表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。

短編集

多人数参加のVRMMOだけど、一人で遊んでもいいんじゃない?

「さーて、やってきますか」

 やってきたVR空間でそう呟き、動き出していく。

 日常から切り離された仮想空間。

 そこは、一人で遊ぶにはうってつけだった。



 もともとは、多人数参加型ゲームだった。

 いわゆる、MMO。

 しかも、VRという画期的だった機能を用いた。

 その為、当初は多くの者達が参加し、多人数で共に行動する事も多かった。



 なのだが。

 時の流れはそれを徐々に否定していった。



 機能として、今も多人数参加というのは変わらない。

 世界各国、ネットワークが繋がるところからいつでも接続出来る。

 だが、参加者が個別に出来る機能設定で、それらはほぼ有名無実化していた。



 今参加してきた男もそうだ。

 世界中から様々な人が集まってくるVR空間。

 そこで彼は単独で行動している。

 誰とも組まずに。



 これはこの空間で仲間が作れなかったからではない。

 それも理由の一つであるのだが。

 より大きな理由はこれになる。

『仲間を作りたくない』



 人間同士の付き合いなど、現実でいくらでも存在している。

 そんな煩わしさから逃げてきてる者達も多い。

 そうした者達にとって、ゲームの中でまで他人と接するのは苦痛でしかなかった。

 このゲームは、そうした者達にとって画期的だった。



 このゲーム、他者との接点を無くす事が出来る。

 設定で、他のプレイヤーとの接点を無くすように設定すればいい。

 それだけで、他のプレイヤーと接する事がなくなる。

 ミュートやブロックといった機能の一種である。



 多人数参加型ゲームの利点を潰すようなものではある。

 その為、当初はこの機能の意味を疑う者達もいた。

 迷惑プレイヤーを切り離すのには便利だとは言われていたが。



 しかし、これがより多くのプレイヤーを取り込む事になる。

 他者との接点を求めてない。

 しかし、VRゲームは遊びたいという者達を。



 ここに大きな誤解があった。

 多人数参加型ゲームを遊ぶ側や運営する側が抱いていた。

 それを言葉にするならこうなるだろう。

『誰もが他の誰かとの接点を求めてる』



 だが、世の中はそういった者達だけがいるわけではない。

 遊びたいけど、他の者がいるのがイヤだ、という者だっている。

 しかし、そうした者達は常に排除され続けていた。

 たいていのネットワーク型ゲームが多人数参加による、他者との協力を強制するものだったからだ。



 だいたいのゲームが、他人との接点を作る事になる。

 参加者同士で協力して事にあたるように。

 クエスト、シナリオ、ミッションという、ゲーム内の目標なども多人数参加を前提に作られていた。

 その為、個人で遊べる要素がほとんどなかった。



 これはネットワークを前提に考えた結果だったのだろう。

 多くの人間が参加する。

 多くの人々と接する場所である。

 そういう思い込みがネットワークにはあったのかもしれない。

 だが、実際にはそうではない。



 確かにVRゲームを楽しむために、多人数が集まってくる空間にやってくる者はいる。

 しかし、その全てが自分以外の誰かとの接点を求めてるわけではない。

 純粋にゲームだけを楽しみに来てる者もいる。

 装備を調え、怪物を倒し、経験値をつんでレベルを上げる。

 希少品を求めて探索を繰り返す。

 そういう事『だけ』を求めてるものもいるのだ。



 しかし、複数人数での行動を前提とした数々のゲームではそれが出来ない。

 常に他者との協力が求められた。

 そうでないと、強敵と戦うクエスト・シナリオ・ミッションを攻略出来ない。

 それはそれで仕方ないと大半のものは割り切っていた。

「エンド・コンテンツだっけ?

 そういうのはやりたい人がやればいいから」

 しかし、多人数参加が前提のクエスト・シナリオ・ミッションしかない。

 この事実に不満を抱く者も当然多かった。



 そういった者達にとって、このゲームは最高の選択になった。

 ミュートやブロック機能を使えば、他の者との接触は起こらない。

 それだけでもありがたいものだった。



 クエスト・シナリオ・ミッションも、幾らか対処は出来た。

 これらの自作が可能だったからだ。

 製作・運営側が用意はしなかったが。

 単独で参加出来るものが参加者によって用意されていった。

 それが単独で遊びたがってる者達に歓迎された。



 単独行動支援の為のNPCも追加された。

 特定のクエスト・シナリオ・ミッションにだけ参加する者達だ。

 これらを用いれば、一人でも多人数参加が必要なものに参加が出来る。

 これらは既製のものに付け加えられもした。



 こうして単独専用のクエスト・シナリオ・ミッションが増えていく。

 これらにより、単独参加を望む者達も遊べるようになった。

 おまけとして、単独行動でも経験値などを稼げるようにもなった。

 共有されてるゲーム空間で、自動的に再生してくる敵を取り合う必要もなくなった。

 より円滑にゲームを楽しめるようになっていった。



 こうして世にも珍しい、単独で遊べる多人数参加型のネットワークが出来上がっていった。



 他の者との接点を拒む者達がここに駆け込み始めていった。

 VRゲームは遊びたい、しかし他の人はいらない。

 そんな者達にとって、唯一遊べる場所となっていった。



 そういった動きへの非難も発生した。

 それらは暴言や罵倒というべきものであった。

「ネットワークの意味を崩してる」

「多人数参加の意義を失ってる」

 こうした声があがった。

 だが、それは、

「単独で遊ぶのがそんなに悪いのか」

「ソロゲーマーの排斥か」

という事にも繋がる。



 結局、運営側は単独で遊ぶ環境を保護していった。

 それにより、今までネットワークゲームで遊べなかった者達を取り込む事が出来るからだ。

 その分だけ、実入りも増えていく。

 それに、単独で遊んでいる者が増えたとしてもだ。

 それが複数で協力して遊ぶ者達を排斥するわけではない。



 自然と棲み分けが進んでいった。

 単独で遊びたい者も、協力して遊びたい者も、接点が無いのだから争いようがない。

 むしろ、下手に混合するよりも、騒動は少ない。



 争いは、同じレベルで発生するのではない。

 接点があるところで発生する。



 ならば、接触がなければ争いなど生まれようがない。



 そんな世界で男は、一人で遊んでいく。

 今日もどこかの誰かが作成してくれた単独用のクエストをこなしていく。

 誰かが用意してくれたシナリオを楽しんでいく。

 挑戦するべきミッションに挑んでいく。

 AI操作による、人間らしい対応をするNPCと共に。



「やっぱ、遊ぶなら一人が最高だ」

 煩わしい他者とのやりとりもない。

 作戦や報酬の分配でもめる事も無い。

 自分勝手な行動に頭を抱える必要もない。

 現実にも存在する、煩わしいそうした騒動を振り切る事が出来る。



 VRMMO。

 仮想空間没入型多人数参加ゲーム。

 それは今も多人数の参加が可能な遊びだ。



 しかし、他人との接触を強要・強制される事は無い。



 遊びたい者が一人で遊べるような場所。

 それがここにある。



 それを多くの者達が楽しんでいた。

 鬱陶しい他人という存在に悩む事もなく。

 世俗の煩わしさから解放されて。

 他人との接点は必要。

 コミュニケーションは大事。



 そんな考えに、

「本当にそうなの?」

と思っているもので。



 なのでそれっぽい話を書いてみようと思っていた。



***************************



活動と生活と執筆支援をお願い↓



『執筆時間を買うために/BOOTHでのダウンロード販売』

https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/483314244.html

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
 活動、および生活支援をしてくれるとありがたい。
 書くのに専念出来るようになる↓
『執筆時間を買うために/BOOTHでのダウンロード販売』
https://rnowhj2anwpq4wa.seesaa.net/article/483314244.html
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ