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【第五章開始】悪役転生  作者: まな
第五章
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5-19 続・のろいのそうび

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「という経緯で弱体化武器の失敗作をもらいました。ただただ能力が低下するだけのアイテムですが、周囲よりも強すぎる私が装備する分には逆に調度いいのでしょう」


 初登校から帰ったボクは、屋敷に集まっていたみんなに新しく手に入れたおもちゃを自慢することにした。

 試しに全員にこのナイフを使ってもらったのだが、弱体化の幅は人それぞれだった。

 戦闘系スキルを持っているヴィクトリアやフェルは剣術が使いにくくなったり、そもそもの動きが遅くなったりとかなり強く弱体化の影響を受けているようだ。

 逆に基礎能力は高いが戦闘スキルを殆ど持っていないフリスは、ほとんど影響を受けていないように感じたそうだ。


「装備すると弱くなる。まさに呪いの装備でござるな」


 アリタカくんも興味深そうにナイフを装備して様々なスキルを試しているが、その最中にふとそんなことを口にした。


「呪いの装備? この世界に呪いなんてないでしょう?」


 だが魔法の存在するこの世界に呪いなんてものはない。正確には呪いと言われているものは闇魔法の一部であり、この世界のオカルトはだいたい魔法として解明されているのだ。

 ただ魔法の認識が浅い人たちにとってはその存在自体が曖昧なため、同じ魔法でありながら別けて解釈されることも多い。これは光魔法や聖魔法なども誤解されることが多く、それを利用した詐欺なんかも多いらしい。

 話が逸れてしまったが少なくともアリタカくんはボクと同じ転生者であり、この世界の裏側の一部を知る人間だ。であれば呪いなんて言葉が出てくるはずがないのだが、どうやら彼は前世での呪いを思い浮かべていたそうだ。


「失敬。そう言えばエル殿はゲームなどは通っていなかったんでござるな。呪いの装備とはRPGなんかに多く出てきて、例えば装備すると外せなくなったり、強くなる代わりにデメリットがあったりと、扱いにくい装備アイテムの総称でござる」

「へえ。そういうものがあるのね」

「特に外せなくなる装備は大体の場合弱体化したり毒や麻痺などの状態異常がついていたりと、ろくでもないものが多いのでござる」


 なるほど。そういう意味ではサンリ教官の失敗作たちは呪いの装備だ。

 そんな会話をしているとヴィクトリアが話に割って入ってきた。


「あら、それなら私も知っているわよ?」

「それって呪いの装備のこと? この世界の呪いはすべて魔法だと、あなたも知っているでしょう? なら呪いのアイテムなんてないのではなくて?」


 悪魔であるヴィクトリアは魔法生命体だ。そして悪魔は闇魔法に寄っている存在であり、呪いとされている弱体化魔法は親戚のようなもの。それを知らないはずがない。

 だがヴィクトリアは呆れたように肩を竦める。


「あなたさあ、呪いがないなんてここにいる誰もがわかっているわ。私が知っているのは、アリタカの言ったようなデメリットがある武器のことよ」

「ほう。この世界にもそんなものがあるのでござるか」

「それは私も初めて知ったわね。それで、どんな武器なのかしら?」


 呪いは存在しないが、呪いの装備に相当するものはあるのか。

 それがどの程度周知されているのかにもよるけど、使えそうな情報だな。


「冒険者の間では結構有名な話よ? 一太刀で魔物を倒せるけれど、代わりに気を失うほど魔力を奪われる魔剣とか。肉体能力が強化される代償として凶暴化してしまう斧とか。実際に似たようなものを拾ったし、実在しているのは確かね」

「ええっ! ヴィクトリアさん持ってるんですか!? 私見てみたいです!」


 フリスは無邪気にせがむが、ヴィクトリアは首を横に振る。


「無理よ。だって私が人間だった頃に拾ったものだし」

「そうなんですか。でもそれが呪いの武器だと知っているということは使ったんですよね? どんな武器だったんですか?」

「呪いはないって言っているでしょう? その武器はダンジョンで拾ったんだけど、刃の小さい長槍だったわね。知っての通り私は槍が得意だから、当然魔物を相手に試し斬りをしたわ。切れ味は恐ろしいほど鋭かったんだけど、先に言った通りこれにはとんでもないデメリットがあったのよ」

「今まで聞いてきた武器も大概だったけれど、それよりも?」

「そうよ。その槍には強力な魔法が付与されていたのだけれど、それは闇魔法による反射だったの。そのせいで本当にひどい目にあったわ。なにせ相手を攻撃すると、そのダメージが自分にも返ってくる。脚を突けば太ももに穴が開くし、腹を斬れば内臓が溢れて出てくる。冒険者なんていつだって死と隣り合わせだけれど、あの時ほど自覚なく死を実感したことはないわね」


 ヴィクトリアは思い出すだけでも痛みが蘇ると顔を顰めるが、ボクにはなぜそこまでひどい状況になるのかがわからなかった。

 だってそんなに酷いデメリットなら1回目の攻撃で気がつくはずだ。もし仮に反射での負傷に痛みがなくても、運動能力の低下ですぐに違和感を感じる。


「私だって馬鹿じゃないんだからあなたの言うようにすぐにデメリットが発覚するなら、そんなに何度も攻撃をするはずがないじゃないでしょ?」

「ということは……デメリットは時間差だったのでござるな?」

「正解よ。私は試し斬りで周囲の魔物を一掃した。それで一息ついたら、いきなり全身に傷が現れて一瞬のうちに血まみれよ。すぐに高級ポーションを使ったけれど、それじゃ全然足りなかった。できる限りのことはしたけれど、それだけではダメだった。当時の私が生きていたのは完全に運よ。偶然別の冒険者パーティが現場を通りかかって、たまたまそこの冒険者が善人ばかりで、目が覚めたらベッドの上にいたの」

「それは、想像以上のデメリットね。でもなぜそれが反射魔法だとわかったのかしら」


 前提として反射魔法には様々な種類が存在する。例えば光の壁を作り出し魔法を弾き返す反射魔法もあれば、鉄の壁を生み出して物理攻撃を弾くものだって反射と言えば反射だ。

 では闇魔法による反射はなにか。それは自分の受けたダメージを相手にも与えるというもの。ヴィクトリアが言っていたように自分の受けた傷を対象にした相手にも与える。

 しかしそれだけではヴィクトリアの拾った武器の説明と合わない。状況は似ているが反射魔法を使った状態で相手にダメージを与えても問題はない。そのため武器が与えたダメージが自分に返ってくることにはならないのだ。


「それがねえ。本当にありえないことだけれど、元々は槍ではなくて盾だったのよ」

「……はい?」

「意味がわからないでしょう? 槍の先端の刃の部分が刃ではなく、刃に思えるほど鋭い小さな盾だったの。でも誰かがそれを棒の先に括り付け、それを私は勘違いして槍として振り回していたってわけ」


 ダメージを受けるとそれを相手に跳ね返し、デメリットとして自分が傷つく盾なら確かにあり得なくもない。

 それを槍として振り回すことで盾が傷つき、それによって相手にダメージを与えて自分にも反射が来る。そう考えると魔法の原理には一応納得がいく。


「ええ……? そこまで来ると逆になぜそれが盾だとわかったのでござるか?」

「せっかく拾った武器でそんな目にあったら、なにが起きたか気になるのは当然でしょう? 瀕死の私を拾った冒険者たちは、捨て置けばいいのに私の持ち物まで運び出してくれたの。怪我が治ったらすぐに腕の良い道具屋に持ち込んで鑑定をしてもらって、それで発覚したってわけ」

「鑑定士も驚いたでしょう。まさか槍が盾だなんて、矛盾もいいところね」

「そうね。そんなわけのわからないものが存在してしまうのがダンジョンなのだと、改めて思い知らされたわ」


 ヴィクトリアの思い出話はここで終わったが、ボクにとってはとても貴重な情報を有していた。

 それはサンリ教官の作った失敗作のようなアイテムが、ダンジョンから出てくるということだ。


 学院のダンジョンで発見された装備者に不幸を齎すアイテム。

 これって『学院77不思議』の1つになるんじゃないかな?




ここまでお読みいただきありがとうございます。


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