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敬語禁止

高鳴る鼓動を抑え、慎重に宿まで歩くとフードの主から声を掛けられた。


「どうしたの!?何があったの!?」


ココだった。


「転んだ、じゃダメかな?後は…、王女様を助けたとか?」


頬を掻きながら答える。


「意味分かんない!!取り敢えず、部屋に案内して!!」


強引に引っ張られ、無理矢理に部屋まで案内させられた。


体力も限界に近かった為、ココに頼んで母親自家製の塗り薬を傷口に付けて貰い、鼻の位置を自分で戻し、痛みに悶えながらも宿に置いていた予備の服になんとか自分で着替えた。


俺を観察した後、彼女は口を開いた。


「何があったの?」


「言いたくありません。」


「なんで?これからはパートナーでしょう?後、敬語も禁止で。」


「…本当にいいんですか?」


「やり直し。」


睨まれる、怖い。


「本当にいいのか?」


「何が?」


ココが笑顔になった。


「俺は一般人にボコボコにされる位、弱いんだぞ。」


「それは困るけど…。」


「だろ?」


「でも…誰にやられたの?一般人って誰?」


「名前は知らん。」


「じゃあ、なんで隠すの?…私の知り合いとか?」


鋭いツッコミに無言になってしまった。


「…。」


「そう…、フラン、ディアス、アリア・・・。」


「違う、そうじゃない。」


「あなたは優しすぎるのよ。バカなんじゃない!?」


「…友達が間違ったことをすると思ったら、止めるのが本当の友情だ。俺はそう思う。」


「でも、それであなたが、ケントが傷つくのは…おかしい。」


「ありがとう。…取り敢えずこの話はやめにしないか。」


早めに話を切り替える。


「?、まあ、ケントがいいなら、いいけど…。」


「じゃあ、ココさん。改めて俺の話を聞く勇気はありますか?あなたの人生を壊す話かもしれません。」


備え付けのイスに座り、ベットに座る彼女に正面から問い掛けた。


「ええ、ケントは何をしているの?」


ベットに座り直して彼女が答えた。


「そうですか…、俺は敵国の傭兵です。」


俺の言葉を聞いて一瞬、目を大きく開いた後、姿勢を正し、やや低い声で彼女は言った。


「そう…、続けて。」


それから、俺がこの町に来た理由を話した。

彼女はただ黙って話を聞いていた。


「…、という訳です。」


「そう。」


「それだけ?もっと動揺するかと思ってました。」


「まあ、いくつか予想はしてたけど…、ねえ。もし私があなたのことを衛兵にバラすと言ったどうするの?」


「こうします。」


立ち上がり、素早く彼女に近付き、彼女の肩を押し、ベットに上半身倒れこませ、反動でベット上に放り出された両手を頭より高い位置で重ねて、片手で抑え込み、もう片方の手で彼女の口元を塞いだ。


「…。」


彼女は驚き、固まっている。しばらくして彼女が俺の目を見つめる。


「どうしますか?」


「ふふひは?」


「?…、うわぁ!?」


彼女が舌で手を舐めてきたため思わず手を離す。


「続きは?」


笑いながら彼女が言う。


「しませんよ。」


「じゃあ、バラす。」


「やめて下さい。」


彼女の隣に仰向けに寝転がる。


「…後悔しますよ。」


彼女はこちらに顔を向け言う。


「失礼な、私はいつも本気よ。後悔なんて言葉は私の辞書にはないわ。」


「凄い自信ですね。」


「そう凄い自信なの。」


「…分かりましたよ。ココ、よろしく。」


上体を起こし、彼女に右手を突き出した。


「ええ、こちらこそ。」


彼女も寝転がったまま右手を突き出し握手をした…しばらくして彼女は繋いだままの腕を引っ張り言った。


「で、続きは?」


腕を引っ張り返して答える。


「しません!!」


マジかという彼女の顔を見たすぐ後に、部屋の扉がノックされた。


「お客さん、料金がお一人分しか頂いておりませんでの、相手様が泊まられるのであれば追加料金を頂かないと。」


手揉みをしている宿の亭主だった。




「昨夜はお楽しみでしたね。」


とふざけたことを言う宿屋の亭主に見送られ、翌朝、宿を後にした。


あの後、ココが家には帰らないというので、追加の宿賃を「代わりに支払うよ。」と気前よく財布を取り出すも…、財布が盗まれたことを思い出し、慌ててココに支払いを頼んだ。


その際、「財布はどうした商人?」という質問に沈黙で返答したことで彼女は察したようで、友人達に対する苛立ちを強めたようだ。窃盗に関してはスマートに黙っておこうとしたのに情けない。


とりあえず町の大通りに向かい、2カ所ある町の出入り口の内、マセナ側ではない門まで向かう。


門に着き、門番に平静を装い、目礼し、門外に出た。


それから、10分程、人がまばらな街道を歩き、周囲を見渡し、街道からそれ、木陰に隠れる。


「追ってはなしかな…、あっ、話して大丈夫ですよ。」


「ふっ…、なんか歩いてるだけでも緊張するわね。」


「ですね。…うん?」


晴れた空に黒い点のようなものが見える。


「なに?…黒い鳥?カラス?」


「いや、鷲だな。」


「鷲?なんかこっち狙ってない?滅茶苦茶に鳴いてない?」


「…滅茶苦茶鳴いてるな。取り敢えず、任せてくれ。」


「に、逃げないの?」


「…。」


案山子のように腕を水平に広げる。


「何するの?どうするのよ!!」


「こうする。…マーーーーール!!」


「えっ!?」


鷲が鳴きながら、腕を狙う。


左腕をがっと掴まれ、クチバシが首を狙う。


「マール、よしよしよし、マール!!」


寄せられた鷲の首をがばっという音が鳴るくらいの勢いで抱き、首を撫でる。


ココが何とも言えない顔で質問してくる。


「すいません。説明してもらえますかね…、マールって誰?」


「あっ、すいません。つい…飼っている鷲です。名前はマールです。」


「そ、そうなんだ。なんか鷲の目が怖い。名前からなんとなくメスみたいだけど?」


「メスですよ。たぶん。」


「そう。…何か威嚇されてる気がするけど気のせい?鷲のことはわからないけど、シャー、シャー言われてるわよね。威嚇する猫みたいに。」


「そうですか?そんな気がしなくもないですね。」


と言いつつ、鷲の口を塞ぐ。


「???」


「まあ、取り敢えずこれで大分安全に帰ることが出来そうですね。」


「そうなの?」


「ええ、コイツには人が居たらその真上辺りで滞空して鳴くように覚えさせましたから、昼間であれば比較的安全に移動出来ますよ。」


「本当なら、凄いね。」


「まあ、期待して下さい。」


その後は、何度か巡回している敵の兵士を避けなが移動し、マセナ国の町に着いたのであった。

面白いと思って頂けたら、嬉しいです。


道 バターを宜しくお願いします。


他にも作品をアップしています。

作者ページを見て頂くと、なんと!?すぐに見つかります(笑

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