表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
【第4巻10/24発売!】高校時代に傲慢だった女王様との同棲生活は意外と居心地が悪くない  作者: ミソネタ・ドザえもん
デートする女王様

この作品ページにはなろうチアーズプログラム参加に伴う広告が設置されています。詳細はこちら

74/164

ホテル

「ここも駄目だ」


 林と一緒に降りた駅で、俺達はいくつかのビジネスホテルを転々としていた。エントランスに入っては、受付の人に素泊まり出来るかを尋ねるが、芳しい答えは返って来なかった。

 正直、途方に暮れていた。

 

 タクシーを使って帰るか?

 いやしかし、林は疲れたと言っているし。


「ねえ山本」


「ん?」


「あそこ、まだ見てないよ」


 林は一軒のホテルを指差していた。

 看板のネオンが怪しく光るそのホテルは、さっきから見ていたホテルとは少し違う。


 俺は、辟易としたため息を吐いた。わざとらしく、林に聞こえるように言ってやった。だけど、林にそんな俺のあからさまな態度は効果がなさそうだ。


「……お前、あそこは駄目だろ」


「別に、ただのラブホでしょ」


「……だから、それがまずいんだっての」


「なんでよ」


「いかがわしい場所だからだ」


「なにそれ。なんであんた、突然あたしの保護者みたいなこと言い出してるの?」


 林は饒舌に捲し立てる。

 最近、彼女は唐突に黙る機会がとても増えた。そんな中、まるで高校時代のような饒舌なコメントをされると、少しついていけない。

 野球で例えるなら……緩急を付けたピッチングとか、そういう類だ。ストレートの後にくるチェンジアップって打てないよね。わかるよな。


「……別に、いかがわしいことをしようって入るわけじゃない」


「そりゃそうだが……」


「あんた、言ったよね?」


「は?」


「あたし達、家族なんでしょ?」


 ……そりゃあ。

 そりゃあ、家族なら当然、いかがわしいことなんてしないが……それはあくまで便宜的な発言であってだな。


「お前は知らないと思うが、俺達は別にホントの家族ってわけじゃない」


「えー、山本、嘘ついたの?」


「お前、さっきからなんか変だぞ?」


「……行くよ」


 林に強引に手を引かれて、俺は渋々そのホテルに入店した。

 幸い、部屋は空いているようだ。こなれた手付きで、林は部屋を取る。


 ……今更だが、彼女はきっとこういう場所に、前の恋人と来たことがあるんだろう。

 もちろん、それをとやかく言うつもりもない。話題にあげるつもりもない。


 ただ少し、最近いつも見ている彼女の知らない顔があることに、驚愕しただけだ。

 考えてみればそんなことは当然なことなのに。


 俺達は高校時代に初めて出会って、嫌いあい。運命的な再会を果たして、今に至る。


 当然なんだ。

 俺の知らない林の顔があることくらい。


「はーっ」


 部屋に入るやいなや、林はベッドに飛び込んだ。

 我が家のベッドはシングルサイズ。このホテルのベッドは……とても大きく見えたし、事実大きいのだろう。


「山本」


 林がベッドに仰向けに寝転んだまま、俺を呼ぶ。


「こっち来なよ」


 俺は何も言わない。

 ただ、歩き出す。


 ……林の真意が、わからない。


 彼女は言った。疲れていると。

 ここには……休息のためにやってきた。


 ただ。

 ……ただ。


 いくら、他のホテルに空きがないとはいえ、わざわざこんなホテルに泊まらなくても。


 他に手段はいくらでもあったはずだ。

 タクシーで帰宅は無理でも、ネットカフェでも、カラオケでも……。


 なんでも手段は、あったはずなんだ。


 俺は林の隣に仰向けに寝転んだ。


「今日ほど、お前がわからない日はない」


「……わからない?」


「ああ」


「それは、あたしのことをあんたが知らなすぎなんだよ」


「……それはあるかもな。俺達は高校時代、犬猿の仲だったもんな」


「そ」


 林は立ち上がった。

 俺は立ち上がる気力がない。


「どこ行く?」


 俺は聞く。


「お風呂」


 林の足音が聞こえる中、俺は目を閉じた。

 しばらくしたら、浴室からシャワーが流れる音が、響き出す。

評価、ブクマ、感想よろしくお願いします!!!

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
[一言] ラブホテルはご休憩するところだから。
[一言] いくらなんでも ここでヤラナイ設定はありえないだろ。
[良い点] おおおおおおおおおおおお、盛り上がってきたねー
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ