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前の話の日の午後




1年3組が俺らのクラスだった。昼休みを終えて、午後からは真面目にやるぞーと燃える俺を尻目に、腹がくちくなったゆうは寝ている。

近くにいた赤いメッシュを入れている少年に聞いたところ、今日はオリエンテーションだけで一日が終わるらしい。



「自己紹介とか、もー終わっちったの?」

「ハイ!初っ端にやりました!」

「えー残念」

「でも、みんな、杉原さんと伊藤さんのことは知ってるッス!」



きらきら笑顔の赤メッシュくんよ、俺があんたらのこと知らねーっつーの。

そこへ、前扉が開いて、担任の先生っぽい人が入ってきた。



「お、茶髪が増えたな。おまえ、伊藤か?」

「はーい、そーです。遅刻してごめんなさーい」

「見た目チャラチャラしてるわりに真面目だな。おまえらも見習えよー」



担任の先生はフレンドリーでいい人っぽい。よかった。

そのあとはなんかいろいろ話を聞いたりしたんだけど、やっぱり俺も眠くなって、途中で寝てしまった。

帰りのホームルームまで爆睡して、先生に苦笑いで起こされた。うん、やっぱりいい先生だ。


俺は伊藤のいだから出席番号が早いので、今週の掃除当番だった。俺が箒をかけてる間、ゆうは当番じゃないから、そのへんでスマホしてた。

たぶんパズルゲームだな。元チームの奴に教えられて以来、ハマったらしい。


掃除を終え帰ろうと廊下に出たら、何やらザワザワしてきた。

廊下の奴らは、廊下の窓からグラウンドの方を見ているみたいだ。

俺も見てみる。うちのじゃない制服の生徒が立っていた。頭が赤い。



「ねーゆう、なんかいるよ」

「…」



ダメだ、パズルなう。

そこへ、さっきの赤メッシュがやって来たので、聞いてみた。



「アイツは、西高の藤尾ッス。昨日までウチのトップだった日座さんのライバルで、ちょいちょいこーやってタイマン張りに来るんスよ。最近けっこーヤバかったんス、ギリ勝ってるぐれーで。でもま、杉原さんの敵じゃないっスよ!」



キラキラした目で、赤メッシュは俺たちを見ている。さっきもちょっと思ったけど、なんかこいつ、犬みたい。



「へー。てか、なんでそんなの知ってんの?赤メッシュも1年なのに」

「俺、去年留年したんで!二回目ッス!」

「へ、へー」



俺は気をつけよ。

で、つまり、このザワザワは、アレだ。新しいトップの戦いぶりをこれから見られるっていう、期待感。と、ゆうのことをまだ認めたわけじゃない奴らの、お手並み拝見、みたいな上から目線の混ざり合ったもの。


道理で、みんなチラチラこっち見てくるわけだ。


しかし、みんなよ。ゆうは全く気づいていないぞ。ゆうのパズルへの集中力は半端じゃない。全部ガン無視だ。

なんなの、このパズルにかける情熱。


だんだんザワザワが大きくなって来た。

これ以上ほっとくと、ちょっとまずいかもしれない。先生が来たり、ケーサツが来たりしちゃうかも。

しょーがない。


というわけで、俺が一人、その他校くんのところにやって来ました。



「こんちはぁ」



俺は笑顔をつくって、友好的に話しかけた。俺の笑顔は、マジイケメンッス!と、地元の奴らにも好評だ。


対するフジオカさん?は、こちらに気付いて睨みつけてきた。近くで見ると、本当に頭が赤い人だった。桜木ハナミチみたいな、見事な赤い短髪。ちなみに背は、173ある俺以上185あるゆう未満くらい。



「なんだよテメー、誰だよ」

「どーも、今日からここのトップになったうちの一人、伊藤緑です」

「あ?」

「えっと落ち着いて聞いてほしいんですけど、実はアナタのライバルだった人は、もう一人のトップの杉原雄大っていうのが今日倒しちゃって、もうトップじゃなくなっちゃったんすよ。で、そのゆうなんですけど、いまちょっとゲームに夢中で、こっち来れないんすよね」

「…はぁあ?」

「つーわけなんで、また今度来てもらっていーすか?」



おまけにもう一度、スマイルを付ける。

が、もちろんフジオカさんには通じなかったみたいだ。



「テメー黙って聞いてりゃなにふざけたことぬかしてんだよ!なめてんのかゴルァ!!」



わー殴りかかって来た!

うん、俺も、ふざけたこと言ってるなーとは思ってたよ、でも本当なんだけどー!


一発目をとりあえずかわす。俺は弱いのだ。まともにやったら絶対敵わない。

どうしよう、と思っていたら、そこへデカイのが割り込んできた。



「死ね」



低い声でそう言ったゆうは、ストレート一発で、フジオカさんを地に沈めた。


一瞬の静寂。


のち、学校中から雄叫びが上がった。

うわー、男臭い。



「ゆう、パズルは?」

「行動力なくなった。緑テメー弱ぇんだからこーいうのに近寄んなよ」

「だって、他校生の相手すんのはヘッドの仕事でしょ」

「マジメか」

「ゆうよりはねー。じゃ、帰ろっか」



大歓声に見送られながら、俺らは学校を後にした。


ちなみに、ゆうをライバル認定したフジオカさんがそれから度々ウチを訪ねてくるようになったのは、また別のお話。



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