表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第4巻10/24発売!】高校時代に傲慢だった女王様との同棲生活は意外と居心地が悪くない  作者: ミソネタ・ドザえもん
門出を祝う女王様

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

91/164

林恵と親友

「うわあ……」


 試着室に入るやいなや、隣を歩く灯里が小さく感嘆の声を上げた。

 あたしも、声には出さなかったが思わず見惚れていた。


 純白の衣装に身を包んだいっちゃんは、さっきとはまるで違って美しく見えた。いいや違う。いっちゃんは昔から綺麗だった。

 ただ、こういうの、なんて言うんだろう……?


「馬子にも衣装?」


「メグ、多分それは違う」


 灯里の言葉に、あたしも内心、そうだと思っていたと目を細めていた。知っている言葉を発してみるものじゃない。

 

「ねえねえ、いっちゃん。写真いい?」


 灯里は、いつになくはしゃいでいた。

 旧友の綺麗な姿を見て、浮かれていたのかもしれない。


「いいよ」


「……あー」


 二人の視線が、曖昧な言葉を発したあたしに寄せられた。


「あたしも、いい?」


 二人から視線を外しながら、あたしは頬を染めて言った。

 チラリと二人を見ると、二人はあたしを見てニヤニヤしていた。


「メグ、相変わらずツンデレ!」


「ね! ねっ! 可愛い!」


「な、なによぅ」


 綺麗なものを見て、写真を撮りたいということの何がおかしいことなのか。

 たまに素直な胸中を吐露すればこれだよ。


「……二人共、嫌い」


 あたしはヘソを曲げた。


「わー、わー、メグ。ごめんごめん!」


 慌てるいっちゃん。


「きゃー、メグ可愛い!」


 いつも通りの灯里。

 いや、あんたはなんなのよ。灯里。


 あたしはいっちゃんに慰められながら、灯里に呆れていた。


 そんな光景を見て、あたしはかつての光景を思い出す。

 ……それは、高校時代のあたし達三人でよく遊んでいた時の光景だ。


 高校時代のあたし達は……いつもこんな感じだった。

 たまにあたしが素直な心境を吐露すると二人が茶化してきて、それをいっちゃんに慰められ、灯里が楽しそうに笑っていて。


 なんだ。

 いっちゃんが結婚して、あたし達三人の関係が崩れてしまう。あたしはそれが嫌で、素直にいっちゃんの結婚を喜べなかった。


 でも、違った。

 いっちゃんが結婚した後だって、あたし達の関係は変わることはないんだ。

 そりゃあ、会える機会は減るだろうけど。


 だけど、あたし達は集まれば昔のようにこうして、馬鹿騒ぎが出来るんだ。


「いっちゃん」


「んー?」


「とっても綺麗だよ」


「……ありがとう」


 ドレスに身を包み、高校時代のように微笑むいっちゃんの顔は、多分当分忘れられそうもない。

 多分、今、あたしは初めて……いっちゃんの結婚を、心の底から祝したんだと思う。


 帰路、あたしと灯里は、再びいっちゃんの運転する車に乗っていた。

 さっきとは違い、あたしは助手席に座った。特別な気持ちはない。ただ、そうしたかった。それだけだ。


 灯里は、後部座席で眠っていた。

 やはり、疲れが溜まっていたんだろう。


「今日はごめんね。東京から大変だったよね」


 いっちゃんは言った。


「……ねえ、いっちゃん」


「ん?」


「あたし、いっちゃんに伝えないといけないことがある」


「何?」


 あたしは迷っていた。

 いっちゃんは、灯里と同じくらい……仲の良い友達だった。だから、機会があれば伝えようと思っていた。感傷的になってほしいわけではない。ただ、友達だからこそ伝えておくべきだと思っていた。


 ……ただ、今、幸せの絶頂にいるいっちゃんに憂い事を与えて良いのだろうか。

 そんなことをずっと考えていた。


 でも、今日久々にいっちゃんに再会して、前と変わらないいっちゃんを見て……伝えようって決心したんだ。


「あたし、大学辞めたの」


「……そっか」


「元カレが、ドメスティック・バイオレンスする奴でさ。今じゃ塀の中」


 いっちゃんは黙って車を走らせていた。

 やっぱり、今伝えるのは失敗だったのだろうか。


「大変だったね」


 いっちゃんはようやく言った。


「そんなことないよ……」


「じゃあ、今は?」


「……今は。今はね……? あはは。ちょっと驚くかもしれない」


「……もしかして」


 赤信号。いっちゃんは車を停止して、あたしを見た。


「山本君と一緒にいる?」


「……どうして?」


 どうして、わかったの?


「いやだって、あたしが驚くって言ったら……それくらいしか考えられないから」


「そんなに?」


「うん。だって高校の時の二人、すっごい仲悪かったもん。あたしも灯里も、結構心配してた」


「……アハハ」


 そっか。

 それは……申し訳ないことをしたな。


 いっちゃんにも。

 灯里にも。


 そうして、山本にも。


「そっか。山本君に、か。助けてもらったの?」


「うん。偶然再会して、家に匿ってもらったんだ」


「今でも?」


「……うん」


「ひゃー。それは……妬けるね」


 ……ふと、いつかの山本との会話を、あたしは思い出した。


「ねえ、いっちゃん?」


「好きだったよ」


 即答だった。

 まだ、全部伝えたわけではないのに。


「……そっか」


 罪悪感から、あたしは俯いた。

 後部座席にいる灯里は、まだ眠っているようだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[良い点] 会話と場面変化がいい感じのテンポで、親密さと緊張感を醸し出しているところ。 [一言] 連休初日ですね!後書きなくて心配です。
[気になる点] あとがきがない...?!
[気になる点] 旦那の話を誰も新婦に聞かない、だと??
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ