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魔界でも高級品

「まだ会っていないのかな。」


教官からは貴様は槍の訓練は休みだが、怪我をしているのであれば、応急救命の処置の実験台にちょうど良いと言われた。


今現在、ブレイズ含め他の訓練兵達に、包帯で縛られては解かれ、縛られては解かれ、と実験体にされ、たまに処置の善し悪しを意見している。


このままじゃ、変な趣味に目覚める。


…とかではない。


それしにしても、朝起きて、顔を洗って水面に写る自分の顔が他人なのに驚く。


こんなことをしているのはそうそういないだろ。


現実なのか、と今日は何度、思ったのだろうか。


「誰に?」


そうブレイズに問われ、我に帰る。


「あっ、独り言、独り言。痛っ、結び目を傷口の上にするのやめてくれる。締められると正直痛い。」


「悪い、悪い、こういう細かい作業が苦手だからさぁ、こうかい?」


「うん、だいぶ、楽。ありがとう…、そう言えば、つかぬことを聞きますが。」


「なんだい、改まって。」


「…、やっぱり、いいです。」


「なんだよ、気になるだろ、言えよ。」


「知ってたらでいいけど、俺の初恋の人、知ってる?」


「…ケント、昨日からおかしいけど、本当に大丈夫かい?」


おでこに手を当てられる。


「熱は引いた、その手をどけろ」


「当然知らないけど、なんだい?ガールフレンドの一人でも欲しくなったのかい?まあ、実戦になれば死ぬかもしれないしな。昨日の件も有るしね。」


「…。」


「悪いことじゃない。普通のことさ…、今度、街にでも行ってみるか。まあ、とりあえず、傷が治ってからだね。」


「…そうだな。」


けが人という言葉がこの世界にはないようだ。


結局、へとへとになるまで、痛めていない箇所の筋肉を主に鍛える訓練をさせられ、座学含め戦術に関しても叩き込まれた。


そして、夜になった。


星と月が輝くころ、あいつがまた部屋にあらわれた。


なぜか、網の目状の襞に覆われた緑色の果実が入った籠を持っている。


「間違った契約をし、ずいばぜんでじだ。」


「…。」


泣いている。昨日と態度がぜんぜん違う。


「その冷たい目をやめて頂けると非常に助かります。」


「…。」


「お詫びにコレをどうぞ、食べ頃を持ってきました。」


「…メロン?盗んだのか?」


「違いますよ、魔界で買ってきましたよ。」


「へぇ~、気が利くね、ありがとう。…でも食べて大丈夫なヤツなの?」


「大丈夫、大丈夫、冷やしてきたので早速食べて下さいね。」


「…やっぱり、いいや、気持ちだけで。」


「そう言わずに、準備しますし。」


「…怪しい。」


「な、なんのことでしょうか。魔界産だからってバカにしないで下さい!あっちでだってメロンは高級品なんだから!!」


「…。」


「ホントですよ。もう、美味し過ぎていつの間にか食べ終わってるぐらいなんですから。」


「へぇ~、興味湧いてきた。じゃあ、頂くよ。」


「まあ、お詫びとしては足らないかも知れませんが、切り分けましたんでどうぞ。」


「まあまあ、サキさんも気軽に食べれるものじゃないでしょ、お先にどうぞ。」


「そんな、頂けませんよ。」


やけにしおらしい、そして怪しい。


「まあまあまあ…、サキさんが食べてくれたら、自分も食べますよ。」


「ホントですか!それ契約ですからね!」


目が輝いた気がする、だいぶ怪しい。


「食べる食べる…(サキに聞こえない小声で)身体に害がなければ」


「じゃあ、頂きます。」


「どうぞ、どうぞ。」


無邪気な顔で悪魔が八等分に切り分けたメロンを持ち上げパクつく。


「美味しい、甘ぁ~い、美味しい、おいしぃ………、くうぅ」


一口齧っては甘い、美味いと連呼していた女が突然寝た。


「あれ?サキさん、…って、食べてすぐ寝た!?」


「………、はっ!?」


「そして、起きた。」


「なにこれ、なんで、忘却メロン食べてるの私!」


「ほう、成る程…、いや、悪魔の知り合いがね、置いていったんだよ。味は良いからって。」


ウソではない、ウソでは。


「味が良くても、コレやばいヤツでしょ、2、3日前の記憶がなくなるってヤツだから、ってか、あんた誰?」


「えっ?」


なんだそれ、思わず呆れた顔になってしまう。


「私、あんたに話をしてるんだけど…、もしかして契約者?」


「なぜそう思うんですか?」


「このメロンは交通事故を起こした側が持ってくる定番アイテムなのよねぇ、記憶を消して、その間の記憶を書き換えて、事故をなかったことにするって…はっ!?」


「どうしました?」


「思い出した。ってか、あんた契約したんだからメロン食べなさいよ。」


「なんで思い出す。」


「記憶を書き換えてないからよ、じゃない!!メロン、早く!!」


「なんでだよ!ってかエライ強気だな。」


「ふん、契約は絶対なんだから、強制的にだって食べさせられるのよ。」


彼女から黒いもやのようなものが立ち上がった。


『契約に従いなさい。』


脳に直接響くような言葉が靄と共に襲ってくる。手で払っても、今更ながら耳を塞いでもダメだった。靄に包まれた。


「うっ、なんだ!?身体が勝手に動く、止めろ!」


「やめなぁ~い。」


「こんな毒みたいもん喰えるか!」


「大丈夫、大丈夫、寧ろ美味しすぎて、病みつきなるって。」


「ほぉ~、成る程ねぇ~。」


彼女の言葉と共に靄が晴れる。


「…あれ?なんで、え、え、えぇ?すいませぇ~ん。靄の人、仕事して、なんで制裁が効かないのよ。」


「だって病んじゃうって言ったからね。」


「そ、そんなの関係ないでしょ、契約には含まれてないもん。」


子供っぽく言う。そんなの…ちょっとしか、かわいくない。


「小声でちょっと付け足しといて良かったぁ、危なかったぁ。」


わざとらしく汗をかくふりをした。


「はぁ??悪魔騙すとか、意味分かんない!」


「ほぉ~、それが契約自体をなかったことにするヤツの態度かな。」


彼女を睨みつけていたら、いつの間にか黒い靄に包まれていた。


…なんか、最近見たなこれ?ということは


『契約に従い、俺(ケント爺)の初恋の人を教えろ!』


…自分で言っててなさけない台詞だと思った。


だが靄の人は仕事をした。


「ウソッ!」


靄が彼女を包む。


「苦しい、ちょっと待ってよ、調べるから、う、うぅ~んと、うんと、わ、分かった。」


すんごい考えてる。そして、すんごい嘘くさい。


「ケント君の記憶を呼び出しから、出てきたから!!名前はマール…らしい。」


「マール。」


その言葉を聞いたとたん、彼女の周りの靄が晴れた。

言ったことはホントみたい。


「思い出した?」


やけににやにやしながら言ってきた。


「全然。」


「あれ?拾ったペットに同じ名前を付けたという記憶があるけど。」


「飼ってない。」


「何を?」


「ペット。」


というか、なぜペットと同じにしたケント爺。


「…じゃあ、まだ会ってないんじゃないの?」


「いつ会う?」


「靄は止めて、えっとねぇ~、この街であるお祭りの時みたい。」


「成る程、ありがとう。後はブレイズに聞くよ。」


「…。」


サキの顔が赤いなぜだ?変なこと言ったかな?


「どうした?」


「別になんでもないもん。」


なぜまた子供みたいな言い方をする。


「じゃあ、もう来ないから!」


「そうか、でも来てくれると凄く助かる。」


最悪、契約で呼び出せば良いし。


「…、暇な時だったら手伝って上げても良いけどね。じゃ!」


早口でまくし立てるように言って、彼女は勝手に消えた。


「祭りか…。」

面白いと思って頂けたら、嬉しいです。

暫くはアップ出来そうです。


道 バターを宜しくお願いします。


他にも作品をアップしています。

作者ページを見て頂くと、なんと!?すぐに見つかります(笑

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