国政
ベッドに寝かされた俺が目覚めた時、ヴァースとルルティアは椅子に座って俺を眺めていた。
「もう部屋か、ヴァースすまないな」
「もったいなきお言葉」
「さて…寝起きだと頭が回らないからな、ルルティア、悪いが3人分の紅茶を用意してくれるか?」
「畏まりました」
ルルティアが部屋を出ていくのを確認してから俺はヴァースに尋ねる。
「ヴァース、フェアネス王国との戦争は参加していたのか?」
暗い顔になったヴァースは静かに返事をした。
「私はその時まだ分隊長でした」
「どんな戦争だったか初めから詳しく頼む」
「最初は…付近の村を襲い、女子供を人質とし男は殺害しました、各地を回った後に王国の前に人質を並べ降伏を促しました、返答がなかったので人質を奴隷として国に送り城攻めが始まりました」
「国とはここか?」
「はい」
「そうか、続けてくれ」
「城攻めは容易ではありませんでした、高い壁、上から飛んでくる砲弾、弓、まともに戦っても勝てない、そう思い私は団長に兵糧攻めを提案しました」
「賢いな」
「誰も死なず戦争が終わる方法を提案したまでです…」
「それが功績で副団長か」
「…半年近くたって白の上に白旗が見え、同時に開門され、戦争は終わりです」
「僕が聞きたいのはその後だ」
ヴァースは目を瞑り
「…言いたくありません」
そう言った。
「僕には信頼できる人間がいない、その中でも信頼できるかもしれない、そう思える人間がルルティアとヴァース、君だ」
「…」
「頼む、僕は命令はしたくない、君の意思で話をして欲しいんだ」
ヴァースはゆっくりと目を開いて涙目で語り始めた。
「開門後は疲弊し切った兵士を反乱させないためにと言い10人ずつに分け、外に連れ出した後見られない様に殺し数を減らしました。城下町は閑散としていて、城まで誰にも妨害されることなく辿り着けました。そして城に残っていた貴族を皆殺し、その男児も殺害し女児は国に送られました、ルルティアもその1人です、フィアネスの王はすでに誰かに殺されていました、恐らく内輪揉めかと…」
「街の住人はどうなった」
「建物はドア意外を壊すことは禁じられており、ドアを蹴破って建屋を占拠、略奪が始まりました」
「男は奴隷に、女は幼くとも兵士に嬲りものにされたあと奴隷に、貴金属などは全て回収、フィアネス王国は消滅しました、今残っているのは跡地です」
戦争後の陵辱はどの世界でも同じだな、指揮官をしていた団長は自国だと英雄になっているのだろうか。
「指揮をしていた団長の名前は?」
「メルト団長といいます、既に他界しております」
「そうか」
「私が暗殺しました」
驚いた。
普通に考えて重罪になるだろう。
戦争の功績だけでなく上の席が空いたから副団長に昇格したわけか。
そしてそれを俺に話すことはつまり…
「ヴァース、よくやってくれた」
「私がしたことは重罪です」
「ん?犯罪者を処刑したすることは罪には問われないぞ?」
「メルト団長は戦争の立役者です、英雄と呼ぶ声も…」
「だったら僕が許す、ヴァースがしたことは間違いだけど間違っていない」
「…ありがとうございます」
少しヴァースの顔が晴れた、誰にもいえず背負って来たのだろう。
その苦しみは理解にも及ばない。
「フィアネス王国のことはもういい、他にも聞きたい方があるんだがルルティアも一緒に話がしたいな」
「彼女に紅茶の準備をさせたのは…」
「聞かせたくないだろ?こんな話」
ヴァースは椅子から立ち上がり俺に跪く。
「ガルド様、この国をお導きください」
「僕に王になれと?」
「ガルド様の様に器の大きいお方を見た事がありません、どうかこの国を…」
「今の僕には無理だ、それに王になるつもりはない」
部屋がノックされる。
紅茶を運んできたルルティアが入ってくる。
「これは…どういったことでしょう?」
「王になってくれと懇願されている所だ、正直困っている」
「ヴァース様、ガルド様にはガルド様のお考えがあります、決して悪い様にはされないので信じて待ちましょう」
「ルルティアは僕の事を王子として見ていないよな」
「生まれた時からお世話していますから…どちらかと言うと弟に近いかもしれません」
「ふっ、他の人に聞かれない様にな」
「はい」
嬉しそうに返事をして紅茶の準備を始める。
それから俺は2人と話を続けた。
これから俺はこの国のことを学ぶ必要がある。