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【第4巻10/24発売!】高校時代に傲慢だった女王様との同棲生活は意外と居心地が悪くない  作者: ミソネタ・ドザえもん
温泉に行く女王様

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フランクフルト

本作のコミカライズ2巻、本日発売となります!

本当に皆様には感謝しかありません!

今回も買ってくれると嬉しいです!

「うわー、高いー!」


 ロープウェイに乗り込んだ俺達は、ぐんぐんと高度を上げていくロープウェイの窓辺から外の景色を眺めていた。

 窓から見える景色は、木々で囲まれていたが、左端にはダムのような建造物。右側には甲府市街が少しだけ見えた。

 ものの数分で、ロープウェイは山頂に到着をした。


「ほらほら、山本! 早く行こう!」


「落ち着け林。乗客の中で一番はしゃいでるのお前だぞ」


 一応言っておくと、俺達が乗り込んだロープウェイには、まだ年端もいかない少年少女も乗っていた。

 ただ、林はその子達以上にハイテンションに、外の景色を楽しんでいた。


 別に、旅行に来た身なのだから、絶景を楽しんでいけない、というわけではないが……そろそろ成人間近の女性が見せる反応にしては、少し子供っぽいことは否めない。


「いいの! だって折角の旅行だよ?」


「恥ずかしいとかないの?」


「あはは。山本、旅の恥は搔き捨てって言うでしょ?」


「言うけど……?」


 だからと言って、自ら恥を掻きに行くのは……どうなんだ?


「よし。とりあえず、ソフトクリーム、食べようぜ」


 林は舌をペロッと出して、ウインクをしてきた。

 ……マジでこいつ、ずっと食い意地張ってるな。


「とはいえ、こんな山頂にアイスを買えるような場所は……」


「あるよ」


 日頃は方向音痴な癖に、林は俺よりも早く山頂にある売店を見つけていた。

 正直、少しだけ呆れた。


「山本は何味食べたい?」


「そうだなぁ」


 呆れたものの、俺も少し小腹が空いてきていたから、甘味を摂取すること自体は構わなかった。

 売店にある看板を見て、俺は何を注文するかを考えた。


「じゃあ、とりあえず……フランクフルトかな」


「ソフトクリームじゃないし」


「仕方がないだろ。小腹が空いているんだ」


「……まあ、小腹が空いているんじゃあ、しょうがないよね」


 林は意外とこういうところは寛容的だった。


「すみませーん」


 林は店員を呼んで、ソフトクリームとフランクフルトを注文してくれた。

 お代は何故か持ってくれた。

 俺が払うと言ったのだが、運転を任せている分だからと言って、絶対に受け取ってくれなかった。


「うん! 美味しい!」


「そうだな」


 快活な笑みを飛ばす林に同意しつつ、内心、俺は……まあ、所謂観光地で食べるクオリティのフランクフルトだな、と思っていた。

 要は、味は普通、ということだ。


 ただまあ……観光地という特別な場で食べるからこそ、味により深みが増すというところもあるのかもしれない。


「ね。山本」


 そんな考察をして一人盛り上がっていると、気付いたらソフトクリームを食べ終わっていた林から声をかけられた。

 っていうか、ソフトクリーム食べるの、早っ。


「……なんだ?」


 少しだけ嫌な予感がした。


「あんたのフランクフルト、美味しそうだね」


 ……まったく。

 どうして良い予感をした時は一切的中しないのに、嫌な予感をした時は毎回的中するのだろう。


「じゃあ、もう一個買えば?」


「いやいや、だってあたし……ダイエット中だよ?」


「アイス食った後に言う?」


「そうなんだけどさぁ。そうじゃないじゃん?」


「いや、そうだよ。絶対にそう」


 まあ、気持ちはわかる。

 甘いものを食べた後って、無性に塩辛いものを食べたくなるよな。


「……どうしても駄目?」


「駄目駄目。もう一個買いなさい」


「えー。……まあ、仕方がないか。そうするよ」


「ん?」


 なんだか嫌に聞き分けがいいな。


「……おう。そうしろ」


「隙ありっ」


「あ」


 俺が油断した隙をついて、林は俺が持つフランクフルトにパクリとかみついた。

 

「……おい」


「おいしー!」


 そうか。美味しいか。


「ごめんね。どうしても食べたくなっちゃって」


「……謝っても遅いぞ」


「ごめんって」


「お前、そんな思い切り顔を寄せて、ついうっかり俺が手を動かして、串の先が目にでも入ったらどうする」


 まったく。

 危ない真似をしやがって……。


「……そっち?」


「は? 他にどっちがあるんだよ」


「いやだって、あんたのフランクフルト勝手に一口もらったんだよ?」


「それが?」


「……あんたもさっき、あたしにもう一個買えって言ったじゃん」


「それは、どうせお前のことだから、一口で我慢できなくなると思ったからだ」


「まあ、それはある……」


 あるんかい。


「じゃあ何? 一口で我慢出来るなら、食べるのは全然問題なかったの?」


「ああ」


「あっさりと……どうしてそうなるの?」


「は?」


 一体、俺、なんで断罪されているんだ?


「そりゃあ、このフランクフルトはお前の金で買ったものだからだろ」


 俺はフランクフルトを恵んでもらった立場の人間。

 購入者である林が一口欲しいと望むなら、従うのが筋ってもんだ。


「だから、一口で我慢出来るのなら、俺のホットドッグを食べることは問題ない」


「……ほへー」


「次からは危ない真似はすんなよ」


「……わかった」


 あまり納得いってない様子だったが、林は頷いた。


「はは……」


「なんだよ林、急に笑い出して」


「いや、あんたは相変わらずだと思ってさ」


「は?」


 林が俺の何を見て相変わらずと思ったのかがわからなかった。


「ま、それもあんたの良さだよ」


「……そりゃどうも」


「……ふふっ」


 林は可笑しそうに口元を抑えていた。


「まあ、とりあえずさ……」


 そして、俺に微笑みかけた。


「フランクフルトもう一個買ってくるね!」


「やっぱり一口で我慢出来ないじゃないか」

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― 新着の感想 ―
つい先日昇仙峡に行ってきました。 滝が良い感じですよね。
フランクフルトかなあ。アメリカンドッグでもいいのだけれど。 ホットドッグに串はないからねえ。 あーんしろ、って言い出さなかっただけ、まだマシだろうか。
アメリカンドッグで脳内変換しました
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