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第一章 ④ 小さなヒーローは、何色に染まる

 土などで汚れてしまった手を洗う為、井戸のある村の中心部に行くと、まだあんな事件があっただなんて思いもよらない人々が見受けられた。

 幸か不幸か、山側の村の入口は、人の出入りがかなり少ないらしく、そちらの畑仕事をするか、山で仕事でもしてこない限り、訪れることは無いようだ。

 そろそろ日も傾き始めているので、夕食の支度に追われているらしいのも、そちらへ寄ることの無い原因の一つだろう。共用の水場を利用して、野菜を洗う女の姿が多く見られる。

 その中には、愛する…もしくは憎たらしく思う夫を失った女もいるのだろうと思うと、僅かに口角が上がった。

「すろすとぉん!」

 不意に、横から呪文を唱えるような声と共に明確な敵意を感じて、瞬時に刀へ手を伸ばし、飛んできた小石を刀身で弾く。

 何事かと改めて見てみれば、覇気の足りない声を発していたのは、年端もいかない少年だった。

 また地面に転がった小石を小さな手に取ると、懲りずにもう一度投げつけようとしている。

 その目には、子供ながら悪を排除しようという気概が現れていた。

 もしかしたら、幼い子供であるが故に、大人より防衛本能が発達していて、敏感に血の匂いや死臭を感じ取ったのかもしれない。

 俺は相手が子供であれど、容赦してはならないことは重々承知している。

 無邪気かつ無鉄砲な子供は怖いもの知らずで、時に大人より大胆な行動に出ることもあるからだ。

 刃物を持たせれば、非力な子供でも簡単に人を傷つけることもできるし、人を殺めることも難しくない。

 それは、身を以って知っている。

 ならば、俺が取るべき行動は一つ。敵意を剥き出しにして隠そうともしない相手を、ただ排除するのみ。

 他の村人の目があることも厭わず、一度鞘に戻した刀をいつでも抜けるように気を張りながら、少年の元へ近づく。

 相互に睨み合う瞳は、大人や子供など関係なく、互いを敵だと認識していた。

「こらっ、何してるの!危ないでしょう」

 男と男の戦いに水を差したのは、一人の女だった。

 彼女の手によって小石を握った手を無理矢理下ろされた少年は、不服そうに眉をひそめ、さらにムスッとした表情を浮かべた。

「だって、ママ!あいつが…!」

「人に向かって投げたら危ないって、いつも言ってるでしょ」

「でも…」

「でもじゃありません!」

 子供の言い分も聞かず、自分の意見を押し付ける女は、高圧的に喋って有無を言わさず黙らせた。

「すみません、うちの子が…」

 今の高圧的な態度が嘘のように取り繕った女は、子持ちにしてはまだ若々しく、肌艶に張りがある。

 子供が幼いのだから、早くに産んだとしたら妥当なのかもしれないが、それにしては、この見た目でもう一児の母になるものなのかと考えてしまう。

 彼女は少年の頭も一緒に下げさせて謝るが、母親と違って、子供の方からは全く謝罪する気持ちは感じられなかった。

 そんな気持ちすら伴わない形だけの謝罪に、何の意味があるというのか。

「小石でも、当たり所が悪ければ、一生治らない傷を負う事にもなるんだぞ」

 現に、先程も防がなければ、頭に当たっていたであろうことは明白だ。

 そうなれば、目がつぶれていたかもしれないし、鼻が折れていたかもしれない。

 失明したともなれば、そこらで手に入る回復薬では治せず、高位の回復魔法を使える神官などを頼っても、完治させられるかは怪しいものだ。

「それは理解しています。子供にも十分言い聞かせますので…。子供のしたことですから、今回は大目に見て頂けると…」

 一見殊勝な態度を見せてはいるが、自分の子供が粗相をしたのに、自分から大目に見てくれと言うのかと思って呆れてしまう。

 自分の監督不行き届きや躾が原因でもあるのに、なんと太々しいことだろうか。

「お前は、子供のしたことだからといって、肉親を殺されても、大目に見て寛大な処置を下すのか?」

「そ、それは…」

「違うだろ」

 言い淀む彼女の答えなど最後まで聞かずとも、そうでないことは散々他の人間を見てきた俺には分かる。

 例え、子供に息子を殺されたとしても、その親は寛大な対応を下すどころか、憤慨して敵討ちをしようと牙をむけるだろう。

 俺は、再び刀をゆっくり抜くと、その切っ先を少年に突き付けた。

「…っ」

 少年はたじろいで一歩引き下がったものの、顔を背けずにまだ降伏する様子を見せずにいたが、女の方は違った。

 自分の甘い考えを改めさせられて、事態を重く鑑みたことで、顔面を蒼白させていた。

 そして、自らの子供を守るように庇って抱き締めることで、少しは親としてあるべき姿を見せる。

「お願いですから、この子には危害を加えないで下さい!…親である私が、責任を取ります」

「ほぅ…。一体、どう責任を取るつもりだというんだ?たんまりと金をくれるとでも言うつもりか?」

「人様にあげられるほど、お金はありませんが…その代わり、私にできることなら、なんでもします。なんでもしますから、どうか許して下さいませんか?」

 それでこそ、母親のあるべき姿だというような美しい親子愛を見せつけられて、思わず固い表情を崩されてしまうと、そのまま矛先を収める。

 刀を静かに鞘へ戻すと、ホッと安堵の息を漏らす彼女に、一つの提案を持ち掛けた。

「それなら、今晩泊まる宿を探していたんだが、どこか良い場所を知らないか?」

「でしたら、是非うちに泊まっていって下さい。お詫びも兼ねて、ご馳走しますので」

「そうか、それはありがたい」

 殊勝になった女が、定住する地の無い旅人に快く宿を提供してくれたので、その心遣いに遠慮無く甘えさせてもらうとしよう。

「どうぞ、こちらです。取り立てて大きな家でもありませんが、寛いでいって下さい。今、夕食の支度を致しますので」

「ああ、お邪魔するとしよう」

 周りの民家と大差ない茅葺屋根の小さな家に案内されて、中へ入った。

 外交の盛んな町や広く流通している街では、ヨーチオの文化を取り入れた所謂洋風の建物も増えてきているが、この辺りの閉鎖的な田舎の村では、まだまだ人和じんわの国柄が色濃く出た昔ながらの純和風の建物ばかりというわけだ。

 かまどの併設された土間で履物を脱いで家に上がると、囲炉裏を囲う一室に繋がっていたので、そこへ適当に腰掛ける。

「邪魔だって分かってんなら、さっさと帰れよ」

「こら、アーニー!ダメでしょ、そんなこと言ったら」

 微塵も納得していない少年は、相変わらず敵意剥き出していたので、邪険にするようなことを言えば、また母親に叱られていた。

 元はといえば、自分の行いが尾を引いて今の状況に繋がっているというのに、自分で自分の首を絞めていることすら理解していないようにも見受けられる。

 余計機嫌を悪くした彼は、囲炉裏を挟んで向かい側に座り、その様子を隠そうともしない。

 かといって、俺も少年と仲良くしようなどと思うことも無ければ、特にすることも無いので、手持ち無沙汰の中、刀の刃こぼれでも確認していたが、それもすぐに終わってしまうと、客人に背中を向けて軽快な音を立てながら料理する女の尻でも眺めていた。

 街で暮らす若者が着ているような露出の多い洋風の服と違い、丈の長い着物を着ているので、それほど面白いものではなかったが、飽きもせず眉間に皺を寄せる少年と顔を突き合わせるよりは、よっぽどマシだった。

 何もしなくても料理ができるのは楽でいいが、何もせず待っているのも退屈極まりない。

 俺も、いつか彼女のような女を嫁にもらって、この少年のような子を生せば、このような平々凡々な生活が訪れるのかもしれないという血迷った考えが頭に浮かんでしまうと、自然に笑いがこみ上げてくる。

 一般的な世間の考えでいえば、それが平凡でありながらも幸せな光景といえるのかもしれないが、俺にとっては全く以って望むところではない。

 むしろ、平和過ぎて逆に死んでしまいそうだ。そう、俺にはもっと刺激が必要なのである。

 例えば、暇つぶしという為だけに、この少年の爪を一枚ずつ引き剥がしてやるくらいのことはしてやらないと、面白くない。

 しかし、今それをやってしまうと、彼女との取り決めを反故にしてしまう為、手を出すわけにはいかないのが歯痒いところだ。

「ただいまー。あれ、お客さん?」

「あ、パパ。お帰りなさい」

「お邪魔してます」

 突然、引き戸を開けて現れたのは、彼女と同じようにまだ若そうな顔つきの男だった。

 見覚えの無い顔だが、髭もこさえていないこともあり、余計若く見える節はある。

 もしかしたら、あの時の男たちの中に夫が混じっていて、現れないかもしれないと思っていたが、杞憂に終わったようだ。

「ちょっと事情があって、あの人を今晩泊めることになったんだけど…いいかな?」

「…まあ、それはいいけど、何があったんだい?」

 訳も分からない男は、チラっとこちらを一瞥してから、また彼女の方へ向き直った。

「それがね……」

 囲炉裏を囲むように座った夫相手に、女は夕食の支度を続けながら、経緯を話した。

「なるほど。それは、申し訳ないことをしました。怪我が無くて、何よりです」

「普段から、少々やんちゃで手を焼いていまして…。今後、同じようなことを起こさないように重々言い聞かせますので、何卒ご容赦願います」

 土間と対面にある奥側に座って訳を聞いた男からは、深々と頭を下げられて、誠実に謝罪の言葉を述べられた。

「その代わり、こうしてお邪魔させて頂いてるわけですから、どうか頭を上げて下さい」

「そう言ってもらえると、こちらとしてもありがたい。ささっ、どうぞ。今日は存分に召し上がって下され」

「ええ。では、お言葉に甘えて。心行くまで、堪能させてもらいましょう」

「ああ、もう。是非是非」

 話をしているうちに出来上がった料理が鍋ごと運ばれ、囲炉裏に掛けられていたので、それをたっぷりとよそったお椀を子供の隣に座った女から手渡される。

 多少の肉と、それを覆うたくさんの野菜が入ったごった煮は、どこの村へ行ってもありつけそうな田舎料理だが、その地方によって味付けや食材も変わってくるという。

 育ち盛りの少年からすれば、野菜ばかりではなくて、もっと肉が欲しいと少々不満を抱きそうなものだが、満足に飯が食えるだけマシなことだ。

 熱々の鍋料理を一口食べただけで複雑に混じり合う味がして、多少は手の込んだ物を久しぶりに食べたと実感できる。

 一人旅で、野良の獣というかモンスターを狩って食料を現地調達し、掻っ捌いて焼くだけというシンプルな男料理を続けていると、こういった家庭料理はどこかの町に行かないと食べることも無い。

 故郷の味なんてものも知らない俺からすれば、尚更縁が遠いようにも思える。

「どうです、味の方は?田舎料理は、舌に合わなかったりしませんか?」

「いえ、美味しく頂いてます」

「良かったです。お口に合ったみたいで」

 優先的に肉を貰ってしまったばかりに、自分の分が減って不服そうな子供の隣で、女はホッと胸を撫で下ろしていた。

「いや、実はこう見えてなかなか料理の腕が良いものでして、おかげで私も毎日美味しいご飯にありつけているわけですわ」

「パパったら、もう…恥ずかしいじゃないですか」

「はっはっは」

 和気藹々と家族の団欒を過ごす中、彼も農家として日頃畑仕事をしていることなど、どうでもいい情報を聞かされ続けた。

 こちらにも、色々と質問が飛び交ってきたが、適当にホラを吹いて誤魔化し、沸々と湧き上がる感情を煮えたぎらせていた。

「いやぁ…。今日も美味かったなぁ」

「お粗末様でした」

 綺麗に鍋の中がすっからかんになるまで食べ終えてしまうと、食後の余韻に浸って、男と少年は伸び伸びと寛いでいた。

 お世辞抜きで、食えたものだった料理は前菜としてはなかなかのものだったが、それも腹八分目に留めていたので、そろそろ主菜を頂きたいところだ。

「さて、それじゃあ…今度はそこの坊主に、俺から勉強を教えてやろう」

「おぉ、それはありがたい」

「勉強?やだよ!」

「まあまあ、そうすぐに拒否するもんじゃないぞ、坊主」

 そういうと、子供の隣にいた女の背後へ静かに移動する。

「ん?私、お邪魔でしたら、退きますけど」

「いや、そのままでいい」

「はぁ…?」

 一体、何が始まるのかと疑問に思う女の着物に、首元からそっと手を掛ける。

「え?あ、あの…困ります!」

 そのまま下ろそうとすれば、見ず知らずの男にいきなり肌を晒されそうになった女は、当然抵抗する意思を見せた。

 しかし、その耳元でそっと悪魔が囁く。

「まさか、俺が一宿一飯の恩くらいで、満足するとでも思ったか?…子供の代わりに、なんでもするって言っただろ?」

「…は、はひぃっ!」

 着物の上から、一度がっちりと鷲掴んで強めに揉みしだけば、快い返事と共にビクンと身を震わせた。

 それだけで抵抗を忘れた女の着物をはだけさせると、改めて露わになった女ならではの膨らみに手を伸ばす。

 背中から腕を回して、彼女の腕ごと縛り上げるような格好で、厚かましくもそれを揉み始めれば、たわわに実った果実が手に収まる。

 手に馴染む大きさの果実は、一児の母とは思えないほど肌艶があり、張りもある為、なかなか揉みごたえがあった。

「お、おい!何してるんだ!?」

 いきなり、自分の妻が目の前で他の男の好きにされていることに腹を立て、男は怒鳴り散らした。

 それは、至極当然の反応でもあったが、一概に俺が悪いわけでもあるまい。

「ろくに躾もできない親が、子供に代わって責任を取る為に、なんでもするというのだから、こうして責任を取らせてやっているだけだろう?」

「だがっ…それは、いくらなんでも…っ!」

 立ち上がって、強制的に止めに入ろうという寸前のところで踏み止まっている男は、固く拳を握っていた。

「お前は、この女の気持ちや覚悟を台無しにするつもりか?」

「ぐっ…ぬぅっ!」

 身体に力が入って、全身に筋が浮き立つほど強張っている男に反し、この女の肢体は女らしい柔らかなものだ。

「んっ…、んぅ……」

 男が簡単に収まりきらない間も、手の中で女を弄び、煩悶する表情を見て嘲笑っていた。

「やめろというのなら、この坊主をここで殺してやっても良いんだぞ」

「くっ…。なんて奴だ…っ!」

 何の臆面もなく伝えれば、さすがの男も子供の命を引き合いに出されてしまったことで、悪態を吐きながら渋々引き下がって、なんとか一度怒りを抑えようとしていた。

 しかし、歯を食いしばって耐えている姿を見る限り、本当にあと一歩というところで堪えている様子だった。

「そうだ、それでいい。二人とも、この女をよく見ておけ」

「きゃぁっ!ダメ、そこは…っ!」

 帯の下側も着物を左右に避けてはだけさせてしまうと、本人と同じく僅かばかりの抵抗を見せる一枚の布切れを取っ払い、母親の真の姿を子供にまざまざと見せつけた。

「ほら、よぉく見るんだ。これが、女ってものだとな」

「いやぁ…っ!!」

「ちゃんと脚開け」

 もはや、隠し様が無いように脚を下品に開いて座らせれば、嫌でも女というものがよく見える。

「ごくり…。すげぇ…、初めて見た……。どうなってんの、これ」

 怒りに震える父親を尻目に、息子の前で肌を晒すことに困惑しつつも女を意識させる母親へ、少年は釘付けになっていた。

「こうすれば、もっとよく見えるだろう。お前も、ここから生まれて来たんだぞ」

 あれだけ拭い切れなかった俺への敵意も忘れて、初めて見る女の恥部に興味津々で勉強熱心な門下生の為に、ピッチリと閉じていた口をくぱぁと指で広げてみせる。

「うわぁ…、何だこれ…。すっげぇ…ヒクヒクしてる…」

 訳も分からず、本能のままに目を奪われている少年だが、彼も男だ。

 きっと無意識だろうが、その手は自身の股間に伸びていた。

「ダメっ…見ないで…ぇ、んんぁぁっ!」

 せっかく、子供の勉強意欲が高まってきていたところに、水を差すような悪い母親の中へ指を突き入れた。

 指に伝わる感触は、この女に関わらず、どの女でも似たようなもので、まだあまり湿り気も感じないが問題ない。

 中指だけでなく、人差し指まで追加で入れてしまうと、そのまま彼女の中をしつこく掻き回し、さらに親指を使って、近くにあった恥ずかしがり屋の突起も撫でていく。

 もちろん、その間も母性の象徴である膨らみを揉みしだくのも忘れてはいない。

「んぁっ、あっ、あっ…あぁんっ!」

 彼女の女という女の部分を余すことなく弄り倒せば、次第に息を荒くして、然程時間も掛からないうちに、雌汁を溢れさせた。

「はぁ…はぁ…っ…っっ…」

 聞きなれない声を上げて普段と違う表情を見せる母親から目を離せなかった少年は、瞬きも忘れて目を見開き、瞳孔も開いているようだったが、それよりもむずむずと股間に違和感を抱き、忙しなく脚を擦り合わせて、鼻息荒くしていた。

「そろそろ、いいか」

「はぁ……あぁ…」

 その言葉を聞いて脱力した女の安堵の息を聞きながら、彼女の腰を上げさせると、今度は俺の身体を擦り付けた。

「えっ…、うそ…。噓でしょ…それだけは…ダメっ、ダメぇっ!」

「そんなに拒絶しなくても良いだろう?いつも、そこの男としてることをするだけじゃないか…なぁ?」

「だって、子供の前ですよ…。それに、パパ以外の男の人を受け入れるだなんて…っ、あっ、あぁぁんぅっっ!!」

 身に覚えのある熱くて硬いモノを感じて、これまでに無いほど危機感を覚えた女の身体は、無意識に逃れようとしたみたいだが、獲物を目の前にして逃すほど、俺は甘くない。

 彼女の身体を引き戻し、無理矢理ズブリと押し入れると、そのまま腰を落とさせた。

 そして、さらに彼女の脚を広げさせたまま抱えることで、彼らにもその模様がハッキリとわかるようにしつつ、獲物の逃亡を防ぐ。

「ははっ。どうだ、坊主?よく見えるだろう」

「入っちゃった…」

 好奇心旺盛で無邪気な少年は、目の前で繰り広げられている出来事を、あるがまま口にして、呆気に取られていた。

 俺としても、思った以上にすんなりと迎え入れられて、温かな歓迎を受けたことは嬉しい限りだったが、そう思う者ばかりではなかった。

「ダメ、抜いてぇ…。私には、夫が……。パパ…」

「このぉぉっ!いい加減にしろおぉぉっ!!」

 あまりにも行き過ぎた行いに直面し、切ない顔で夫へ助けを求めてしまったことで、ついに男も怒りが爆発したのだろう。

 いざ、目の前で自分の妻が他の男とまぐわう瞬間を目の当たりにしてしまった男は、冷静ではいられなくなって、近くにあった俺の刀を手に取り、すかさず自分の妻の身体を弄ぶ無法者に斬りかかる。

 その様子をしかとみていた俺は、自分の得物を取られてしまったことを知り、防ぐ手立ても無ければ、反撃のしようも無いことを悟る。

 愚かな家族の夫ながら、怒りに我を忘れていたであろう咄嗟の判断としては、なかなか良い策だ。

 こうなれば、せめてその斬られてしまう瞬間まで快楽を貪ってやろうと、開き直って彼女の身体へ腰を突き上げた。

「んあぁぁっっ!!」

「があああぁぁぁっっ!!!」

 甘美に慄く彼女の嬌声と共に、醜い悲鳴が上がり、一人の男が身体を斬り込まれて倒れた。

「きゃぁっ!!え…えぇ?ど、どうなってるの!?」

 夫以外の男を受け入れたままの女が、倒れた男を見て、さらに悲鳴を上げた。

 それもそのはず、夫の活躍でようやく解放されるかと思いきや、倒れていたのは、斬りかかったはずの夫だったからだ。

「悪くない手だったが、相手が悪かったな」

「え…?んぁ…んぅ…ど、どういうこと?」

 律動を続けながら、冥途の土産とばかりに、時折喘ぎ声を漏らしている理解の及ばない女へ簡単に説明を始める。

「あの刀は、百鬼夜攻ひゃっきやこうといわれている妖刀だ。俺のような者にしか扱えない代物で、そうでない者が使えば、あの通りさ」

「妖刀…?んっ、んぁ…でも、そんな、あっ…ことって…ぇっ…」

 彼女が、不思議に思うのも無理はない。けれども、実際に横たわる男は、俺を斬った通りに身体が引き裂かれていた。

 その受け入れがたい事実を信じてしまいそうな中、少年は初めて見る男女の営みに興味津々で、父親が倒れてもそれどころではなかった。

「パパぁ…、あっ、あぅんっ…。起きてっ、ねぇっ…起きてぇっ…」

「くくくっ…大丈夫。そこに転がってる男のことなんて、忘れさせてやるよ」

「あぁんっ…!うそぉ…っ、あっ、ダメぇ…っ、そんなに激しくされたら…あっ、ぁ、あんぅぅっ!!」

 もはや、倒れた男のことを気にしているのは、せいぜい元妻である女くらいだったが、それも自分の身に起きる感覚に少しずつ支配されていくと、自分から腰を振って男を求めるようになっていった。

「そう言いながら、自分でも腰を動かしているのに気づいてないのか?この淫乱女め」

「あはんっ、ぅんっ、んんぅっ、うそ…っ。そ、そんなこと…ない、ですぅぅんっ!!」

「へぇ…。それなら、俺が動いてやるしかないな」

 興が乗ってきたところで、呆けている少年共々、男を咥えて離さない女を押し倒し、動きやすくなったことでさらに腰を振って、彼女の身体を貪る。

「あっ、ぁっ、あっ、あっ、あっ、…あぁんぅっ!!」

 いつぞやの冒険者の女と違って、一度出産を終えている所為か、そこまで締まりが良くない身体は、乱暴に突き入れても受け止めてくれるような包容力があった。

 おかげで、律動が捗って留まることを知らない。

「ママ…」

「あんっ。アーニー、何を…んんぅっ!」

 目の前でぶるんぶるん揺れる母性を前に、赤子の心を取り戻し、同時に母親で性を目覚めさせた少年は、無意識に手を伸ばして吸い付いた。

「あっ、あぁっ…すごい…気持ちいいわ…。上手よ、アーニー」

 歪んだ性癖に目覚めた息子も息子なら、その母親も母親で、もはや母親然とした顔を忘れ、女の顔から表情が戻らない女は、自分の息子に自らの身体を使って性教育を施す始末。

 もう、既に後ろで倒れている旦那のことなど、忘れてしまったかのようだった。

 いや、もしかしたら、忘れたいが為に快感に身を委ねて、息子と共に慰め合っているのかもしれない。

 だが、正直そんなことはどうでもいい。滑稽な姿を晒す親子を肴に、俺の身体と心が満たされれば、それでいい。

「あぁっ、気持ちイイっ…!どっちも、気持ちイイのぉっ…!」

「あぁぁっ、ダメェっ!こんなに気持ち良くされたら…、あっ、アッ!ああぁぁぁっ!…ぁ、あぁ…んふぅ……」

「何勝手に一人で満足して、終わった気になってるんだ?この雌が。まだ俺が満足してないだろう?」

「は、はひぃっ!あっ、んぁっ、…でも、今…イっっ、んあぁっ!あっ、あっ、あんぅぅっ!!」

 彼女が絶頂するのも気にせず、壊してしまっても構わない勢いで、激しく律動を繰り返し、やがて未亡人となった女の元へ溢れんばかりの情欲を注いだ。

「はぁっ…、はぁっ…、はぁ…はぁぁ……」

 激しい憤りを全てその身で受け止めた彼女は、だらしない顔を浮かべて脱力し、自分の息子にもたれかかった。

 もう今の彼女には、反抗も疑念の意も見受けられない。

「呆けるのもいいが、終わった後は、男を労ってお掃除するものだ」

「は、はい…。はぁ…、あぁ…、んっ、ちゅっ、ちゅぅ…」

 自分なりの意見を吹き込んだだけだが、その身体と同じように男をすんなり受け入れた彼女は、自分の身体に入っていた男を自らの舌や口で綺麗に掃除し始める。

 少しくすぐったい感覚を覚えながら、一度発散したことで、鮮明になった頭は目の前の女を見据えていた。

 これから先、夫を亡くしたこの女が、どう生きるのかは分からない。

 女手一つで息子を育てるのか、あるいは早々に次の男を見つけて養ってもらうのか。どうなろうと知ったことではないが、ただ一つ言えることがある。

 もうこの親子は、お互いを性の対象として見てしまうことを否めないということだ。

 きっと、母親であるこの女が、しっかり手ほどきをして、この幼い少年を立派な男に育ててくれることだろう。

「さて、一度きりなんて無粋なことは言わず、また愉しませてもらおうか」

「あっ…、はい。お願いします…」

 今も未来も滑稽な姿を浮かべさせる女をその場に押し倒し、再び欲望をぶつけるのだった。


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