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おぱんつものがたり  作者: くま
8/9

花壇とおぱんつ


我が学校では、校内美化の一環として校舎の裏庭に花壇がある。

まさか朝早くに登校して、校長と校内美化活動に精を出す日が来るとは。


見渡すと花壇は全部で3つあり、少し大きな印象だった。


一つは、赤い実をつけた、今にも食べられそうなプチトマトの花壇。


その隣は一面緑。瑞々しい葉が花壇を覆っていた。

こちらは何を植えてあるのか分からないが、家の食卓に並んだことのない植物に思えた。


『校長先生、雑草は?』

そう聞くと、プブフォ!と音を立て、激しく咳き込んだ。


「小松菜だよ。スーパーで見かけないかい?」


『俺が行くスーパーではあんまり』

あんまり、と答えたが見た覚えはなかった。


聞けば、かつては花が好きな先生いて、率先して手入れしていたらしいが、ここ1年花壇は全く使われていなかったそうだ。


「使わないのは勿体無いものなぁ。

人の目に触れる場所じゃないが、だからこそ生徒が利用してくれるのは嬉しいもんだよ」


そういうと、慣れた手つきで種を撒いていく。

何をしていいかも分からず、なんとなく黙って見ていた。


「そうだな、トマトを収穫しといて貰えるかな」

足元にあったハサミと小さめのバケツを渡される。


「茎を長めに残すのがポイントだそうだ。

実を傷つけないよう優しく包むように持ってな」


ハサミを持っていざ、と思うと、初めましてのことにどうも緊張してしまう。

試しに1番大きく実がなったプチトマトの茎を切ってみる。


ハサミを前にした茎はあっけなく無力に切られてしまい、左手の中にプチトマトが収まった。


それをバケツに入れるとそのあとは早かった。

15分くらいだろうか。花壇にあったプチトマトは、実に緑色の部分があるものは残して全て収穫した。


15分も向き合っていると、この赤い実を食べてみたくてたまらなくなった。

ひょいと摘んで試しにひとつ食べてみた。


甘い。

多少の青臭さは、むしろ清涼感を感じさせてくれるアクセントに感じられた。


なによりこんなに酸っぱさを感じないトマトは初めて食べた。


『校長先生、このトマト美味しいです。

よかったら食べますか?』

「ダメだよ!!」


振り返ると委員長がいた。


「そのミニトマトは地域の人たちに配るんだから!」

農のミニナイチンゲールはそう言った。


そんな大きな目的の為に栽培されていたとは知らなかった。


「で?」

『でって?』


「美味しかった?」

『お、美味しかった』


そう告げると、満面の笑みを浮かべて足早に去っていった。

一体いつから居たんだ。


〜キーンコーンカーン〜


8時15分を告げる鐘が鳴った。

「手伝ってくれてありがとうな。

後片付けはしておくから」


夢中で畑仕事に精を出していたせいで、これから授業が始まることさえ忘れていた。

『プチトマト、どうすればいいですか?』


足元を見て、思わず素っ頓狂な声が出た。

トマトを入れたバケツがなくなっている。


辺りを見渡すが、赤く輝くトマトが視界のどこにもいなくなっている。


「あぁ、さっき藤田くんが持っていったよ」

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