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ダイエット談義

 林がダイエットをすることになった次の日の夕暮れ時のことだった。


「山本、夕飯を買いに行こう?」


 林は、俺にスーパーに行こうと誘ってきた。

 そういえば、昨日の林とのやり取りをすっかり忘れていたが、俺、林のダイエットを手伝うことになっていたんだ。


「わかった」


 俺達は部屋を後にした。

 向かう先は、近くのスーパー。……ではなく、大体一キロ先のスーパーだった。


「歩かないとね」


 いつもより遠いスーパーに行こうと提案をしてきたのは林だった。

 よく見れば彼女は、いつの間にか購入していたランニングウェアを着ていた。

 ダイエットに対するやる気具合が伺える。


「漠然と運動をしても意味ないぞー」


 そんな林のやる気に、早速俺は水を差すのだった。


「えー? 何が駄目なの?」


「まず……お前はちゃんと人が太る原理を知っているか?」


「太る原理?」


 林は訝しげに、俺を見た。

 しばらく俺の言葉を考えた後、林は俺を睨んだ。


「そんなの、運動不足か、食べ過ぎかのどっちかじゃないの?」


「なんで睨みながら言う?」


 まったく。林の奴は、一々好戦的だなあ。


「じゃあ聞くが、どれくらい運動したら運動不足じゃなくなり、どれくらい食べたら食べすぎにあたるんだ?」


「知らない」


「ふっ」


「勝ち誇った顔するな」


「まずだな。人間が太る原理って言うのは、実は簡単なことでだな……要は、摂取カロリーが消費カロリーを上回ったら、体重が増えるんだよ。逆を言えば、消費カロリーが摂取カロリーより多ければ、絶対に体重は増えない」


 それが、高校時代に俺が筋トレのついでに色々調べた結果の結論だ。

 ……今、俺が言ったことを紹介するトレーナーの動画を多数確認したし、多分間違ってはいないだろう。


「つまりだ。人が太るのは、運動不足が原因ではない。運動不足になり、消費カロリーが減るから太るんだ。同じように、食べ過ぎが原因で太るわけでもない。食べ過ぎて、摂取カロリーが増えるから太るんだ」


「……それが?」


「言い当ててやるよ。お前、ダイエットのために運動量を増やして、食べる量を減らそうとしていただろう? それも極端に」


「……う」


 どうやら図星らしい。


「俺が言いたいことは、そんな極端なことをせずとも、カロリー計算をしっかりやれば太ることは絶対にないってことだ。簿記試験の時にも言ったが、漠然とした計画は持続しない。何しろ無理をしがちになるからな」


「……じゃあ、具体的にどうすればいいのよ」


「まずは計画を立てるべきだ」


 近場のスーパーを追い越しつつ、俺達の会話は続いた。


「さっき摂取カロリーと消費カロリーの話をしたが具体的に脂肪を一キロ減らすには、七千五百キロカロリー程、摂取カロリーより消費カロリーを多くする必要がある」


「あんた、なんでそんな細かい数字まで知っているの?」


「そりゃあ高校時代に色々調べたからだ」


 俺は咳払いをした。


「でだ。一キロ脂肪を減らすのに、七千五百キロカロリー消費カロリーを多くするとなったら……あとはもう、目標を立てるだけだろ? まずは、いつまでに何キロ体重を落とすか。その目標を立てる」


「……二ヶ月後にはクリスマスだし、そこまでには痩せたい」


「お前、じ……これだけ太ったそうだが、同じだけ痩せる必要はないと思うぞ?」


 林が太った体重を口から発しようとしたらこれでもかと睨まれ、俺は指で彼女の増加体重を示した。


「まあ、その半分でいいんじゃないか? 痩せすぎも健康被害を及ぼすこともあるからな」


「……うん」


「じゃあ、五キロを二ヶ月で痩せると考えたら……大体、二週間に一キロ体重を落とす必要があるわけだ」


「うん」


「つまり、二週間で七千五百キロカロリー。一日あたり、ざっくり五百キロカロリーだな」


「……そうなんだ」


「ああ、ちなみに五百ミリリットルのジュースが二~三百キロカロリー。おにぎり一個が二百キロカロリーだ」


「え、そんなもんなの?」


「細かく言うと、新陳代謝の話だとか、そもそもお前は毎日ジュースを飲んでいるわけではないだとか色々あるが……とにかく俺が言いたいのは、一日五百キロカロリーの節制は達成に苦労する数字ではない、ということだ」


「……だね」


 林は嬉しそうに微笑んだ。


「山本先生! あたし、結構やる気が沸いてきました」


「誰?」


 かつて女王様と呼ばれた相手に先生と言われれば、俺が戸惑ってしまうのもおかしい話ではないだろう。


「と、とにかく……漠然とした無茶なダイエットはする必要はないってことだ」


 俺は戸惑いながらも、気を取り直して話を続けた。


「それじゃあ、今日からはカロリー計算アプリでも使って、摂取カロリーの計算をするようにしよう」


「ざっくりじゃ駄目なの?」


「カロリー計算アプリを使うと、三大栄養素とかの数字もわかるようになる。カロリーを控えるあまり、栄養素を疎かにするのも良くないんだ」


「へえー……怒りっぽくなるとか?」


「あはは。お前が怒りっぽいのは栄養素関係ないだろ?」


 肩を殴られた。

 痛かった。


「……すみません」


「ふんっ」


「……あ、あと、今日からはお前も、ウチの体組成計に乗りなさい。そうすれば、今の新陳代謝もざっくりわかるから、消費カロリーの計算も楽になる」


「わかった」


 よし。

 これで、林の摂取カロリー、消費カロリーの見える化は完了だ。

 あとは……。


「あとは運動だな」

本作第二巻の発売が二日後にまで迫ってきました。

発売日まで毎日投稿頑張るかーと思ったら、何故かダイエット談義が始まっていた。


この作品って、ダイエットエッセイだっけ?


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[一言] え!?この小説はダイエットエッセイではないのか!?(違)
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