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第13話 ■体力テスト□

 ■異世界生活二日目■



 目が覚めると、いつもの自分の部屋とは違う光景が広がっていた。


 あ、そっか。私、異世界に来たんだった。


 猫の姿のルナはまだ丸くなったまま、気持ち良さそうに寝ている。


 ルナを起こさないようにそーっとクローゼット部屋に入った。

 たくさんある服の中から、一番動きやすそうな半袖の服を着る。


 あと、髪もボサボサだ。

 確かベッドの向かい側にドレッサーがあったはず…。



 何かないかな……。

 あ、あった。ブラシやヘアゴム、シュシュにヘアピン……いっぱいあるなぁ。


 とりあえずブラシで髪をとかそう。




 寝起きのボサボサの髪をとかしていたら、ルナがむっくりと起きた。


「おはよぉ……。クロム、起きるの早いね…。」

「あ、おはよう、ルナ。私もさっき起きたところなの。」

「そうなんだ…。じゃあ私着替えてくるね。」


 そう言って、ルナは「ふわぁ…。」とあくびをしながらクローゼット部屋に入った。



 それからすぐにルナは着替えて出てきたので、二人で一緒に部屋を出てメフィスの部屋へ行こうとした。


 でも、すでに扉を開けたところでメフィスが待っていたので、その必要はなかった。



「おはようございます、クロム様、ルナ。」

「おはよう、メフィス。」

「おはよー。」


 というか、メフィスはいつからここで待ってたんだろう……。



 それに、今はフード付きのローブは着ていないけど、代わりに仮面を被っている。

 そんなに素顔が見られたくないのか………。



「さあクロム様、今日から魔王としてもっと強くなるために、訓練を始めますよ!」


 いよいよ来てしまった…。

 魔王の側近メフィスによる、地獄の訓練が!





「ではまず、クロム様の運動能力を測るので、ここから向こうの壁まで全速力で走ってみてください。」


 私の部屋のトレーニングルームに入って、散らかっていた訓練用の道具を端に寄せたメフィスが言った。


 この入り口側の壁から向こう側まで、たぶん50メートルぐらいかな。


 ちなみに、私のもとの世界での50メートルのタイムは9秒台前半だった。



 もし今測ってタイムが10秒ぐらいだったら幻滅されるだろうなぁ…。



 そう思いながらも、右足を入り口側の壁につける。


「では、いきますよ。」

 その一言で、私は走る構えをとる。


「がんばれー、クロムー。」

 ルナが応援してくれているのが聞こえる。


「よーい……………どん!」


 合図とともに、今出せる限りの全力を振り絞って、がむしゃらに走る。


 ……なんだか、いつもよりも景色が流れるのが速いような…。こっちに来てちょっとは運動能力上がったのかな。



 そんなことを考え終わる前に、私は入り口とは反対側の壁についた。


「えっと……クロム様のタイムは…。」


 (お願いします、遅くても9秒台前半ぐらいで……。)


「………!?ご、5秒36!?

 私より少し速いではないですか!

 さすがです、クロム様!」



 ………ん?私の聞き間違いだったのかな?


「ごめんメフィス、もう一回お願い。」

「ですから、5秒36です!

 私のタイムは5秒66なので、私よりも速いんですよ!」

「え、ほんとだ、すご!!私と同じくらいじゃん!!」


 どうやら、聞き間違いではなかったようだ。


 信じがたい、この私が5秒で50メートルを走るなんて……。

 目の前の二人なら納得だけど。



「ちょっと、もう一回測ってもらっていい?」

「はい、クロム様が望まれるなら、何度でも測りますよ!」



 …その後、何度か測ってみたけど、どれも5秒台前半におさまっていた。


 それに、たくさん走ったにも関わらず、全然息切れしてない。


 これが、私のステータスなんだ……。



「ありがとう、メフィス………。」

「はい!

 …ところで、もう昼ですね。少し休みましょう。」

「はーい。」

「この休憩のあとも、運動能力測定テストは続きますよ!」

「頑張れクロムー。」




 その後、十分休憩した私は、ハンドボール投げ、反復横飛び、マット運動、跳び箱など、これでもかというぐらいたくさんのテストを受けた。


 その結果のどれもが、もとの世界以上だった。


 それに、不思議なことに全くしんどくない。


 これだけ運動したのに疲れないってことは、明日からの訓練も大丈夫そうだね。




「では、今日はお疲れ様でした。

 ごゆっくりお休みくださいませ。」

「うん、ありがとう、お休み。」

「おやすみー。」


 私とルナは昨日と同じように、着替えてベッドに入った。

 そういえば、明かりの消し方を聞くの忘れちゃった。まあいいや。



「いやー、レベル1の時点で私と同じくらいの運動能力って、ほんとすごいよねー。

 さすが、私を召喚するだけあるよね。」


 ベッドの上で、猫の姿に戻ったルナが話しかけてきた。


「あはは…。

 私、もとの世界では運動音痴だったから、今日あんな結果が出せて、自分でもびっくりしたよ」

「へー、意外だなぁ。」


 ルナには私のこと、どう見えているんだろう……。運動できそうに見えてるのかな…。


「ふわぁ……そろそろ寝るね、お休み。」

「あ、うん、おやすみ。」


 やっぱり猫なだけあって、マイペースというかなんというか……。

 私もそろそろ寝よ。


 疲れはないはずだけど、布団が気持ちいいからすぐに意識が遠のいていった……。





 ──その日、王城でもクロムと同じようなテストを勇者たち三人は受けていた。

 だが、三人のテスト結果は、どれもクロムを下回るものだった………────

 50メートルを5秒台で走るのって、もう世界レベルに速いですよね。

 確か、100メートル9秒96ぐらいでしたっけ?日本で一番速い陸上選手のタイムは。


 私の学校でも、知ってる限りで100メートル走が一番速いのは12秒台だったはずです…。


 私も陸上部に入っていたらもっと速くなっていたかもしれませんね。

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