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始祖

「おののけ人間ども、受肉した我を止めることなど誰もできぬ」

「おい何が魔道具だよ、厄介なもの持ち込みやがって」


トラブルに巻き込まれるのは宿命なのか?


「吸血鬼の始祖エリン…聞いたこともねえな」

「知らなくとも良い、我が復活したということは魔王も動き出すだろう、貴様ら人間の時代は終わりだ、これから魔族の時代がやってくる」


「どうでもいいからその体をルルティアに返せ」

「口の聞き方に気をつけろよ人間、貴様程度我にかかれば一捻り…ん?」


彼女は目を細めて俺を見る。


「なんだよ」


「神の加護…貴様何者だ」

「なんでもいいだろ、さっさと体を返せ」


エリンが品定めするようにジロジロと見てくる。

正直エロくていい。


「タイムストップ」


魔法を唱えて時間を止める。

いきなり殺されても嫌だし取り敢えずこいつの体の動きを自在に操れるようにしておこう。


「ディストーション」

(やはり神の加護持ちか)


頭の中で声がする。

こいつ動けるのか?


(我でも神の加護には逆らえぬ故に貴様はこの世界で誰よりも強いだろう)

「だったらなんだ」

(せっかく受肉したのだ、消滅させられるのは困る)

「そんなお前の都合なんか知らん、さっさとルルティアに体を返せ」

(迷惑はかけん、この体の中で貴様の生涯を見届けさせてはくれぬか)

「断る、面倒ごとは嫌いなんだ」

(我が受肉した時点で魔王が動き出すのは時間の問題だ、必要があれば手伝おうではないか)

「…詳しく話してくれ」


この世界には人間族、魔族、亜人族が存在している。

これまで世界の知識を蓄えてはきたが魔族や亜人族がいることは知らなかった。

はるか昔に魔族と亜人族の戦争があり、どちらも壊滅寸前までの被害を被った。

エリンはその時の魔王で、尽きかけている命を凝縮し一つの石にした、それがブラッディトリガーだという。

次代の魔王は戦争を嫌っており、平和に暮らすためにエリンをダンジョンに封印したらしい。

魔族と亜人族は不可侵の約定を結びそれぞれが自分の土地に帰った中、魔族と亜人族の生き残りがわずかに残り、二つの種族が混じり合い生まれたのが人間族だという。


「なんでそんなことを知っているんだ」

(ダンジョンの管理をしていたのが彼らだからだ、とはいえダンジョンの中は魔族で立ち入らないように管理していたのが彼らなのだがな)

「だったら余計にわからないだろ」

(我の感覚は鋭くてな、見えなくともその程度わかる)

「まぁいいや、なんで魔王とやらが動き出すっていうんだ?」

(我が目覚めたとなれば魔族も亜人族も我を消すために攻めてくるだろう、我は戦闘狂だと恐れられていたからな)

「いい迷惑だ、お前が消えればそれで解決だろ」

(正直な所、受肉してテンションが上がっていただけでな…ひっそりと生きていくのも悪くないなと考えたこともあったのだ…)


エリンを消すことは恐らくできるが情に訴えられると少し戸惑ってしまう。

上手くことを運べられればいいけど。


「ルルティアの体から離れれば受肉せずとも体をくれてやる、それで自由に生きろ」

(良いのか?)

「気が変わる前にな」


ルルティアの体から赤い小さな石が出てきた。

俺はそれに魔法をかける。


「アンダークロック」


エリンが肉体を取り戻すまで時間を戻す。

ボロボロなエリンはほぼ全裸で流石に可哀想だったから健全な状態まで戻した。


「これは…」

「今が全盛期の体か?」

「いかにも、しかしこの体では貴様も不安になろう、我が幼かった時まで時間を戻してもらいたい」


再度時間を巻き戻す。

エリンはみるみる子供になり、小学生くらいのサイズまで小さくなった。


「これならおぬしも安心できるじゃろ」

「声のトーン変わりすぎだろ、ハスキーな声から歯抜け声じゃないか」

「小さくて弱そうに見えても始祖じゃからな、人間程度には負けはせん、とは言え魔族に襲われればひとたまりも無い、守ってくれるか?」


上目遣いでそんなことを言われて断ることができようか。


「わかった、しばらくは面倒を見てやるよ」

「感謝するぞ!主様!」


俺は時間を動かす。


「ルルティア、無事か?」

「えっと…一体何が?」

「こいつはエリン、俺が生前まで時間を戻した、色々話をして保護してやることにした」

「…可愛い」

「よろしく頼むぞ!」

「何がどうなってんだ?」


ホウントとカムイには話しておくか

カクカクシカジカ


「驚いてなんて言ったらいいかわかんねえが…とりあえずあんたらとは仲良くしておいた方が良さそうだ」

「同感です」

「俺は民を幸せにしてのんびり暮らせればそれでいい、世界統一とかそんなことは考えてない、他国との協力は気が向いたらする」

「わかったよ坊主」

「あと坊主はやめてくれ」


俺は自分の体を成長させる。


「これで坊主はやめてくれるか?」

「…こりゃ神の真技だな」


いきなり尋ねてきた彼らを見送り、正式な会談はそのうちということにした。

エリンは養女として引き取るという体にした。


しばらくの間はトラブル起きないでくれよ…



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