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初めての転生

何が記憶を持って転生だ、酷い目にあった。

生まれた時、赤ん坊の脳みそは小さく転生前の記憶を保持することはできなかった。

そのため体が成長するまで俺は定期的に発症する酷い頭痛に襲われながら生活していた。

生まれてから殆どをベッドの上で過ごし、奇病の可能性を考慮して家族は滅多に俺に会いに来ない。

俺の担当になっているメイド達が24時間付きっきりで世話をしてくれる。

時折頭痛から解放される数分の平穏も体を休めるのが精一杯でまともに話もできなかった。

徐々に頭痛の間隔はひらいてきたが睡魔には勝てなかった。ほとんど眠れていない中でよく死ななかったと本当に思う。

そして5年目の春、ようやく体が追いついた。

目が覚めた俺は今までと違う体の状態に喜び安堵し、ベッドの横に待機しているメイドに声をかけた。


「おはようルルティア」


彼女はひどく驚き俺に駆け寄る。


「ガルド様!?体の調子はよろしいのですか!?」

「あぁ今までの頭痛が嘘のように引いている、父上と母上にもそのように伝えてくれ」

「わかりました!」


彼女は一礼すると全力疾走で部屋を出て行った。

それもそう、生まれてこのかた頭痛を訴え会話をすることができなかった子供がいきなりまともに話を始めたのだから。


さて、今の状況を整理しよう。

ここはバルクレット王国、帝都カルナの王宮だ。

俺は第4王子として生を受けこの世界に産み落とされた。

生活に困らない裕福な環境を求めたがまさか王子になるとは思ってもいなかった。

前世の記憶と生まれてから今までの記憶がきれいに整理されていて、まるでそのまま転移したのではないかと思えるほどに頭が冴えている。


「ガルド!」


部屋に飛び込んできたのは久方ぶりに見る母だった。

なびく薄水色の髪と薄ピンクのドレスがとてもよく似合っている。


「母上、ご心配をおかけしました」


口元に手を合わせて感激した彼女は俺を力強く抱きしめる。

後に続いて部屋に何人もの人がなだれ込んでくる。


「ガルド!体は良いのか!?」


どうやら父親である国王ハーベストも駆けつけてきたようだ。

子を心配する父親でよかった、王としての仕事もほっぽり出して来たのだろうか。


「父上、ご心配をおかけしました」


ハーベストは怪訝な顔で俺を見る。

そりゃそうだ、誰ともまともに話せなかった五歳児が流暢に話してるんだ。


「神からの啓示がありました。生まれてから5年間、崩御の試練に打ち勝ったことをここに認める、と」

「…崩御の試練?」


もちろん口から出まかせだ。

異世界転生の代償ですなんて言えるか。


「よくはわかりませんが、僕は神の試練を受けていたようです」

「…詳しくは後ほど聞こう、政務が残っているためワシは戻るゆえここは任せたぞカルア」

「はい、あなた」


ハーベストが去り、側近や近衛兵も部屋から出て行き残ったのはカルアとメイドのルルティアだけとなった。


「ガルド、貴方の分かっていることをゆっくりでいいから教えて頂戴」

「はい、母上」


俺は生まれてからずっと頭痛に蝕まれていてそれは神の試練だと伝えた。

試練に打ち勝った褒美は異世界の知識。

知識を得たことにより精神的に大人になったのではないか、そう言うことにしておいた。


「突拍子もないことで混乱しているけど…もう大丈夫なのね?」

「はい、これからどうするかは一度考えてみようと思います」

「ルルティア、これから私は教皇と会い神の試練について聞いて参ります、ガルドのことは今しばらく貴方に任せましたよ」

「畏まりましたカルア様」

「ガルド、貴方は大丈夫と言いますが母は心配です、もうしばらくお休みなさい」


そう言ってカルアは部屋を出て行った。


「ルルティア」

「はい、ガルド様」

「僕はこの部屋から出たことがないから常識がない、世の中のことを教えてくれるか?」


驚いた顔で何を聞きたいのでしょうか、彼女は俺に問いかけた。


「僕は第四王子、間違いないね?」

「間違いありません」

「まずは兄弟のことを教えて欲しい」

「ガルド様は末の子でございます、第一王子アラン様は今年12才、第二王子フラグスは11才、第三王子アベルド様は10才になります」


全員年子、5年あけて成した子が俺と言うわけか。

欲を言えば姉が欲しかった。


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