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【第4巻10/24発売!】高校時代に傲慢だった女王様との同棲生活は意外と居心地が悪くない  作者: ミソネタ・ドザえもん
蚊帳の外の女王様

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林恵の眼力

 エヘヘ、と照れながら頭を掻いている寧々という子を見て、少し狂気を感じた。

 一泊二日の弾丸四国旅行。東京からバイクで、ほぼ休みなし。


 それは本当に……寧々という子の言う通り、バイク乗りにとって普通なのだろうか?

 バイク乗りって凄いんだなぁ……(どうでもよかった)。

 

「どんなバイク乗ってんだ?」


 山本が尋ねた。


「スズ◯のSV650ってやつです」


「えっ、大型なのか。勝手な偏見で、女子なら中型とかだと思ってた」


「そりゃああたしも、大学に入学したては中型でしたよ?」


 ……大型?

 中型?

 なんのことだろう?

 あたし、バイクには疎いんだよね。


「この前、大型免許と一緒にこの子を買ったんです」


「えっ」


 山本は少し引いていた。


「……免許とバイク、一緒に?」


「アハハ、山本君。免許なんて二十万くらい払えば実質タダですよ?」


「タダの概念が崩壊した瞬間だな」


 山本は呆れていた。


「大型バイク代もそれなりにしたんじゃないのか」


「はい! ローンを組んじゃいました」


「ノリが軽い」


「バイク乗りならこれくらい普通ですからね!」


「だから主語をデカくするな」


 はー、と山本はため息を吐いた。

 話に一区切りがついたようなので、あたしは山本のシャツの袖を引っ張った。


「ね。山本? 大型とか中型って何?」


「え? ……ああ、バイクの排気量のことだ。排気量が上がる程、バイクは加速力とかが上がるんだ」


「へー」


「深夜の首都高を大型で滑走するのは爽快ですよぉ……」


 何かを思い出しているのか、うっとりとした顔付きの寧々という子に、山本は目を細めていた。


「お前のバイク感は、元バイクサークルの連中が仕込んだのか?」


「えっ、いえ……あの人達とはあまり、話してないから」


「あ、そう……」


「はい。……正直、怖くて」


 さっきまで(一方的ながら)盛り上がっていた二人が、気まずそうに俯いた。

 どうやら、何か訳ありらしい。


「……三角関係の修羅場に巻き込まれたことがあるそうなんだ」


 山本は、小さな声であたしに現状の経緯を説明をしてくれた。


 修羅場の三角関係、か。

 言い振り的に、恐らく寧々という子がかつて所属していたバイクサークルで男に言い寄られたみたいな感じか。


 ……それは、不憫だな。

 高校時代、あたしも時々修羅場みたいな状況に陥ったことがある。

 ほらあたし、高校時代はぶいぶい言わせてたし。


 その度、結構大変な目に遭ってきてたんだよね。

 友情が崩壊したこともあれば、裏で誰にも悟られないように泣いた日だってある。


「ねえ、また別のバイク乗り仲間を探そうとか思わないの?」


「……それは」


「……探すの、手伝おうか」


「えっ?」


「勘違いしないで」


 あたしはそっぽを向いた。


「あたしはただ、山本の友達が寂しそうな思いをするのが、忍びないだけ」


 ……そ、それ以上でもそれ以下でもないんだから。


「……いいんですか?」


「まっ、少しくらいはね」


「本当に、あたしなんかがいいんでしょうか?」


「あーっ、もうっ!」


 あたしは寧々という子を睨みつけた。


「一々おどおどするなっ! あんた、折角可愛いんだから! もっと楽しそうな顔しなさいよ!」


「か、かわ……っ」


 寧々という子は、頬を染めて俯いた。

 ただ可愛いと言われたことに狼狽えているだけで、今度は後ろめたい気持ちは抱いてなさそうだ。


「……じゃあその、お願いします」


「……ん」


「そうだな。それがいい」


 唐突に、山本が介入してきた。


「そこでバイク乗り友達を作ってさ。例えばそいつに、勉強を教えてもらうとかな。そうだ。それがいい」


 何を言っているのだろう、山本は?


 ……まあ、いいか。

 少しだけ、あたしの中には殊勝な気持ちが芽生え始めていた。


 あたしは今、いつか山本があたしにしてくれたことを思い出していた。

 いつか……山本があたしにしてくれた、助けてくれた……その数々を思い出していた。


 山本は多分、お礼をしたい、と言っても気持ちだけしか受け取ってくれないだろう。

 それでもゴネて受け取るよう要求すると……あいつは最終的にはきっと、こういうと思うんだ。


『だったら、次はお前が困っている誰かを助けてやれ』


 言い訳臭く。

 面倒臭そうに。

 山本はきっと、こういうと思うんだ。


 ……だから。

 本当に言われたわけじゃないけれど!

 その期待に応えようと思ったんだ。


 ……やるぞぉ。

 静かに、あたしは燃えていた。


「そういう意味だと山本君! バイク! 興味ありませんか」


 鎮火した。


「……俺?」


「はいっ! 山本君です!」


「なんで俺なんだよ、他にもいるだろ」


「だって……勉強も出来て、時間的余裕がありそうで、友達がいない人と言ったら山本君しかいないじゃないですか!」


「ちょっと待て。友達の有無は関係ないだろ」


「大アリです!」


「なんでだよ」


「初対面の人とあたしが、まともな会話を出来ると思いますか?」


「……すまんっ。考えが浅かった」


「そうでしょ? ……あ、あの、だから林さん! あなたも是非、バイクを買ってーーヒィィィ!」


 寧々という子が悲鳴を上げた。

 あたしの顔を見て、悲鳴を上げた。


「……山本は駄目でしょ」


「し、しょうですね……」


 しょぼんとした顔で、寧々は呟いた。

書籍版発売まで一ヶ月を切りました。

本が売れるか心配で毎日が辛い……。

なんてことは当然ない。

たくさんの方が買ってくれることを待ってます!

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公が鈍感すぎるなぁ美人と二人暮らししてたら嫌でも意識すると思うんだけど 他が良いだけにそこが気になってしまう
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