嘘じゃない
色々なサイトで本作の予約が始まったようです。
おかげでエゴサが捗り、承認欲求がぶち上がります!
でもペンネームでエゴサすると某アニメキャラが水辺に浮かんでるような画像が出てきます
なんでこのペンネーム付けたの、と作者への憤りが収まりません
まさかの人物の登場だった。
俺の部屋の同居人であり、俺の世話係でも林恵。どうしてか彼女は今、俺と、俺の隣にいる竹下とやらに向けて敵意のある視線を寄越していた。
はて。俺、何か彼女の反感を買うようなことをしただろうか?
心当たりがない。
俺じゃないとすれば……隣の女子の仕業だろうか?
いいや、林と竹下とやらは、今が初対面だぞ?
トラブルの種があるはずもない。
だとすれば……あれか。
林の奴、今日はたまたま腹の虫の居所が悪かったのか(苦笑)。
まったく。しょうがない奴だ。
「弁当、すまなかったな。林」
「……」
「謝罪とお礼に、後でなんかおごるよ。何がいい?」
「……」
「その……お弁当を忘れたのは悪かったが、機嫌直せよ。まあ、遠出させてしまったことは悪かったと思っているぞ?」
「そうじゃない」
「ん?」
「そうじゃないって言ってんの!」
林の唐突な怒声。
俺は面食らって、隣の竹下とやらはビビッていた。
「その子、誰?」
冷たい声。
竹下は……陽キャの圧に気圧されて、殻に閉じこもっていた。
「……竹下だ。同じ学科の、同級生だな」
「は?」
「は? とは?」
事実を述べたら威圧された。
おかしい。
事実を述べることもいけない時代なのか?
だとしたら、なんて生き辛い時代なんだ。涙が溢れそうだ。
「ただの同級生じゃないでしょ」
「いいや、ただの同級生だ」
何なら、今日まで顔も知らなかったくらいの。
「嘘おっしゃい」
「何を根拠に」
「友達のいないあんたが、早朝にただの同級生と話しているはずがないじゃない」
「……ふむ」
俺はあごに手を当てた。
「確かに」
「え、納得するの!?」
驚いたのは竹下とやらだった。
ただ、これは仕方がない。
ほら俺って、友達いないしいなくていいと思っているし……早朝の自分の貴重な時間を割いてまで他人と会話をするかといえば、答えはノーだ。
林の奴、俺の生態をよく理解しているな。
「なんで嘘つくのよ」
「嘘ついたわけじゃない。自覚がなかっただけだ」
「……何それ」
林は俺を少し睨んだ。
「……まあ、あんただからそれで納得できるけど」
「え、納得するんですか?」
また驚いたのは、竹下とやらだった。
さっきから彼女は、話に全然ついていけていないようだ。
「で、その子、何なのよ」
しかし、林は彼女のことなど気に留めず、俺にまた質問をしてきた。
「……そういう意味だと」
俺の脳裏に、家でのやり取りが蘇ってきた。
「友達候補だ」
林は、一瞬目をパチクリさせた。
そして、合点がいったようだった。
「女の子だったのかよぉ……」
ただ、合点がいった途端に、何故か涙目になっていた。
林の顔からは、後悔の念が読み取れた。
「……あんた、本当に……この、このっ」
「よくわからんけど、殴るのやめてもらっていいか?」
林に軽い力で殴られながら、俺は言った。
「そろそろ講義始まるから。また後でいいか?」
「……わかった。わかったわよ」
林の声は怒っていた。
「ん」
林は俺に、弁当箱を突き出した。
「ありがと。悪かったな」
「……今日はバイト、なかったわよね」
「そうだな」
「じゃあ、講義終わったらすぐに帰ってきて」
「えー……」
「帰って来い」
「……わかった」
「その子も、連れてきてよ」
「え、なんで?」
「なんでも!」
「……」
こう言われれば、拒絶するのはほぼ不可能。
俺は仕方がなく、渋い顔でため息を吐いた。
「じゃ」
林は足早に、講義室を出て行った。
「……ねえ、山本君?」
「すまなかったな。変なことに巻き込んで」
「……」
「竹下?」
「本当だよっ!!!」
竹下とやらは怒っていた。
「あの人何? あの人何ぃ!?? 怖いんだけど! 超怖いんだけどっ!!! あたしこの後、確実にあの子に屠られるじゃん!!!」
「……あー、まあ、色々あってだな」
「嘘でも屠られないって言ってよ!」
俺は半泣きの竹下とやらから目を逸らした。
……仕方ないじゃないか。
あそこまで怒った林を見るの、俺も初めてなのだから。
あのご立腹の林が竹下とやらに何をするのか。正直、俺には想像もつかない。
「山本君の嘘つき!」
「え、何が?」
「恋人いないって言ったじゃない!」
「いや、いないが?」
「じゃあ、あの人は何なのよ!」
「同居人だ」
「恋人じゃないのに?」
「恋人じゃないのにだ」
「シェアハウスに住んでいるってこと?」
「シェアハウスには住まずにだ」
「部屋の間取りは?」
「ワンルームだ」
「ワンルームで恋人でもない男女が同居してるって言うの!?」
「そうだが?」
「なんで当たり前みたいに言っているの、この人っ!???」
興奮する竹下とやらを見ながら、感情の起伏が激しい人だなあ、と俺は呆れていた。
主人公にとっては嘘ではないが、作者から見るとフィクション。御伽噺。
こんなの小説だけの話ですよ。そうじゃないなら、今、作者の隣には女の子がいるはずだもの。
あははっ!
評価、ブクマ、感想よろしくお願いします!!!
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是非買ってください!!!




