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偵察部隊

敵軍は4倍(2万人)の物量差を勝機として、侵攻してきている。


そのため、絶え間ない戦いが開戦前から予想はされていた。


単純にぶつかり合ってはいつかは物量が少ない方が負けるのは必然であり、勝利は描けないと当初から言われている戦争ではあった。


当初の計画で言えば、防御戦を行い、なるべく時間をかせぎ、他国に派遣している自国(マセナ国)の傭兵部隊の帰国を待つことが勝機だと言われている。


だが、個人的な意見で言えば防戦のみなど考えとしてはなかった。


勝利条件は、敵軍の撤退である。


そのためには、いかに敵軍を激しく消耗させるか、撤退するべき要因をいかに発生させるかが重要だ。


要は工夫が必要だ。


敵が100%の力を発揮し易い真正面から挑むのは、被害が大きい。


側面や背面、武器を持っていない戦闘準備時、就寝時等のすぐには身動きや対応が出来ない状況での攻撃が理にかなっている。


ようは敵に関知されにくい少数の部隊による奇襲・ゲリラ戦だ。


この作戦を説明し提案した際、ストラウテン将軍の受けが悪かった。


この国の軍人も傭兵も己の能力に余程の自身と誇りを持っているようで、騎士道精神よろしく、基本的には正面での戦闘を望んでいる。


ただ、前回の崖の交戦のように地形的な優位性をかなぐり捨てる程の精神ではないことは分かっている。


傭兵の登用も、敵の攻勢を防ぎ切る為のものであったようだ。


傭兵である以上、雇い主の意向には従う必要がある。


なので、敵の侵攻の情報を探るために偵察部隊として、敵情を探り、可能であれば敵を撃退しても良いかの許可を得ることとした。


「本当にそんなことが可能なのか?…話半分で聞いておこう。」


と、将軍からは言われたが…。


そして、偵察部隊が組まれた。


その内の1小隊(5名)に配属された。


もともと軍には在籍していた為、軍での行動には慣れてはいた。


偵察の目的は、敵兵の数、装備の状態、士気、侵攻開始時期等の調査である。


ただ、俺の中では調査自体は昨晩、サキから聞いているため既に終わってはいる。


まあ、本当であればだが…。


敵軍の居場所は前回の戦闘で捕虜より確認出来ている。


敵国内の国境付近にある町だ。


この時代の軍隊には補給という概念は乏しく、物資の補給には国民から協力?(強奪)が不可欠だ。

軍が去った村や町は荒らされ立ち直りに大分と時間を要すとは良く聞く話だ。


自国でも横暴な態度の軍が他国の村や町を訪れたら、強奪、略奪、暴行が起きるのは目に見えている。


国内への侵攻をおさえるのは当然と言える。


それはともかく、偵察である。


あらかじめ、偵察地点として、設定していた崖より、単眼鏡をのぞき込んだ。


国境付近だからか、町の周囲には堅牢とは言い難いが木の塀が取り囲んでいる。


また門は見える範囲で物見櫓の状況から2カ所以上あると判断が出来た。


しばらく、ローテーションで観察を続けると、門を開ける機会を数度確認することが出来た。


特に頻度が高いのが2つあった。


一つは兵士達の巡回、もう一つは荷馬車を運ぶ行商人達だ。


そこで、行商人達に接触し、敵兵の人員、装備、士気、指揮官クラスが使用している建物の情報を買い取った。


偵察としてはここまででも十分な成果だろう。


ただ、俺としては、成果が小さい。


そこで行商人に変装しての町への潜入を提案し、志願した。


そして、連絡方法等の調整・相談を行い、俺の提案は採用された。


行商人がそうであるように名目上は酒等を卸す行商人の見習いに扮し、町に潜入した。


ちなみに黒猫も連れてきた。


意外にもあっさりと入れた街の中はものものしい雰囲気ではあるが、酒場は意外と景気が良さそうだ。

酒場の周辺では商売人風の女共が仕事熱心に男を誘う、そんな印象だ。


それからは人付き合いの良さそうな笑顔を張り付け、酒場に注文を取りに行ってはナンパの要領で女も男も隔たりなく声を掛ける。


2年前の祭りでの経験も糧にはなるものだ。


バーテン、ウェイターにチップをはずみ、商売のタネという名目で世間話をし、周りから聞こえる酔っぱらいの話も盗み聞く。

時にはおしゃべりな商売女にちょっとした土産(香水等)を持参し、話を聞きに行く。


そんな中、彼女と出会った。


落ち着いていそうな、あまりしゃべらなさそうな、やや痩せ気味の地味な、そんな印象だ。


日も落ちた頃、酒場でギターを弾き、歌い終えた彼女にチップを渡したのが初めての出会いだった。


「良い曲ですね。これは気持ちです。」


「どうも。」


「演奏も素晴らしい。また聞かせてもらえると嬉しいです。ここではたまに弾かれていたりするんですか?」


「週に2回程度、弾いてます。まあ、趣味だけど。」


「あれ?本職じゃないんですか?」


「…昼間はお針子です。」


「へぇー、じゃあ、昼間は歌いながら裁縫をしている感じですか?」


「いえ、出来ませんよ、仕事中にそんなこと。…鼻歌がせいぜいです。」


「そっか。そいつは残念…。おっと、申し遅れました。私はケント・タイラーと申します。お近づきの印にこちらをどうぞ。もちろん無料です。」


「はぁ、私はココです。これは何?ろうそく?」


「ろうそくですが…、少々香りを付けております。まあ多少寝付きもよくなるかもしれません。」


「へぇ~、珍しい。たしかに香りがありますね。」


彼女がろうそくを手に持ち、鼻を近づけてスンスンと香りを確認している。


「他にも商品を扱っていますので興味がありましたら、是非お声を掛けて下さい。」


「…タイラーさんは名字からは洋服を扱っていそうですが、商人なんですか?」


「まあ、そんなところです。なにぶん始めたばかりで…、今は軍事関係の商売のネタ探しで色々な方に話を聞いて回っております。ココさんもその関連でお話があれば、なんなりとお教え下さい。お話しによっては商品も多少お安く致します。」


「成る程、良い話ですね。まあ気が向いたら、協力します。」


「そうですか。では、何かありましたら、なんなりと。」


その晩はそれで彼女と別れ、その後、何度か彼女の演奏を聴く機会もあった。時には酔っ払いに絡まれる彼女を助けたりもした。

面白いと思って頂けたら、嬉しいです。

しばらく作品をアップ出来そうです。


道 バターを宜しくお願いします。


他にも作品をアップしています。

作者ページを見て頂くと、なんと!?すぐに見つかります(笑

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