静かに、パンを焼いて暮らすこと。
――そう、「スローライフ」がしたい。ただそれだけ。

そんなある日、看守のゴブリン・グルが、ぽつりと愚痴をこぼした。
「また夜勤だよ……力こそ正義とか言ってるくせに、弱い種族は働きっぱなしだ」

それは俺が“前世”で感じていたものと、あまりにも似ていた。
ブラック企業に心を擦り減らしてきた社畜の俺と、魔王軍で使い潰されるゴブリン。
言葉も種族も違うのに、俺たちは“社畜”という一点で繋がっていた。

少しずつ心を通わせるうち、俺たちは気づいてしまった。
――この牢獄の外に、まだ見ぬ自由と平和があるのなら。
――そこでパンを焼いて、昼寝をして、生きていくことができるのなら。

「この牢屋の鍵、どこにあるかって、知ってる?」

俺の問いに、グルは目を逸らし、そして言った。
「……聞いたことはある」

かくして、異世界転生した元社畜と、弱小種族のゴブリン看守による、
牢屋脱出&スローライフ計画が――ゆるく、そして確かに始まろうとしていた。
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