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第10話『まぁ何にしても面白い番組だった』

遂に最終日最終チームの映像となった旅物語。


想えば随分と長い間視聴してきたように思う。


一緒に見てきた掲示板がやたら濃かったというのもあるが。


何にせよ。


最後まで見届けようと、俺は酒を口にするのだった。


そして、番組はバスに乗り喋る天王寺と水谷を映し出していた。


『すっかり忘れてたけどさ。この番組ってどれだけ早く着くかって勝負してたんだよね』


『今更ですか』


『いやーハハハ。昨日もすっかり夜遅くまで語り合ってたしね。勝負だって事忘れてたよ』


【そういえばこれ勝負してたんだっけ】


【完全に忘れてたわ】


【この終盤に気づかせてくれるとは、やるな水谷】


『でも天王寺君だってそこまで勝負にこだわってないだろう? 昨日の夜だって、調べたら深夜バスあったのに、乗らなかったし』


『え? 光佑さんとゆっくり話をする機会なのに、深夜バスに乗る? 何のメリットが?』


【心底疑問みたいな顔するな】


【番組の意向に従え】


『ハハハ。天王寺君は本当に立花さんが好きなんだなぁ』


『当然です。光佑さんは僕の兄みたいな方ですから』


『仲が良いのは良い事だ』


『水谷さんだって、立花さんと色々話してたじゃないですか』


『興味深い人だからね。どんな少年時代だったのかとか気になるじゃないか。まぁ、結構普通の人って感じだったけど』


【立花が普通の人……?】


【妙だな。それは偽物では】


『特に晄弘さんって人と加奈子さんって人の話は面白かったね』


『そうですね。僕も初めて聞きましたけど。幼馴染って結構良い物ですね』


『天王寺君は幼馴染とかは……あー。子役やってたし。居ないのか』


『いや、仕事仲間ですけど、居ますよ。ほら佳織。あの子とは結構長いんで、幼馴染と言えば幼馴染ですね』


『ちょっとその話詳しく聞かせてもらおうか』


佳織ちゃんと天王寺は幼馴染なんだ。と今聞いた新情報に頷きながら何か面白い情報ないかなと掲示板を見たが。


別の事で激しくコメントが書き込まれていた。


【違う。詳しく話すのはそっちじゃない】


【晄弘って大野の事だろ!? 加奈子って、確か大野の彼女じゃん。そっちの話を聞かせろ下さい!】


【まさかの大野情報で笑う。はよ。はよ!】


【早くしろー! 間に合わなくなっても知らんぞ!!】


【興奮しすぎだろ。少しは落ち着け】


【大野は基本自分語りしないし。彼女の事なんてもっと話さんからな】


【佐々木を見習ってほしい】


【いや、佐々木を見習われても困るんだが。彼女について話すたびに、紗理奈紗理奈うるせぇんだわ。もう名前覚えちまったよ】


【かなり可愛いらしいからな。あれだけべた惚れになるのも分かる】


【佐々木、例の彼女に独占欲凄いしな。なんかのパーティーに呼ばれた時は露出が殆どないドレスだったらしいし】


【なんか噂じゃ背中に酷い傷があるとか何とか】


【ほえー。事故か何かかね】


【じゃないの? まぁでも、どんな酷い傷だろうと、あれだけ横で可愛い可愛い言ってるスピーカーが居るし、気にならんだろうな】


【実は佐々木は良い奴】


【実はも何も。うるさいだけで滅茶苦茶良い奴】


【唯一の欠点はやかましい事と言われるほどに凄い奴だぞ。佐々木は】


【大野も口数少ないだけで良い奴だしな。立花の周りには良い奴が集まるんだな】


【なお天王寺】


【なお陽菜ちゃん】


【陽菜ちゃんは悪い事もするけど、ちゃんと謝れる子だから】


【……天王寺は?】


【陽菜ちゃんは何だかんだ良い子だから】


【おい……天王寺】


【天王寺? 知らない子ですね。確か陽菜ちゃんといつも共演していたのは佳織ちゃんでは】


【存在を消すんじゃない】


【よくよく考えると水谷も良い奴だしな】


【よくよく考えなくても水谷は良い奴定期】


【水谷の知り合いは全員口揃えて苦労人だけど良い奴って言うもんな】


【その発言をしてるのが、大抵水谷に苦労させてる奴で笑う】


【いったいどこのユニットメンバーなんや】


【答え言ってるぞ】


【エレメンタル。どうしてこんな事に……】


【いや、まぁ不祥事は起こしてないからね。顔も良いし】


【顔が良い事は何の免罪符にもならんのだが】


【苦労人、腰が軽すぎるチャラ男、金遣いの荒いギャンブル狂い、オタク。駄目そうですね】


【最後!】


【なんでオタクが駄目みたいに言われてるんですかねぇ】


【生もので百合妄想してるカスだからじゃないですか?】


【まぁまぁな罪人で笑う】


【火野坂「陽菜ちゃんと佳織ちゃんはどっちが攻めなん?」 佳織ちゃん「せめ? 陽菜さんはいっつも私を引っ張ってくれますよ」】


【犯罪だろ】


【終身刑にしろ】


【本人にクソみたいな質問してんじゃねぇよ。地獄に落ちろ】


【佳織ちゃんが何も知らないから良かったものを】


【良くはねぇな?】


【まぁこの後、水谷に説教されてるから】


【やはり水×火って事ね】


【変なのが沸いてきたんだが。巣に帰れよ】


【妄想するなとは言わんが、棲み分けはしっかりしろ。そして本人には絶対に迷惑をかけるな。鉄則だろ】


【ルールを守れないカスは、業界の悪だといい加減理解して欲しいわ】


【こういう事を水谷は毎日言ってるんだなと思うと、アイツの苦労には同情するわ】


【哀れな奴。もう一人で活動した方が良いんじゃねぇか?】


【事務所「そしたら他のエレメンタルメンバーが問題起こした時にカバー出来る奴居なくなるじゃん」】


【カス過ぎる】


【これが有罪】


【お前らの仕事だろ】


掲示板が妙な方向に走り出した事で、俺はとりあえずまたテレビに意識を集中する。


既にバスチームも目的地の町についているが、おそらく陽菜ちゃんたちと同じ様な時間なんだろうなと思う。


ただ、時計が出ない為、正確な時間は分からなかった。


まぁどこが一番早く着くのか。その演出なんだろうなとは思うが。


『じゃあとりあえずモノレールですかね』


『そうだね。一応競争だし。ハイキングコースはまぁ追いつかれちゃうかもしれないからね』


『そうですね。まぁ光佑さんならハイキングコースでも余裕でモノレールより速く行けそうですけど』


『山瀬さん居るし。流石に』


『いや、光佑さんなら佳織を抱きかかえたままでも行けると思いますよ。僕も昔、体験してますから』


【やはりフラグ回収来たか!】


【いや、でもまさか】


【どうやらそのまさかな展開が来たようだな】


天王寺たちが乗り込んだモノレールには既に陽菜ちゃんたちがおり、二人とも驚愕した顔をしている。


そして、陽菜ちゃんたちから視線を逸らす様に天王寺が窓の外を見ると、そこにはハイキングコースに向かって歩く佳織ちゃんと立花がいた。


そして佳織ちゃんは天王寺と陽菜ちゃんに気づいたらしく、笑顔で手を振っている。


【キター!!】


【ここまで来て逆転とか】


【終わったやん】


【モノレールは所詮立花に勝てないからね】


【 終了 】


絶望的な空気になるモノレールの内部と、やたら盛り上がっている掲示板。


そして、天王寺チームと陽菜ちゃんチームはそれぞれ無言で見合った後、動き出したモノレールの内部をしれっと移動し、扉の方へと向かっていく。


どうやらここから走って目的地へ相手チームよりも先にたどり着くことを目指すらしい。


まぁ最下位を回避する為だろう。


そして、それからそれなりに時間が経って、モノレールの扉が開いた瞬間、二人は走り出した。


なりふり構わず走る。


まさに全力疾走というような形だった。


幸いと言うべきか、人はあまりおらず二人の邪魔をする者は居ない。


そして、二人はほぼ同時に目的地のある展望台の所に駆け込んだ。


『『どっち!?』』


その直後、カメラの方を振り返り、どっちが早かったかと問うた。


汗をだくだくと流していても、その見た目の良さは失われないのだから流石だと思う。


そして、カメラが同時でしたと言うと、二人は酷くガッカリした様子で落ち込み、その場に座り込むのだった。


【めっちゃ足早いな】


【確かに】


【これで同着二位だし。まぁ良かったんじゃねぇの?】


【てか、立花はどこだよ。佳織ちゃんも居ないんだが】


【確かに】


【なんかのトラブルか?】


【陽菜ちゃんたちも気づいたな。探し回ってる……が見つからない】


【何がどうなってるんだ?】


【この終わり際になんでトラブルが起こってんだ】


俺も何か異様な事態が起こっている空気な番組と掲示板を交互に見ながらジッと見守る。


一応何のトラブルも起こってないだろうという事は、分かるが、それでも張り詰めた空気が流れていた。


そして、テレビで一時間後というテロップが流れたその直後。


『お待たせしましたー』


『佳織ちゃん! 無事だったんだね!?』


『無事? 何がでしょうか』


『ほら、全然来ないから。私、心配になっちゃって』


『ハイキングコースで来ましたからね! あ。時間を掛け過ぎてしまいましたか?』


『え? 普通に歩いてきたの?』


『はい。ハイキングコースですから』


『えっと、お兄ちゃん? ほら、佳織ちゃんを抱えて、ぴょーいって来ると思ったんだけど。だって競争だし』


『佳織ちゃんがハイキングしたいって言ってたしね。特に邪魔をするつもりは無かったよ』


『なんだぁー! そういう事かぁー!』


安心した様に崩れる陽菜ちゃんを立花は抱えて、そのまま佳織ちゃんと一緒に展望台まで来た。


そして、今回の旅の話を語っていく。


俺はそこまで見終わって。謎の達成感を感じながら食器を片付ける準備をするのだった。


良い休日だ。


また明日からも頑張れそうだった。


【まさか裏の裏を読んでくるとは、やるな立花】


【佳織ちゃんの要望を叶えただけなのに策士みたいに言われてて笑う】


【何やっても立花が化け物扱いされてるの、ホンマ】


【立花も普通の人間なのにな】


【それはない】


【まぁ何にしても面白い番組だった】


【また次回も期待してるぞ】


【なお来週は誰も登場しない模様】


【視聴率さん……】

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