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城下町

昨夜ハーベストとカルアと3人で話をした。

カルアは教会で崩御の試練について話を聞きに行ったが何も得るものはなかったらしい。

それはそうだ、俺が適当に言っただけだから。

ハーベストからは質問攻めにあった。

殆どは俺に取ってどうでもいい質問だったが今後どうするつもりなのかを聞かれた時は少し驚いた。


「これからお前にはやってもらう事がある!」


とか言われたらどうしようかと思っていたが


「今後お前はどんな風に生きていくつもりなのか」


そう聞かれた。

自分の将来は自分で決めなさいと言われているようで家族の温もりを感じた。

現実では作家を目指す際に親父と喧嘩して無一文で外に放り出された。

殴られたし蹴られたしお前を育てて後悔したわと捨て台詞まで吐かれた。

親父が他界する数年間は山岡さんにお世話になったもんだ…。

ハーベストには少し考える時間が欲しい、いろんな分野の優秀な家庭教師をつけて欲しいと伝えその日は解散。


俺は街の散策にメイドのルルティア、王国騎士副団長のヴァースを共にして出ている。


「2人ともありがとう、我儘に付き合ってくれて」

「もったいなきお言葉、お元気になられて我々騎士団も喜んでおります」

「私はガルド様のメイドですから、何処までもお供します」

「ヴァースは硬いよ、王子とはいえ子供なんだから普通に話してよ」

「ですが…」

「じゃあ命令で」

「わかった…いえ、わかりました」

「そのくらいで大丈夫だよ」


街の雰囲気は悪くなかった。

店も多いし、人も多い、活気があって今のところは文句なし、いい街だ。


「どうして急に街を見たいと?」

「ずっと部屋にいたからね、外の世界が気になるっていうものあるし、あとは軽い運動かな」

「ガルド様は幼いのにしっかりしてますね…」

「ありがとう、街にはどんな施設があるの?」

「飲食店が多いですが…素材屋、加工屋、ギルド、教会…」


指を折りながらヴァースは説明してくれる。


「他にも装飾品を扱うお店もありますし、カラフストリートに行けばいろいろなお店が見れますよ?」

「カラフストリート?」

「個人でお店を建てられない人が小さな区画を借りて個人販売している所です、ダンジョンの戦利品だったり手作りの遊具が置いてあったりするんです」


フリーマーケットみたいなものか、面白だ。

だけど今日は1番気になっている所を見にいきたい。


「奴隷商」


俺はヴァースの顔が少し険しくなったのを見逃さなかった。


「…ガルド様?」

「奴隷を扱っている商人はいるの?」

「…おります」

「それはどのくらいいるの?」

「奴隷商会に行けば詳しくわかるかと」

「じゃあそこまで案内してもらえるかな?」

「…畏まりました」


ヴァースが先頭に立って道を案内してくれる。

ルルティアは何も言わずに俺の後をついてくる。

かなり近かったのか、数分歩いただけで到着した。


「こちらが奴隷商会です」


外観だけでも綺麗ででかい。

まぁ商会だからそれはそうか。


「ヴァース、ルルティア、中では僕が王子だって事は伏せてくれ、それと奴隷の購入はヴァースが検討していることにしてくれ、情報が聞ければいいから購入はしなくていいよ」

「わかりました」

「そのように」


俺は商会のドアを開ける。

室内も外観同様綺麗な作りになっている。


「ようこそ、奴隷をお探しですか?」

「ええ、初めての購入になりますので色々と教えていただければ」


キツネ目の若いお兄さんが受付をしていた。

片眼鏡なんてする人いるんだな。


「畏まりました、こちらへどうぞ」


ロビーにある椅子に案内され取り敢えず座る。


「奴隷の説明から致しましょう。奴隷は借金のカタであったり、口減し、犯罪者、様々な理由で奴隷に堕ちます、その時点で隷属の腕輪を装着し、商会逆らうと全身を激痛が襲う様になっております。奴隷を購入されますとお客様が主人となり絶対服従の命令ができます。戦闘奴隷であれば先頭に立たせて戦わせたり、囮として利用することもできますし、家事や炊事をさせたり、性奴隷として扱うことも可能です。」

「奴隷は今何人いるんだ?」

「本店ではさまざまな奴隷を約500人まで収容しています、支店も合わせれば3000人は超えますね」

「父さん、僕そのリストが見てみたい!」


「受付の人に顔を見られない様にヴァースに目配せをする」

「うちの子にリストを見せてやってくれませんか?この子の直感はよく当たるんですよ」

「構いませんよ、少々お待ちを」


そう言って持ってきたのは分厚い本。

開いてみるとそこには全員の名前と年齢、その他諸々の情報が書かれていた。

そして俺の知りたいことも書かれていた。


「よくわかんないや」

「やはり難しかった様ですね」

「僕と母さんは外で待ってるね」


ヴァースには悪いが俺とルルティアは外で待つことにしよう。


「ガルド様は何を知りたかったのですか?」

「奴隷の出身だよ、9割が自国民じゃなかった」

「戦争孤児が多いとは聞いていましたがそれほど…」

「フィアネス王国出身が多かったね、奴隷制度かぁ…面白くないなぁ」

「奴隷制度には反対なのですか?」

「人が人を虐げるのには理由があるんだ、所有欲、支配欲、背徳、例を挙げるとキリがないけどどれも人の醜い部分さ」


作家をやっていると人の心の内は読みやすくなる、物語を描く上で必要なことだからだ。


「私もフィアネス王国の出なので思うところはありますが…」

「手を売ってもいいんだけどね、僕には後ろ盾がないから子供の戯言と言われるとお終いなんだ、少し力を手にしてもいいかもしれないなぁ」

「力…ですか?」

「そ、力」


ヴァースが商会から出てきた。


「ふう、お待たせしました」

「ありがとう、どうだった?」

「と、特に問題なく購入しないと言い出てきました」


少し慌てる様子から中で何かあったのかもしれない。


「じゃあそろそろ帰ろうか、2人とはもう少し話をしたいからね」


歩き出した俺はその場で意識を失いかけ膝から崩れそうになる。


「大丈夫ですか!?」

「少し疲れたみたい、大丈夫だよ」

「よろしければ私が抱えて歩きますが」

「じゃあ頼むよ、僕は少し眠るから」


ヴァースに抱えられた俺は眠りについた。









「…意外でした」

「何がですか?」

「王子が人に感謝をしている所を見たのは初めてです」

「他の王子が感謝を示している所は見た事がありませんからね」

「王族からしてみれば吹けば飛ぶような我々に対してお気遣いが出来るとは…」

「だから少し狼狽えていたんですね?」

「すいません態度に出てしまっていて」

「ヴァース様、ガルド様がどうして奴隷商会を見に行かれたと思いますか?」

「…正直な所わかりません、最初は購入するつもりなのかと思いましたがその様なお人ではなさそうですし…」

「奴隷制度が気に食わないって仰っていましたよ」

「…このお方の心の広さは一体…まだ5歳ですよね?」

「王にはならないって言ってましたけど私はガルド様なら優しい国を作れるんじゃないかと思ってしまいます」

「…だと良いですね」


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