敬語禁止part2
町の門番に手形を見せ、ココは傭兵の仲間だと説明して、軽く問答し、何とか町に入れた。
ちなみに鷲は世話を頼んでいる人がいるとココには言い訳し、何処かに飛び去らせた…、後で戻ってくる黒猫にはたっぷりと餌をやらないとたぶん機嫌が悪いだろう。
マセナ国での常宿に部屋を2部屋取り、旅の荷物を下ろして、将軍への報告のため、身だしなみを整えていると部屋の扉がノックされ、返事をする。
「今、(部屋)入れる?」
ノックの主はココであった。
「難しいですね。着替え中です。なんですか?」
「部屋、一つで良かったのに」
「そういう訳にはいきませんよ。」
「だってこの前は同じ部屋だったでしょ?」
「あの時は空き部屋もなかったでしょ?この宿は部屋が空いている訳だし…、後で前の宿代は改めて返します。」
「それは別に良いんだけど…、それじゃあ、後で、今後についても少し話ししたいし、着替えたらまた来る。後、敬語禁止!!」
「分かりま…分かった。」
着替えを終えた後、しばらくし扉がノックされた。
「どうぞ。開いてるよ。」
「…。」
扉が開き、部屋に入ってきたのは
「帰還し、疲労しているのは分かるが、気が弛み過ぎているのではないか…貴様。」
ドレッドヘヤーに切れ長な目をした騎士然とした女将軍であった。
「っつ!!!…はっ申し訳ありません。将軍殿!!!」
立ち上がり、思わず敬礼をする。
「報告に関しては、第一報を暗号書にて偵察部隊に渡し、帰還後も門番に報告書を提出、身を整え、改めて、副官殿に対面で報告させて頂く予定でありました。ご足頂き、すいません。」
「それは良い。考え事もあった故、城壁に待機する兵士達への労いでこの宿の近くには来ていた。」
「はっ!!」
「それで…、湖畔に敵が集結しているという話は本当か?」
「現地にて協力者を見つけ、得た情報です。物資の動きからも少なくとも近々侵攻がある可能性はかなり高いと思われます。」
「そうか…」
「…。」
しばしの沈黙の後、将軍が口を開いた瞬間に扉がノックされた。
「…。」
タイミングが悪い。
「ケ~ン~ト。開けてぇ~」
「…。」
なぜこんな時にそんな変な声を出すの。
「すいません。少々お待ちを…。」
「…。」
将軍が冷ややかな目でこちらを見据えている。
とりあえず扉まで向かい、少し扉を開ける。
「いたいた。見てみて、じゃあ~ん。」
ばっと手を広げ、胸を張るココ。華美ではないが上品な感じのする服を着ている。
「…どうしたの?」
「あれ?反応薄いなぁ…。新天地だから仕事着を新調してみたの、どう似合ってる?」
「…。」
少しを部屋の中の人物に視線をやる。
視線の先の人物は相変わらず冷ややか目でこちらを見ている。
「どう?どう?感想は?ケント!!」
強制的にある言葉を引き出そうとするココ。
「…後でもいいですか?取り敢えず部屋に戻ってくれませんか?…お願いします。」
必死に懇願したが
「ケント!!感想は?」
聞こえているはずなのに無視をしてくるココ。
梃子でもある言葉を引き出すまでは動かない様子のココに折れ、小さい声で答えた。
「…似合ってますよ。」
「聞こえない!後、似合ってるだけじゃないよね、感想って。」
聞こえているはずなのに無視して、ずうずうしく美辞麗句を足せと言ってくるココ。
「に、似合っていますよ。」
「敬語!?」
「似合っている。とても綺麗だ。」
「ふふふっ、ありが・・」
「何をやっている貴様!!!」
やっと満足したのか笑顔で答えるココの言葉を明らかに怒気を含む声で将軍が遮った。
「将軍、違うんです!!これには事情がありまして。」
「私が国の存亡に関して、頭を悩ましているころ、傭兵様は女と戯れるのに忙しかったと見える。」
「いえいえ、そんなあ、ストライテン将軍殿。分かっては頂けないかもしれませんが、これも仕事の一部ですよ。」
「そうか、なら私に代わって、ましな提案をひねり出してみろ!!!いま考えると、真面目に任務をしていたのかも疑わしいのだが。」
「いえ、彼女が今回の協力者でして、すいません。子細は彼女から説明させようと思っておりました。」
「将軍??」
ドアを開け放ち、呆気に取られた表情をしているココをやや強引に部屋に連れ込み、子供を諭すような表情でココに語りかける。
「ココさん。敵軍が湖畔に拠点を置くという情報の説明をお願いします。」
「…了解です。はじめに・・・」
「なるほど…、それにしてもなぜ彼女をつれてきたのだ傭兵?そのまま町に滞在していた方が状況的には良いと思うが…。」
「そうなのですが、現地で私がトラブルに巻き込まれ、彼女も前の仕事を辞めてしまっており、町に居づらい状況になりました。町の外への連絡手段も私が居なくなれば当然なくなる為、連れてきました。補足ですが、彼女は中々の歌い手であります。慰安の一環でその腕前を披露するのも良いかと思われます。」
その言葉を聞き、ココはやや目を細めた。そんな姿を女将軍は目に捕らえた後、こちらに目線を向ける。
「そうか、まあ、引き続き、あの町は偵察部隊に監視はさせる。今後の作戦に関しては追って指示を待て…、慰安に関しては、好きにしろ。ちなみにだが傭兵。参考として、貴様に意見があればだが、湖畔での敵の動きに関して、どのような策を考えているのか?」
「やはり打って出るべきかと。」
「意見は変えんか、また少数による嫌がらせか?」
「いいえ、湖畔にて待ち伏せまをします。」
「バカか、貴様。兵力的にはあちらが多勢だと言っているだろうが。無闇に兵力を消耗するのは愚作だ!!」
「そうではありません。策としては・・・」
策の案を説明した後、将軍は「意見としては参考にする。」という言葉を残し、帰って行った。
将軍と策に関して話している間、ココは黙っていた。
「どうしたんで…、どうしたココ?大人しいな。」
「…ねえ、ケント、あの人とはどういう関係?」
「?、上司と部下だろ?ちょっと微妙だが…。」
ココの目が俺の目を見てくる。
「そうだよね。とりあえずは、用事は終わった感じ?」
「ああ、流しの演奏に関しても、なし崩し的に了承も貰ったし、後で酒場の下見でも行くか?早速今日から流しをするのか?」
「まあ、お店の人にも了承を得ないとだけど…、出来ればやりたい。」
「分かった。後で用があると言ってたけど、何だったんだ?流しの件?」
「それもあるけど…、ねえケント?私達って仕事のパートナーよね?」
「ああ。」
「それってあなたの本業も含まれるの?」
「本業というと傭兵家業か?それは考えてないよ。」
「でも…、あなたは私の仕事を手伝ってくれるのよね?それって不公平じゃないの?」
「それは…。」
「ねえ、ケント?私たちって仕事のパートナーよね?」
「はぁ…、強引だなぁ、分かったよ。ただし、戦闘はさせない。あくまで情報収集までだ。いいね?」
「了解。傭兵団団長!!」
「傭兵団って、二人だけだけどな!?」
面白いと思って頂けたら、嬉しいです。
これにて2章も終了です。
そして、今回でストックが枯渇しました。
たっぷり書いてからまたアップする事に致します。
道 バターを宜しくお願いします。
他にも作品をアップしています。
作者ページを見て頂くと、なんと!?すぐに見つかります(笑