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第8話『悪霊退散! 悪霊退散!』

CMが開け、映し出された番組映像にはデカデカと最終日という表示と今まで各チームが動いてきた経路が地図上に示された。


そしてこれから向かうべき目的地も地図上に遅れて表示された。


どうやらそこまで遠い訳でもない様に見えるが、やはり普段の企画より緩めに設定されているんだろうなとは思う。


まぁ、出てるだけで視聴率が稼げるんだろうし。


無理して苦労している映像とかを撮らなくても良いという事なんだろうな。


そんな感想を持ちながら焼酎をコップに入れ、そのまますぐに飲む。


最近ふと疑問なのだが、ロックという飲み方はどういう意味があるのだろうか。


どうせコップに入れた酒はすぐに飲むのに、氷を入れておく意味とは……。


世の中は不思議な事ばかりである。


『いやー。昨日は楽しかったですねぇ! リフレッシュも出来ましたし。今日も頑張りましょう!』


『陽菜。アンタ。よくそんな元気あるわね。昨日あれだけ騒いで』


『元気は資本ですよ! 美月さん!』


『はいはい。元気元気』


『駄目そうですねぇ。では! ヒナが! 車を止めて見せましょう! でりゃ!』


陽菜ちゃんはそう宣言すると勢いよく近くにあった物置の上に立った。


その瞬間上下に赤字でテロップが流れる。


[良い子は真似しないでください]


[この物置の持ち主には後日しっかりと謝罪しました]


そして目立ったかいもあってか車はすぐに捕まり、人の好さそうな青年の車に二人は乗り込んで目的地を目指す。


相変わらずというか車の中で陽菜ちゃんは楽しそうに青年と話をしており、美月ちゃんもダルそうにしながらも車に乗る時はキビキビと動いていた。


プロだ。


【陽菜ちゃん問題児過ぎる】


【番組始まって三時間ちょい。今のところ陽菜ちゃんの行動にだけ良い子は~の注意文出てくるからな】


【実際危険だからね。陽菜ちゃんの優れた身体能力があって初めて出来る事だから】


【言うて立花も出来るから】


【立花が出来るからと言ってどうだというのだろうか】


【もしかして立花が人類の平均とか思ってる超人世界の方ですか?】


【大野「投球は俺、佐々木、立花で見ると立花が一番低いぞ」】


【???】


【ちょっと言っている意味が】


【なんで投手と打者が投球で勝負してんだ?】


【ちょっと! 男子ー! 精一杯のフォローでしょー! いじめないでよー!】


【まぁ立花って高校時代140後半くらいしか出てないらしいし、基本150後半の大野には勝てんだろ】


【立花は別にピッチャーじゃないんだが】


【佐々木は七色の変化球があるしな。カーブとスライダーくらいしか投げられん立花じゃ勝てん】


【だから立花はピッチャーじゃねぇって言ってんだろ!】


【いや、だって高校一年の時、ピッチャーやってるし】


【人材不足の弱小だから、一応投げられる立花が出たってだけの話だろ。それでピッチャー扱いはさぁー。……まぁ殆どの試合完封してるけど】


【もう立花一人居れば良いだろ。状態】


【何が恐ろしいって中学時代はそんな立花に大野と佐々木と鈴木と古谷がいたという現実】


【あれ? 佐々木って立花と同じ学校行ったの高校からって話じゃなかったっけ?】


【中学も一緒だぞ】


【そしてチームも同じだ】


【悪夢のチームじゃん。何? 僕が考えた最強チームでも作ってたの?】


【ちな全中三連覇】


【そりゃそうだろ】


【同年代のプロは語る……悪夢の中学時代】


【倉田、仙崎辺りはマジで中学を暗黒時代とか言ってるからな】


【相変わらず立花の話になると饒舌な奴が多いな。陽菜ちゃんと飯塚を映してるんだから二人の事語れ】


【一人部屋で酒飲んでるオッサンは野球の話を誰かとしたいんや】


「え? 俺コメント打ったっけ?」


【あれ? 今俺いた?】


【妙だな。俺と同じ奴が居る】


【どいつもこいつも、悲しい奴ばっかりだな! まぁ俺もだが】


【お前もかい!!】


【てか陽菜ちゃんたちの話って言ってもなぁ。順調ですねとしか言えんだろ】


【健全なヒッチハイクじゃトラブルも無いしな。目的地を絞って動けば良いし】


【まぁ二人はライブやバラエティー番組だって忙しいからな。楽なポジションに置いておかないとって事だろ】


【佳織ちゃんも忙しいんだが? 俳優だって暇って訳じゃないぞ】


【そういう事なら水谷も全国ツアーが今度来るから、かなり忙しいはず】


【天王寺は……まぁいいや】


【可哀想な天王寺】


【まぁ言うて天王寺も忙しいだろ。多分。知らんけど】


【台無しなんだよなぁ】


【でも天王寺だって十時間勤務を一日二回やってる俺よりは忙しくないだろ】


【一日は二十四時間しかないんですけど?】


【そこに睡眠時間が四時間あるじゃろ】


【死ぬわ】


【てかテレビ見て掲示板に書き込んでる場合じゃないだろ。寝ろ】


【いや、今勤務中だから。酒飲みながら、ツマミ食って、テレビ見て、掲示板に書き込みしながら。仕事してる】


【この仕事のおまけ感】


【実質不労所得で笑う】


【ただの自慢か、消えろカス】


【いきなり辛辣で笑うわ】


【ちな彼女持ち】


【ウゼェェエエエ!!】


【悪霊退散! 悪霊退散!】


【悪霊扱いで笑う。まぁでも夢ばっか見てないで、さっさと成仏しろよ】


【まぁ、忙しいどうこうはアレだが、二人について話すなら、やっぱり不仲なんて嘘やん。って話とか】


【あー。あれな。陽菜ちゃん美月不仲説。どっから出てきたんだっけ?】


【陽菜ちゃんのデビュー時、飯塚のユニットが炎上して解散してるから、その件で陽菜ちゃんを恨んでるって話】


【いや、炎上したのは陽菜ちゃんのせいじゃなくて、頭のおかしい自称ファンのせいだろ】


【それは分かってるけど、原因を恨みたくなったって事じゃないの?】


【てかそんなに仲悪いならさっさと解散すれば良いのでは? 別に事務所側も無理に二人をセットにしなくても良いだろ】


【それぞれファン層違うもんな】


【もう答え出てるけど、特にメリットも薄いのにユニット組んでるんだぞ。不仲もクソも無いだろ】


【まぁそれはそう】


【最初に言い始めた奴はバカなのか?】


【いやー。それはどうだろ。案外同じアイドルが広めようとしてるって事もあるんじゃないの?】


【評判落とそうって? やっぱり頭足りないだろ】


【他人を羨む事しか出来ないのに、アイドルなんてやってる奴だぞ。そりゃ頭足りないでしょ】


【まぁ、アイドルって決まった訳じゃないから】


【どうだか。こういう話ってちゃんと調べとかないと後で大事件とかに繋がるかもしれないぞ。嫌だからな? 陽菜ちゃんが刺されてアイドル引退とか】


【陽菜ちゃんが刺されるとしたらアイドルとしての嫉妬より、日々のストレスって方が理由としては強そう】


【その理屈だと陽菜ちゃんが一番迷惑かけてるのは立花なんですけど】


【え!? 立花が!? 陽菜ちゃんを、刺す!?】


【なに? エッチな話? 服脱ぐからちょっと待って】


【頭ピンクかよ……】


【しょうがないね。頭おかしいからね】


【兄妹だって言ってんだろ】


【血が繋がってないって(以下略】


【血が繋がってなくても、立花にとっては妹。それ以上でもそれ以下でも無いぞ。ソースは大野】


【大野は陽菜ちゃんのアンチだから】


【大野「小学校の時、試合があるから迎えに行くと、玄関先で煩い方のチビが言うんですよ。お腹いたい。お腹いたいよーお兄ちゃん。ってね。それであまり試合に出てなかったんですね」】


【容易に想像出来るの笑う】


【大野はキレてるし。陽菜ちゃんはそんな大野を立花から見えない位置で挑発してるんですね。分かります】


【うーん。このクソガキ感】


【ちな。立花が高校勧誘を全て蹴って、近所の弱小無名高校に入ったのは、陽菜ちゃんが嫌がったからというのが一番有力な説でして】


【球界の宝に何してんねん】


【まぁ近所の高校を選んでなかったらあの事故は多分無かったからね】


【やべぇ、今まで陽菜ちゃんのファンだったけど、アンチになりそう】


【真実かどうかは知らないぞ。高校進学の件に関しては関係者誰も何も言わないしな。噂じゃ、立花には余命幾ばくも無い恋人が居て、その人と最期の時間を過ごす為に、地元を選んだんじゃないかとも言われてる】


【泣ける】


【自分の人生と恋人の時間で恋人の時間を取る男。立花光佑】


【行動までイケメンなのはズルいと思うの】


【ある取材で立花が事故ってからも球場に来た件について、「どうしてもホームランを届けたい人が居た」などと語っており。かなりマジなんじゃないかって言われてるな】


【でも結果的に立花は人生捧げてたであろう野球を失って、その恋人も失ってって事か。よく今笑ってんなアイツ】


【そこはほら。陽菜ちゃんが居るし。案外妹の相手をしている事が癒しになっているのかもしれん】


【もしくは陽菜ちゃんが立花の希望になってるとか。色々とアレだけど、弱ってる相手には優しいし、それで立花が救われてんのかもしれんな】


【一瞬陽菜ちゃんのアンチだったけど、またファンに戻るわ】


【お前の手のひらドリルかよ】


色々な話があるんだなぁ。としみじみ話を見ながら俺は頷く。


アイドル業界も闇が深そうだが、陽菜ちゃんと美月ちゃんが楽しくいつまでも活動してくれればそれが一番だと思う。


うん。


俺は自分の考えに納得しながら酒を飲んだ。


『うーん。ビックリするくらい順調に来ちゃいましたねー』


そして再びテレビへ意識を集中した俺は、車から降りて伸びをしながら歩いている陽菜ちゃんと美月ちゃんに視線を向けた。


殆どトラブルらしいトラブルもなく、順調に進んでいた二人は、十五時という時間になって既に目的地付近の町に到着していた。


一応ゴールは近くにある展望台なのだが、ここから歩いても三十分くらいで着くという。


タイムリミットは十八時だからもう余裕のゴールという所だろう。


二人はのんびりと観光をして、アイスを買いながら歩く。


そして、展望台への道案内の地図を見ながらその場所を確認していた。


『一応コースは二つあるみたいですね。ハイキングコースとモノレール』


『まぁ、モノレールで良いんじゃないの? 一応レースだし』


『そうですね。のんびり歩いてたら追いつかれちゃいましたとかだと怒られちゃいますし』


『そうね。そうと決まればモノレールに行きましょうか』


二人はそのままモノレール乗り場の方へ向かって歩き始めた。


そして、ここまで映して番組はCMに突入する。


【ハイキングコースと、モノレールか。フラグかな?】


【まさか! ハイキングコースでモノレールより早く進める奴が居る訳ないだろ】


【もうその言葉が完全にフラグなんだわ】


【でも誰がそれをやらかすかは言わないけど、佳織ちゃんも居るしな。無茶は出来んだろ】


【あぁ、そういえばこれってチーム戦だったな】


【先に立花だけゴールして、後から佳織ちゃんもモノレールで来るってやれば良いじゃろ】


【流石に二人一緒にゴールしないと無効じゃない?】


【そこは番組の裁定によるとしか】


【立花専用の縛りルールがあるのは笑う】


【番組「人間の勝負なので、人間のルールに従って貰います」】


【悲報。立花遂に人間扱いされなくなる】


【今始まった事でも無いから】


【ま、CM明けに期待やな】

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