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第8話 ■心配事□

「では、今からご案内しますので、私に付いてきてください。」


 俺たちが着替えて用意ができたことを確認して、兵士が言った。


 俺たちは、前を歩く兵士に付いていく。


 光凛に話しかけようとして隣を見ると、光凛がなんだか落ち込んでいるように見えた。


「ん、どうした?光凛?」


「え、あ!な…何にもないよ……。

 気にしないで!」


 (絶対に何かあるなこれ…。)


「大丈夫か?別に言いたくなかったらいいけど…。


 …言いたくなったらいつでも言えよ。」


「あ、ありがとう。


 …そ…その、黒夢は元気かなって…。


 ほら、いきなり現れた不審者みたいな人に付いていったから、変なことされてないかなって…。」



 …確かにアイツ、運動音痴だからなぁ…。



「……ま、アイツのことだから元気にしてるだろ。

 それに、俺の勘はよく当たるしな。


 アイツは、俺らが迎えに行くまでは絶対に生きてるよ。だから、心配しなくてもいい。」


「うん、ありがとう…。」


 そこまで言ったところで、光凛を挟んだ反対側にいる陽瀬の顔が目に入った。



 うん、コイツまたニヤニヤしてやがる。



「お前、何ニヤニヤしてんの?」

「いやぁ?なにもぉ〜?」

「なんか腹立つから一発殴らせろ。」

「あ、すみません。」




 (会話の様子だけはいつも通りなのに…)


 やっぱり、まだ異世界に召喚されて勇者(?)になったこの現実を受けきれていないようだ。


 元の世界でも同じように時間は進んでいるはず。今頃、家族は俺たちのこと探してるだろうな……。



 しばらく歩いていると、俺たちの部屋と同じぐらいの大きさの扉が現れた。

「ヒカリ様、ヒナセ様、リョウ様、着きました。ここが食堂です。」

 兵士はそう言うと、その扉をガチャリと開いた。



 中に入ると、そこには豪華なインテリアたちが揃っていた。


「うわぁ。ひろーい!

 それに、とってもオシャレ!」

 光凛が目をキラキラさせて感動している。



 やっぱこういうのって女子は好きなんだね。


 黒夢なら、どんな反応したんだろうか…。



「なんか、ほんとに異世界に来たって感じだよな。」

 驚きながら陽瀬が言った。


「あぁ。日本じゃこんなの見られないしな。」



「あ、見て見て!

 天井にシャンデリアがある!


 テーブルクロスもレースが付いててかわいい!!」

 かなり興奮した様子で光凛は部屋を見渡している。



 女子ってこんな派手なものが好きなの?


 …さっきまで元気なかったけど、あんなに笑顔で嬉しそうで、良かった……………。



「では、ここに座ってお待ちください。

 直に、国王陛下が参ります。」



「わかりましたー!」

 光凛、ほんとに嬉しそうだな。




 ─さ、とりあえず座って国王を待ちますか。─

 世の中の女の子が皆オシャレ好きではないですけど(私もそうですし)、なぜか豪華なシャンデリアとかを見るとテンション上がってしまうんですよねー。


 なんででしょう。不思議です。

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