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【第4巻10/24発売!】高校時代に傲慢だった女王様との同棲生活は意外と居心地が悪くない  作者: ミソネタ・ドザえもん
蚊帳の外の女王様

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136/164

唐突な閑話:林恵は敗北する

タイトル、あらすじに書いた通り、本作を書籍化して頂けることとなりました。

発売日は1/25。皆、絶対買ってくれよな!


もう設定を忘れてしまった、という作者のため

キャラの性格どんなだっけ、という作者のため

そもそもいつ振りの投稿だ、という作者のため!


しばらくそれなりの頻度でまた投稿するからよろしくね!

 これは、恵が実家に帰省し、なんやかんやあって山本の家に戻った頃のお話。

 山本の家にて、恵は少しだけ居心地の悪さを感じていた。

 山本は今、大学で講義を受けている真っ最中。

 家の中には恵一人。取り込んだ洗濯物もさっき畳み終わって、夕飯の仕込みも滞りなくて、少しだけ暇になったからこそ感じた感覚だった。


「あたし今、山本と二人で暮らしているんだよね……」


 その言葉は、家事が少し落ち着いた今だからこそ出たものだった。

 意中の相手から貸してもらったタブレットで見ていたのは、皆大好きスカッと系動画。ただ、彼女の頭に今、その内容は全然入ってきていなかった。


 想い人との二人暮らし。

 一応、つい先日まで別の男と同棲生活をしていた恵であったが、今内心に宿っていたその感情は、この前まで抱いていたそれとは似ても似つかない。


「よく考えたらこの時間、あたし、山本の私物を好き放題に出来るんだよね」


 実に浅ましい考えである。


「この発想はいけないなぁ。なんだか変態みたいだ」


 自覚があることがせめてもの救いか。


「……ふぅ」


 深いため息の後、恵は立ち上がった。

 邪心を振り払おうと思った。ただし、既に七割くらいは発散済みだ。


 邪心の振り払い方について、恵は手段を一つ持っていた。

 幼少期から高校時代にかけて、恵は口うるさい父との喧嘩が絶えなかった。そのことを愚痴交じりに灯里に相談したことが、手段を手に入れた理由の一つだった。


 ヨガ。

 独特なポーズをとって、瞑想し、雑念を払い、心を落ち着かせる行動のことである。

 高校時代からのヨガの実践により、恵はその行為での効果具合を認識していた。故に今、久しぶりにヨガをしようと思ったのだ。


「最近、むくみとか酷くなっていたから丁度いいや」


 しかし、恵の心の中は既に、雑念で溢れかえっていた。

 時計が時間を刻む音を聞きながら、ゆっくりと呼吸をして、恵はヨガを実践していった。


 ヴィーラバッドラーサナ。

 パリヴルッタトリコナーサナ。

 ナタラージャーサナ。

 

 一体、どれくらいの時間が経っただろうか。

 玄関の扉が開いた。


「うおっ」


 男の小さな悲鳴。

 恵は、ゆっくりとまぶたを開けた。


 視線の先にいたのは、怪訝な顔の山本だった。


「おかえり」


「何やってんの、お前」


「雑念を振り払ってるの」


「は?」


「最近、運動不足でさぁ……。ちょっとダイエット」


「雑念振り払えてないじゃねえか」


 しばらく恵は、山本の怪訝な視線を感じながらヨガを続けた。

 いつもなら、もう少し他人の目を気にしそうなものだが、ヨガ中で心が落ち着いているせいか、今はそこまで視線が気にならなかった。


「ふう、楽しかった」


 恵はヨガを止めた。


「……あれ、山本。ずっとそこに立ってたの?」


 晴れやかな心で、恵はリビングとキッチンの境で腕を組んでいた山本に尋ねた。

 山本は、考え込んでいるようだった。

 自分を見つめて難しい顔をしている山本。


 恵はしばらくして、ドキリとした。

 

 しばらく山本の視線を浴びながらヨガをしていたが……思えば、様々なポーズをする中で、体のラインが強調されるようなポーズもあった。

 今の恵の出で立ちは、Tシャツとショートパンツ。

 もしかして山本は、その格好で、そのポーズを間近で見て……。


 ……もしかして。

 もしかして!?


 恵の心臓が、うるさいくらいに高鳴った。


「なあ、林」


 山本の声は、落ち着いていた。


「ヨガ……って、どうやるんだ?」


「え?」


「ヨガって、どうやるんだ?」


「……」


「ヨガって、どうやるーー」


「ヨガヨガうっさい!」


 恵がヨガに深い嫉妬をした瞬間である。

 しかし、恵はすぐに落ち着いた。

 たかだか自信のあるボディラインに興味関心を示されず、ヨガに掻っ攫われただけではないか。


 落ち着け。

 おおお落ち着け。

 恵は、大きく息を吐いて、山本にヨガについて説明することとなった。


 致し方ない。

 恵は思った。

 確かに自分は今、ヨガに嫉妬した。


 自分のボディラインに目も暮れられなかった上に、興味関心を奪ったヨガに。

 自分の想い人を簡単に奪ったヨガに。

 確かに今、恵は少し嫉妬した。


 しかし!

 いくら嫉妬したからと言って、それでヨガに対する誤った知識を植えつける程、自分は落ちぶれていない!


「まず、ヨガってまとまった時間がないとやり辛いよ。それこそ、大学にバイトに忙しいあんたには向いてないと思う」


 そんなはずなかった!

 

「そ、それに……ヨガって結構体力使うから。さ、最近運動していないあんたじゃすぐに根を上げるよ」


 嫉妬心メラメラだった!


「そ、それよりも、今日の夕飯、シチューなんだよね。味見する?」


 恵は山本に言ってほしかった。

 シチューか。

 じゃあ、ヨガは後でいいか。

 そう言ってほしかった。


「いや後でいい」


 恵がヨガに完全敗北した瞬間である。

 

 恵は落胆しながら、渋々山本にヨガを教えた。

 それから山本は、掃除の後にはヨガを必ずするようになる程、ヨガにのめり込むことになるのだった。

評価、ブクマ、感想よろしくお願いします!!!

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― 新着の感想 ―
[良い点] メラメラ嫉妬してる(笑) この度は書籍化おめでとうございます(*^▽^)/★*☆♪ 電子書籍じゃなくて、本屋の書籍ですよね? タイトルは全く同じですか? 近所のTSUTAYAで予約したい…
[一言] エタってたと思ってたんだ、すまない…
[一言] 書籍化、おめでとうございます。 ちょっと間空いていた時期は、もしかしたら改稿作業とかが入っていたのでしょうか。 山本君は、嵌るとドツボになりますからねえ。恵にはまだそこまで嵌りこんではいな…
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