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【第4巻10/24発売!】高校時代に傲慢だった女王様との同棲生活は意外と居心地が悪くない  作者: ミソネタ・ドザえもん
思い出す女王様

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林恵の相談

ヒロイン視点と成増(七回目)

「ねえ、今週の土曜日、ちょっと出掛けてもいい?」


 山本の枕を抱きしめたまま、あたしは女の子座りをしながら山本に尋ねた。


「おう。いいぞ。どこ行くんだ?」


「……ちょっとね」


 気付けばあたしは出掛ける内容をぼかして伝えていた。

 伊藤とか太田とかはどうでも良いが、灯里と一緒に遊ぶことはあまり伝えたくなかった。なんでだろう。わからない。


「そっか」


「詮索しないの?」


「してほしいのか?」


「したら許さない」


「だったらなんで聞いたの?」


 山本は少し困った顔をしていた。

 確かにそうだ。さっきからあたしの発言は矛盾に矛盾を繰り返している。


「うるさいなあ。そんなんじゃ女の子にモテないよ」


 事実を伝えられて、あたしは不機嫌な顔で言った。

 矛盾を伝えられ、それに不機嫌になって。今のあたしの織りなすムーブは、さすがにちょっと酷い。


「とりあえずさ、俺の枕そろそろ離さない?」


 あたしは山本の言葉を無視して、もう一度彼の布団に寝転んだ。

 山本はため息を吐いた後、またテレビに注目し始めた。

 深くは聞いて欲しくなかったとは、確かに山本に言ったのだが……。相手にされないのはされないで、寂しい。


「……ちょっと友達と会おうと思って」


 構って構って。

 内心でそう懇願しながら、結局あたしは山本に土曜日にすることを伝えるのだった。


「そっか。じゃあ俺はおじゃま虫だな」


 最近では、どこかに出掛ける度に、あたしは山本にも同行をしてもらっていた。だから、山本も付いてきてくれる気が多少あったらしい。余計、申し訳ないことをした。

 あたしは罪悪感をかき消すように、一層山本の枕を強く抱きしめた。


「良かったな」


「何が」


「高校の友達、お前のこと心配してくれていたんだな」


「……そんなことないと思うよ」


「でも、会うんだろ?」


「……そうだけどさぁ」


 高校時代の伊藤とか太田は、多分あたしの威を借りていただけの人達。権力にすがる腰巾着と言ったところか。そんな人達と再会を果たして、彼女達に今のあたしの惨状を伝えたら、一体どんな反応を示すのだろうか。


 多分、言葉上はあたしの状況に同情を示す。

 だけど、きっと内心では……。


「まあ、笠原にしっかりサポートしてもらえよ」


「……なんで、灯里が来るって知ってんの?」


 一瞬、あたしの内心に邪な感情が溢れた。

 一体どうして、山本は件の場に灯里が来ると知っているのか。まさか、裏で繋がっていたのか?


 少し彼を睨むあたしを前に、山本は困ったように首を傾げた。


「え、だってお前……高校の友達と再会しようだなんて質じゃないじゃん」


 確かにそうだ。

 特に前の恋人と同棲を始めて色々あって以降は、その思考は一層顕著になった。


「今のお前をそんな場所に誘うの、笠原くらいしかいないと思ったんだ」


「……そうだね」


 不服そうに、あたしは言った。


「あんたに言い当てられるの、なんかムカつく」


「……それはごめん」


 なんで、こんなに山本に対してムカつくのだろう。

 ああ、あれか。

 ここまではっきりあたしの気持ちを言い当てられた。つまり彼は、それだけしっかり毎日、あたしを見てくれていたのだ。

 それだけしっかり見られていたことにあたしは……わずかな羞恥を覚えた。


 だから、恥ずかしかったしムカついた。

 これは所謂、ツンデレってやつなんだろう。


「寝る」


 あたしは言った。


「そこ俺の布団」


「うっさい」


「最近のお前、ちょっと高校時代っぽくなってきたよな」


 うっさいうっさい。

 ……バーカ。


 呆れた顔で言う山本に背を向けて、あたしは目を閉じた。


 そうしてそれから数日の夜を経て、灯里達と会う土曜日がやってきた。

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