表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第4巻10/24発売!】高校時代に傲慢だった女王様との同棲生活は意外と居心地が悪くない  作者: ミソネタ・ドザえもん
門出を祝う女王様

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

84/164

林恵と友人達

 灯里が見つけて紹介してくれたページを、あたしは一通り目を通していた。

 記事を読んでわかったスピーチの大まかな流れは……。

 まず最初は、自己紹介をすること。そして、エピソードを交えて相手のことを褒めること。最後に、二人の門出を祝うこと。それらを大体三〜五分で簡潔にまとめること、こんなところか。


 パソコン越しに会話をする二人は、すっかり二人で盛り上がっている。

 そんな二人を他所に、あたしと灯里もまた、二人で頭を抱えていた。


「自己紹介と門出を祝う言葉は、まあ良いとして。エピソードかぁ……」


 大体の流れがわかったとて、だったら全部が全部上手く決まっていくわけではなかった。

 一体、どんなエピソードを思い出せば良いんだろう?


 いっちゃんとのエピソード。

 ……思い出すことと言えば。


 勉強を教えてもらったこととか。

 恋愛相談に乗ってもらったこととか。

 後は、最近知ったいっちゃんの山本への想い、とか。


「メグ、なんか良さそうなエピソード浮かんだ?」


「勉強教えてもらったこととか、かなあ」


「それだと、なんだかいっちゃんがガリ勉さんみたいになっちゃうね」


「そんなガリ勉って感じじゃなかったもんね、いっちゃんは」


 いっちゃんはテストの度に高得点を収めていたが、授業中、休み時間。そして放課後もずっと勉強をしているような子だったとか言えば、そんなことは全然なかった。

 むしろ、テスト直前だろうが、あたし達が遊びに誘えば絶対に来てくれるような子だった。多分、要領が良かったからテストも高得点だったんだろう。


「いっちゃんは要領が良い子なんですって話す?」


「それは……まあ、どんな空気になるかちょっと見てみたいね」


 灯里は苦笑していた。

 あたしも、提案しておいて何だが、灯里と同意見だった。

 つまり、ちょっと興味はあるが、絶対に駄目だってことはわかる、ということだ。


 ただそうなると……意外と、いっちゃんとのエピソードは浮かんで来ない。

 あたし達の付き合いは、一年生の時と三年生の時。後、二年生の時も隣のクラスだったしちょいちょい一緒に行動をしていた。

 つまり、二年とちょっと分の思い出があるのに、こうも何も良案が浮かんでこないのか。


「あたし、いっちゃんのこと、友達だと思ってなかったのかな?」


 じんわり、涙が出ていた。

 あれだけ良くしてくれていたいっちゃんのスピーチをするのに、良案が浮かばないことで罪悪感を感じていた。碌な思い出を呼び起こせないことで罪悪感を感じていた。


「仕方ないじゃない。初めてやることなんだから」


 灯里は、あたしを優しく諭してくれた。


「でも……」


「良いの。メグは、どうしていっちゃんがメグにスピーチ頼んだか、わからない?」


 あたしは黙って頷いた。


「仕方ないねえ、メグは」


「……何よ」


「メグのことが、好きだからだよ」


 灯里はあたしの頭を優しく撫でた。


「だからいっちゃんは、メグに友人代表スピーチをお願いしたの」


「……そんなの」


「いっちゃんは、メグに泣いてほしくてスピーチを頼んだわけじゃないと思うよ?」


 灯里の言っていることが、全部が全部いっちゃんの本心だとは思わない。

 でも、腑に落ちる部分もあった。

 いっちゃんは多分、あたしに泣いてほしくてスピーチを頼んだわけではない。それは合っていると思うんだ。


 あたしは涙を拭いた。

 その時、パソコン越しで騒がしかった二人がぎょっとした顔であたしを見ていることに気づいた。

 そう言えば、この二人にあたしの泣き顔を晒したの、初めてだったかもしれない。


「ごめんね。見苦しいところを見せちゃって」


『え、そんな……ね?』


『うん。むしろあたし達もごめん。雑談ばっかで真剣にやってなくて』


「ううん。いいの……でも、ごめんね。迷惑かけるけど、協力してくれると嬉しい、かな?」


『も、勿論だよ!』


『うんうんっ!』


 あたし達は、それからは真面目にスピーチ作成に取り組んだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ