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第4話『あれ? CM明けたら別番組始まった?』

さて、既に波乱の様相を呈している、本番組だが……電車組はと言えば、酷く穏やかな旅であった。


実質ここだけ別番組の様である。


予定も大して組まず、ローカル線に乗りながら、目的地までの道のりを駅員に聞きながらのんびりの旅だ。


『あ。光佑さん。見て下さい。向こうに大きな山がいっぱいありますよ!』


『あぁ、大きいね。しかも夏だから緑もいっぱいだ』


『綺麗ですねぇ。大自然って感じです!』


『そうだねぇ』


テレビの向こう側では穏やかな空気が流れており、先ほどまで映っていた争いなど何処かへ置き去りにしてきたようだった。


実に落ち着く。


【あれ? CM明けたら別番組始まった?】


【御覧の番組は間違いなく旅物語です】


【テロップ出した方が良いよ。勘違いするから】


【いや、いつもの番組テンションはこっちだからね? 旅慣れしてない芸能人が観光とかグルメとかしながらローカル線の厳しさと戦う話だから】


【ようやく本編が始まったって事ォ!?】


【さっきまで俺達は何を見てたんや】


【本編です】


【やばい。混乱してきた】


【俺らが混乱している間に、立花光佑と佳織ちゃんペアは電車のジジババとフレンドリーに話ながら饅頭貰っとるぞ】


【早すぎだろ】


俺は混乱を楽しんでいる掲示板の住民と一緒に混乱を楽しみながらテレビを見ていた。


しかし、恐ろしいほどのコミュニケーション能力だ。


ご老人方も、立花光佑や山瀬佳織も。


『それでさ。この辺りは昔っから山とか川ばっかりだってんで、山さ入って山菜採ったりな。魚なんか捕まえて食ってたんだよ』


『山菜にお魚さんですかぁ。凄いですねぇ。格好いいですねぇ。私も山菜採りとか釣りとかしてみたいです』


『ワハハハ! 面白いお嬢ちゃんだ。魚釣りがしてぇなら教えたるよぉ。ただな。俺らは釣りなんて時間の掛かる事はしねぇ。これくらいの岩によ? でけぇ岩ぶつけて、魚を気絶させてやるんだ』


『わぁ。凄そうです』


『ま。今は禁止されてるから出来ねぇけどな! ワハハハ!!』


『兄ちゃんはどうだい。釣りとかやらんのかい』


『俺は、昔山間に住んでましたからね。やってましたよ。ただ、あんまり得意では無かったですね。竿を上げるタイミングが難しくて。飛び込んで手でほいほい捕まえる方が早かったです』


『面白れぇ兄ちゃんだ! 手で魚を捕まえてたのか! ワハハハ!』


【お爺さん。冗談を言っていると思うでしょう。その人。本気です】


【立花光佑はクマかなんかなの?】


【実際クマVS立花光佑のマッチアップは気になる所ではある】


【それは何? 魚とり対決? 直接戦闘?】


【どっちでもいけるやろ】


【お前は立花光佑を何だと思っているんだ】


【しかし、ワラワラ出てくるな。この老人たちは何処にいたんだ】


【電車中の老人が集まってきているまであるな】


【実際二人と話しているのは楽しそうである】


【どんな話でも、楽しそうに聞いてくれるからな。しかも孫みたいな年齢の子たちがさ】


【もうこれ、なんかの商売出来るレベルだろ】


実際俺も見ていて同じ事を思っていた。


二人は実に話を聞くのが上手い。


多分意識はしていないだろうが、話が途切れそうになったら、新しい話題を提供し、向こうが乗ってきたら聞き役に徹する。


最終的に二人は乗換駅で降りる事になり、その先へ向かう老人たちとは別れる事になったが、実に惜しそうであった。


そして、二人はそのままチェックポイントまで順調に向かい、十分に観光地を満喫してから、次なる目的地へ向けて移動を始めた。


その道中全てで出会った人たちと話し、親交を深めていく様は、凄いとしか言い様がない程であった。


【順調だなぁ】


【このまま行くと某駅で今日はおしまいって感じかな】


【何か、どうにかしてもっと向こうの駅に行けないか。考えてしまう】


【いやぁー。難しいだろ。山瀬佳織の体力も大分減ってるのか。もう半分くらい眠ってるし。立花光佑が無理させるとは思えない】


【確かになぁ。だが、何だろうな。この穏やかな旅を汚されたくない気持ちは】


【汚れ呼ばわりは笑う。今人気のアイドルと俳優なんですけど?】


【実際二人の旅を見ていると、このまま穏やかな一日目を終わって欲しいと思うのは人情だろ】


まぁ、でも陽菜ちゃん達に会ってもそれはそれで面白いだろうなと思うのは、きっと俺が陽菜ちゃんや美月ちゃんのファンだからなんだろうな。


しかし、そんな俺達の考えに反する様に、画面の向こうではコトが始まっていた。


切っ掛けは、電車の中で大荷物を持っていたお婆さんに山瀬佳織が話しかけた所からだ。


丁度降りる駅も同じだという事で、立花光佑はその荷物をお婆さんの家まで届けると言い始めたのだ。


最初は遠慮していたお婆さんだったが、旅をしている事や、丁度この駅で泊まる予定だからと言い、上手く説得してしまった。


そして、こんな立花光佑の行動に山瀬佳織も頷き、二人はお婆さんの家に向かう事になる。


『悪いねぇ。助かったよぉ』


『いえいえ。お役に立てて良かったです』


『お婆さん。こっちの荷物も置いておきますね!』


『あぁ、ありがとうねぇ。お嬢ちゃん』


そして玄関先でお礼を言っていたお婆さんだったが、ちょうどよくお爺さんも帰宅し、折角だから家に泊っていきなさいと言ったのだ。


無論最初は遠慮していた二人だが、荷物を持ってくれたお礼が出来なければ悲しいと言われれば断る事も出来ずに、そのまま家に泊る事となった。


【こ! れ! は! 神展開】


【人助けって、いい事もあるんだなぁ】


【二名ほど不幸になってますけど】


【二人以上幸せになってるから、ヨシッ!】


【何を見てヨシッって言ったんですか!】


【婆さんの料理を手伝う立花光佑と、爺さんと将棋をする山瀬佳織。なんか普通に本物の孫みたいでウケるな】


【立花光佑って料理出来たのかって驚きと、山瀬佳織って将棋出来たのかって驚きが同時に来るんだが】


【立花光佑の料理は有名だろ。食った人間全員が絶賛するレベルだぞ】


【えぇい。弱点は無いのか。弱点は!】


【天運……が無い事ですかね。望んだ事は大抵叶わない男】


【あまりにも悲しい】


【てか山瀬佳織の将棋に関しては知ってる奴おらんのか】


【知らん】


【俺も】


【プロ級って事は無いだろうけど、それなりに打てるみたいね】


【あまりにも謎が多すぎる女、山瀬佳織。ちょくちょく衝撃の事実が判明するのどうなっとんねん】


【盤面を、盤面を見せてくれ。それで腕前が分かる】


【残念ながら、場面はカットでございます】


【ふぁっ!】


【これは!!】


『痛くないかい?』


『はい。大丈夫です!』


動揺し加速する掲示板の住民を横目で見つつ、俺はテレビを見て少しほっこりとしていた。


そこにはお風呂上りであろう山瀬佳織の髪を乾かしながら、整えている立花光佑が居たからだ。


何度か陽菜ちゃんも語っていたが、立花光佑には妹が何人かいるらしく、髪型も整える事が出来るらしい。


【う、羨ましい】


【兄妹どころか父と娘って感じだな。もはや】


【立花光佑が落ち着きすぎなのと、佳織ちゃんが少し幼いからな】


【爺さん婆さんもほっこりしとるやん】


【そら、こんな二人が突然生えてきたらそうなるよ】


【穏やかな一日目の終了って感じで最高か】


【まぁ荒れるとしたら二日目以降だからな。一日目は大抵大人しいよ】


【既に一日目から荒れてそうな所はあるけれど、そこは見ない様にしよう】


【いったいどこの二チームなんや】


【もう答え言ってるんですけど。それは】


【CM明けたらどうなってるか分かるぞ】


【楽しみな様な、楽しみじゃない様な】


【私は楽しみです(愉悦の民)】


【クソ外道で笑う】


なんやかんやで一日目が無事に終了し、番組はCMに突入した。


俺もこの隙間にトイレから、追加の酒やツマミを取りに行く。


ようやく三分の一が終わったところだが、既に満足度はかなり高い。


しかし、多分本番はこれからだろうという予感はしていた。

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