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【第4巻10/24発売!】高校時代に傲慢だった女王様との同棲生活は意外と居心地が悪くない  作者: ミソネタ・ドザえもん
温泉に行く女王様

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気恥ずかしい

 過度……とまでは言えないが、一か月のダイエットによる抑制によって、食い気が増した林のリクエストもあったりしたが、一週間ほど吟味した結果、今回の温泉旅行は石和温泉に行くことに決定した。

 決め手は移動経路の容易さ。

 新宿から乗り換えなしで電車一本、約一時間半で到着出来る利便性は、中々のものだった。


『石和温泉って何が有名なの?』


 ちなみに、旅行先を決めたや否や、林はこんなことを言い出した。


『そりゃあもう、山梨だし葡萄だろ。後はワイン』


『未成年だしワイン飲めないね。じゃあ、葡萄か。うーん……』


『……え、すごい不服そう』


『ちょっと山本。勘弁してよ。不服なんてそんなことないから』


『そうなのか?』


『うん。だってさ、勝手に決めていいよって言って、勝手に決められた先で不服そうな態度を示したら……じゃあ、お前も旅行先決めに参加すれば良かったじゃん、と思うじゃない?』


『まあ、そうだな』


 俺からしたら、不服云々は関係なく、旅行先決めに参加しろよ、と思うけどな。


『じゃあ、何そんな唸ってんだよ』


『いや、葡萄って腹持ちいいのかなって』


『温泉旅行なのに食い気しかないな、お前』


 一応その後、山梨の名産としてほうとうや鳥もつ煮が有名であることを伝えた。

 ちなみに俺は臓物系の食べ物が苦手だ。

 林が鳥もつ煮を食べたいと言ったら、多分、一人で食べに行け、と言うだろう。


「後は旅館だな」


 大学の講義の合間に、俺はスマホを弄りながら石和温泉の旅館を調べていた。

 そういえば、前に林に、大学にいる時くらい友達と会話したらどうか、みたいなことを言われた記憶があるが……今は友達との会話よりも旅行先を決める方が先決だ。


 ……嘘です。

 相変わらず、俺は大学に友達がいないです。

 今日の講義は竹下もいないし、話し相手が本当にいない。


 いやー、もうここまで来ると、大学に友達いらないんじゃね、と思うよね。

 実害ないし。

 こうやって一人の時間に集中できるし……!


 ……ふむ。しょうもない。


「何やってんの、山本君」


「ぎゃあっ!?」


 一人でしょうもない考えに浸っていると、背中を叩かれ、俺は変な声をあげた。

 心臓をバクバクさせながらそちらを振り返ると、そこにいたのは……。


「げ」


「あー! げ、だって! げ! ひっどーい! それが元カノに対する態度かな!?」


 ……笠原は頬を膨らませて抗議の意を示してきた。


「悪かった。悪かったから……元カノ云々の変な弄りはやめてくれ」


「やめないよ。弄りじゃないし、事実だし」


 相変わらず、笠原はどこか楽しそうにニコニコと微笑んでいた。

 俺の隣が定位置、だとでも言うかのように、自然に隣の席に腰を落としてきた。


「山本君、どうして今、あたしが君の隣に座ったかわかる?」


 ニコニコ顔の笠原は……なんだか怒っているように見えた。

 最近のこいつ、登場してきてはずっと怒っているな。


「わからん」


 しかし、俺には笠原が怒っている理由に検討がつかない。


「なんで?」


「心当たりが多すぎるから」


「ふむ。確かに」


 何とか笠原を説き伏せることに成功したようだ。


「……ま。じゃあ、今日のところは許してあげる」


「ありがたいぜ」


「……それで、最近のメグの様子はどう?」


「元気だ。それ以上でもそれ以下でもない」


「ふうん。じゃあ、それは?」


 笠原は俺のスマホを指さし言った。

 目ざとい女だ。

 気付いていやがった。


「……慰安旅行に行こうと思ってな」


「一人で?」


「……ああ」


「そっかそっか。楽しんできてね! 二人での慰安旅行!」


 ……質問の意味がないじゃないか。


「林に聞いたのか?」


「違う。なんとなく、山本君が優しいオーラを発していたから気付いたの」


「俺のオーラがわかるのか。すごいなお前。俺でも自分が発するオーラはわからんぞ」


「わかるよ。だって好きな人のことだもん」


「そうだな。お前、林ラブだもんな」


「……ふふっ」


 ……一々、人の気持ちを弄ぶようなことを態度を示しやがって。

 弄ばれているとわかっているのに、馬鹿正直に頬を染める俺にも大概問題があるな。


「……なんだか知らない内に、二人がどんどん遠くに行ってしまった気がするよ」


 笠原が呟いた。

 その声色は、何故だか少し寂しそうに聞こえた。


「そんなことはないだろ」


「ううん。あるよ」


 ……笠原の方を見て、俺はいつかの光景が重なった。


「山本君って、意外とアクティブな性格をしているよね」


 高校時代、唯一の恋人だった笠原から……俺はいつか、同じセリフを吐かれながら微笑まれた。


「……そんなことないだろ」


 高校時代は、その言葉に異を唱えることはしなかった。

 でも今は、なんでか素直に頷きたいと思えなかった。


「そう?」


「ああ」


 最初は、まだ笠原への感情に未練があるからなのかと思った。……女々しいけども。


「そんなことないでしょ」


「あるよ」


 でも、途中で気付いた。

 俺は照れ臭くて、笠原の言葉に異を唱えたのだ。


 ……昔はお互い、忌み嫌いあっていたのに。


 今は同棲しているあの女との関係を茶化されることは……どこか気恥ずかしかった。

本作のコミカライズ第二巻が9/19に発売されます!

また、ライトノベル四巻も10/24発売予定です!


是非買ってください!

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― 新着の感想 ―
4巻、めちゃくちゃ期待してます!
書籍3巻まで買ったけど、どうにもこの主人公の態度や言動に不快感が拭えなくて思案中 
だんだん自覚し始めてる。それは笠原さんが置いてかれたと感じるのも仕方がないかぁ。
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