林恵の嫉妬
ヒロイン視点となります(六回目)
当分続くと思われます。
メッセージのみだが、灯里と久しぶりに会話をすることが出来た。正直、あたしは内心少し緊張をしていた。灯里との疎遠は、あたしに暴力を振るった前の恋人との出会いの時ら辺から顕著になった。その時から今まで、理由は違えどあたし達の交友関係は、高校時代とは大きく変わった。
その疎遠になった理由は、前の恋人が理由の時も、そうして今も、どちらもあたしのせいに他ならない。
灯里はあたしを咎めるだろうか。
そんなことを考えながら、メッセージに返信を送っていた。
結果、彼女はいつもと変わらない。いつも通り、友達想いで友達に甘い、そんな彼女だった。
罪悪感が胸を締める。
前の恋人との時はしょうがなかったとはいえ、今、あたしが灯里と距離を置いている理由は自分本位な理由だからだった。
いっそ咎めてほしいとさえ思った。
あたしのことを放って、男なんかとうつつを抜かすな。
そう言って、余計に関係がこじれれば良いと思っていた。
そう思っていたのに、彼女はむしろあたしに歩み寄る。
本当、あたしは良い友達に恵まれた。そう思う。
……そして、同時に思う。
そんな優しい灯里に対してだからこそ、山本は好意を抱いたんだろうって。
「何してんの」
リビング。
風呂上がりの山本は、バスタオルで髪を拭きながら、あたしの方を訝しげな目で見ていた。
「なんでもない」
「……えぇ?」
「なんでもないから」
「それはさすがに無理がある」
……今、あたしがしていた行動。
それは、まあ……。
「笑顔の練習してただけだけど、悪い?」
灯里の人間的な一番の魅力は、多分あの包容力のある微笑みだ。
あの微笑みは魅惑で、煽情的で、あどけなくて、おしとやかで。とにかく色んな要素を全て兼ね備えた、完璧な微笑みだ。
あれが彼女の人となり……つまりは人当たりの良さを暗示している。
あの笑顔が、もしあたしにも出来たらなあ。
高校時代はそんなこと、考えたこともなかった。
だったらいつからそんなことを考えるようになったんだろう。こんな嫉妬深くなったのだろう。
「今の笑顔、灯里に似てた?」
「え……あー。まあ、そこはかとなく?」
あたしは頬を膨らませて、山本に抗議の視線を送った。
それ、全然似てないって意味じゃん……。
姿鏡を見ながら、あたしは頬に指を当てて、口角を吊り上げる。
あの微笑みを意識しよう。そう思って口角を吊り上げると、どうしても微笑みは不自然になる。
でも、こいつが惚れた微笑みなら、ちょっとは似せられたらと思ってしまう。そうすればこいつは、もっとあたしのことを見てくれるだろうか?
「お前らしくない顔だな」
「悪い?」
「いや。ただ、お前にはいつもの勝ち気な微笑みの方が似合っている」
「……ふうん」
あたしは頬を吊り上げていた指をどけた。姿鏡の前からも撤退する。
……まあ、こいつに似合っていると言われたからさ。
あたしには、灯里のような微笑みは似合わないみたいだしさ。
別に、褒められて嬉しいと思ったわけじゃないけどね?
「林、顔赤いぞ?」
……嘘ついてごめんなさぃ。
めっちゃ嬉しかったです……。
うめき声を上げながら、あたしは山本の布団に転がった。
いつだったか。山本の枕のスメルを嗅いだあの日から、あたしは隙を見つければ山本の布団に転がるようになった。そうして布団で転がって不可抗力を装って枕を抱いて、マーキングのように匂いを付けたり一生懸命嗅いだり、そんな努力を怠らない。
……努力、とは?
「お前、最近よく布団、間違えるよなあ」
気付け。この朴念仁。誘ってんだよ。
勿論、臆病者のあたしにはそんなことは言えない。
あたしはテレビを見てあたしに注目する様子もない山本を睨みながら、満足した後、体を起こした。
……そう言えば、あたしは山本に言わないといけないことがあることを思い出していた。
キャッシュカードが使えなくなり、ワイ大焦りだったため、昨日は2話しか投稿出来なかった。
ホンマごめん。
メンタル死んでたわ。差し押さえとかではなさそう。まあ、奨学金しか借金してないし。返納もちゃんとしているし。さすがにね?
哀れな俺に、評価、ブクマ、感想よろしくお願いします!!!




