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志岐谷蒼

カクヨム先行投稿作品です。

宜しくお願いいたします。

 あたしの名前は志岐谷蒼(しきたにあお)、ただいま19歳と8か月。

 4か月前に短大を中退して現在一人暮らし。1か月前からとある病院の受付嬢に就職した。

 家族はお父さんとお母さん、そして姉ふたり。あとは兄がふたりいた。

 心細い初めてのひとり暮らしで時折送られてくる、遠く離れた場所に住んでいるおばあちゃんからの贈り物は、毎回短い手紙と沢山の農作物やお菓子で満杯だった。


 今回も当然そんなあたしの心をあったかくしてくれる、おばあちゃんの愛情がいっぱい詰まった段ボールだと思っていた。でも……


「え、え、なに? なんなのこれ? と、扉? ていうか、おかしいでしょ!? 扉だけが見えるんですけどぉ!」


 1K6畳のあたしのお城の中心に扉が見える。なにこれ幻覚?

 とりあえず掛けていた眼鏡を外してみる。

 眼鏡を外して裸眼で見てみると……


「あ、あれ? なんにもない? どゆこと? 意味がわかんないんですけど」


 そしてもう一度眼鏡を掛けて同じ場所を凝視する。


「あ、ある…… 扉がある」


 ありました。やっぱり扉がありました。

 意味が分からない。そもそもそこにあるのは扉だけ、枠もなければ当然壁だってない。本当に扉だけがそこに立っている。

 どうしたものか…… 開けたい。何故か? だって気になるから。きっと誰だって目の前に扉が突然現れたら開けたくなるだろう。

 でも何故だか嫌な予感がする。開けたらよくないことが起こりそうな不確かな予感……


 そんなことをひとり考える、いくら考えても答えなんて出ない、埒が明かない。そうすること数分……


 突然――


 ――開けますか? →YES →NO


「はっ!? え、え、なにこれ? え、字が見えるんですけど……」


 突然視界に映し出された文言。一瞬なにが起こったのか理解が追い付かなかったけど、これってもしかして某有名野球選手も使ってるとかいうスマートグラスってやつ?

一旦眼鏡を外してまじまじとソイツを見てみたけれど、どこをどう見てもアナログなただの眼鏡にしか見えない。電子機器が内蔵されているようには見えないのだけれど。


「あ~! しゃーない! 決めたっ!」


 あたしは眼鏡を再度装着し、意を決して扉に手を掛けた。


「答えはイエスよ!」


 イエスと答えると、勝手にイエスの部分が太字でハイライトされている。すごい! 声に反応したのか、思考に反応したのかわかんないけど、とにかくすごい! 最先端!


「う~ん、やっぱなんか怖いな、でも……」


 深く考えても答えは出ない。うじうじ悩むくらいなら自分の好奇心を信じてみよう!

 あたしはゆっくりとドアノブを回し、扉を引く。


 扉を開いたその先、扉の向こうには――


 ――街があった……



    ◇



「え…… う、嘘でしょ…… ど、どーなってんのよ」


 開いた扉の先には街があった。沢山の建物、高層ビルや公園、自販機なんかが見える。街っていうかかなりの都会、それも大都会、多分。

 あたしの住んでいる街は田舎というほど田舎ではないけれど、都会と言うほど都会でもないという中途半端な街。そこに住んでるあたしからすれば、今見ている風景はもう大都会も大都会と言わざるを得ない。

 そしてふと空を見上げると月が青い。なにあの月、とっても綺麗。


 とりあえずドアノブは握りしめたまま扉を一歩跨ぐ。

 今は10月、今日は日曜、時刻は現在午前7時。でも扉の向こうはやたらと寒い。そして薄暗い。どうなってんの? 意味が分かんない。

 とりあえず両足を謎の街へ踏み込んだけど、ドアノブはまだ手に持ったまま。


「これってドアを閉めたら帰れなくなっちゃうなんてことないよね? そんなことになったら嫌なんですけど……」


 そんな時あたしは閃いた!

 ドアになんか挟んでおけばいいのだ! そうすればドアを閉めずに街の様子を観察することができる! あたし超頭いい!

 そうと決まれば話は早い。一旦部屋へ戻り、ドアストッパーに良さそうなものを探す。しばらく探すと丁度いいブツを発見した。


「これだ! 漬物石!」


 前におばあちゃんから送られてきた漬物石。あたしは漬物なんか漬けないし、なんなら漬物自体そんなに好きじゃないのに、何故だか送られてきた。捨てるに捨てられないので、ずっと取ってあったのだ。ようやくコイツが役に立つ時がきた。

 おばあちゃん、この時の為にコイツを送ってくれたんだね。ありがとうおばあちゃん。


 何キロあるかは分からないけど結構重い漬物石を両手に抱え、お尻でドアを押さえ、後ろ向きで扉の向こう側へ入っていく。

 慎重に、ドアをうっかり閉めないように、扉の丁度いいところに漬物石を設置した。


「よっし! オッケ! これで帰り問題解決! じゃあちょっくら謎街探検にでも洒落こみますか!」


 意気揚々と手を腰に当て、扉から背中を離した瞬間――


 ――ガシャンッ!


 は? え、え、う、嘘でしょ?


 急いで振り返り扉に目をやると、漬物石の分だけ開いていたはずの扉が閉まっていた。

 やばい、これはやばい。なんで閉まった? 足元を見てみると置いてあったはずの漬物石はない。割れたわけでもなく、転がったわけでもなく、そこには漬物石そのものがなかった。


「ど、どうしよう…… 帰れなくなっちゃった……」


 途方にくれるあたし。あたしはこれからこの得体の知れない謎街で一生暮らしていくの? はぁ、こんなことなら扉なんて開くんじゃなかった。

 どうすればいいのか全く見当もつかないけれど、とりあえずドアノブが回るかどうかだけ試してみるか。大抵このパターンだと絶対開かない。これでもし開いたらお笑いだ。


 ――ガチャッ


「開くんかーい!!」


 どうやら扉は普通に開くみたいだった。こちらから見える扉の向こう側は、あたしの居城のIK6畳一間。よかった、あたしの絶望はどうやら杞憂だったみたいだ。


 扉が自由に開け閉めできることを確認したので、とりあえず街の探索に出かけることにした。現在地、というかそもそもここがどこの街かも分かんないけど、とにかく今あたしの目の前にはお店があった。


「あ、これってケーキ屋さんかな?」


 お店の看板には『gâteau du pillard』と書いてある。お店の名前だろうか? うん、読めない。

 う~ん、甘~い香りがお店の外まで漂ってくる。お店もお洒落な外観をしているし、ちょっとお邪魔してみようかな?


「ごめんくださーい! あ、あり? 店員さんいないのかな?」


 お店の中を見渡してみても、店員さんらしき人はひとりもいない。どうなってんの?

ただお店に入ってすぐショーケースが目に飛び込んできた。色とりどりの美味しそうなケーキたち。


「うわ~! めちゃくちゃ美味しそう! あっ! お財布置いてきちゃったや。まぁいいか。とりあえず色々見てからあとでお財布取りに帰るかぁ」


 どのケーキにしようか迷っていると、ふと普通のケーキ屋さんとは違う点に気が付いた。


「あれ? これってこっち側から取れるようになってるじゃん。え、セルフ?」


 このケーキ屋さんのショーケースは何故だか知らないけど、お客さん側から商品が取り出せるように配置されていた。

そしてふとショーケースの一番上の棚には、何故だかお洒落な内装には不釣り合いな招き猫とホワイトボードが設置されていた。

 ホワイトボードにはとある一文添えられていた。


 ――ご自由にどうぞ


(え、嘘でしょ?)


 色とりどりのケーキをよくよく見てみると値札がない。でもショーケースの上にはトングとトレイが配置されていた。


「これで取れってこと? う~ん、でもなぁ……」


 さすがに勝手に取るのは道徳観が許さないっていうか、いくらご自由にどうぞって言われてもなぁ。

 どうしよっかなぁ。とりあえず一旦帰るか。


 怪しすぎるケーキ屋をバックに、あたしはおなかを撫でた。


「はぁ、ハラへった。今日まだなんにも食べてないや」


 超美味しそうなケーキたちに後ろ髪をひかれながら、あたしは踵を返し、店内から立ち去ろうとした――


 その時――


「え、なにこれ? 視界が……」


 ――真っ青だ


 ※当拙作をご覧いただき誠にありがとうございます。


 もし当作品を面白いかも!? 続きはよっ! と思っていただけましたらレビュー、ブクマ、ひとつでも構いませんので、★をぽちっと、などなどしていただけますと作者の今後の執筆意欲につながります。


カクヨムで先行投稿をしております。早く続きを読みたい方はこちらへどうぞ。

 →https://kakuyomu.jp/works/16818093073566555415#reviews

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