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おぱんつものがたり  作者: くま
7/9

玉ねぎとおぱんつ

翌朝も朝食の間、我が妹からの彼女いじりは続いたので、いつもより30分くらい早く家を出てきた。


今日は教室到着が1番かもしれないな。

その考えが頭をよぎると、達成してみたくなってくるもので、自然と足取りは早くなっていた。


正門が見えてくる。

いつもなら、竹刀を片手に1本ずつ構えた英語教師、スギヤマ=リック=ダイチこと、メタボが立っているはずだが、今日はまだ8時まで20分もあるせいかその姿は見えない。


竹刀を持つメタボは、みんなから『BASARA』と呼ばれている。

こればかりは、言葉の意味と正確に向き合っていると言わざるをえない。

早く本場の発音で、レッツパーリー!と言ってほしいものだ。


正門を通りグラウンドを脇目に下駄箱へと向かう。


「おはようございます!」

「おざーっす!」

「ざいまーすっ!」

「おはす!」


ランニング中の野球部員が、律儀に帽子を取り、わざわざ足を止めて挨拶する。

個人的には、おはす!が好きだな。


下駄箱に到着。

ここを見れば自分がクラスで何番目に到着したのかが分かる。


下駄箱には校内で履くための、校章のマークが印字されたスリッパが入っている。

もし誰かの靴があれば、今日は1番じゃないってことだ。


スリッパに履き替える時に、どうやら女子が一人、先に来ていることに気づいた。

ローファーと呼ばれる靴が光を反射していた。


今の気持ちを反映するかのような、曇りがちな空を仰ぐ。

なんとなく重い足取りで教室のドアを開けると、背の小さなポニーテールの女の子が振り向いた。


「後藤くん!?あっ、おはよ!早いね笑」

昨日から髪の束が半分になった、クラス委員の藤田凛がいた。


『おはす!』

「おはす!?笑」


『昨日は玉ねぎありがと。親と妹も喜んでた』

「いえいえ笑 お礼ならおじいちゃんに。

それより後藤くん今日は早いんだね」


『うん。。妹に玉ねぎが多いっていじられてさ笑』

「一個盗んだんじゃないかってこと?」


『そう笑 だから委員長と帰ったら、偶然キタジマさんの孫だったって話して』

「うんうん」


『そしたら付き合ってるとか、家族公認の仲だとか言われてさ』

「う、うん///」


『どんな顔してていいか分かんなくなって早めに出てきた』

「そ、そうなんだっ!それはー...あれだよね!

困るよね!そういうの!!」


『妹も親もイジるの好きだから笑

それもそうなんだけどー...委員長に聞きたいことがあってさ』

「ふぇっ!?///

あっ!日誌取りに行くからトイレいくからっ!」


そういうとあっという間に見えなくなってしまった。


仕方なく廊下と反対側の窓から外を覗き込む。

竹刀を振り上げて、朝の挨拶をするBASARAが見えた。


委員長、日誌をトイレで保管してるんだな。

俺も中学の時部室の鍵を、部室棟の柱に隠していつでも使えるようにしてた。


またやりたいな。


「おっ。後藤くんか?早いな」

振り返ると佐川校長が立っていた。

白い口髭をたくわえ、白シャツにアーガイルのセーターを着た、細身で年配の好々爺だ。


「時間あるなら、ちと花壇手伝ってくれ」

ついていくと、校舎の裏手にある花壇に道具が一色と、新しく植える種の袋、バケツが置いてあった。


「藤田くんが色々教えてくれてな、ちょうど種まきにいい時期なんだと」

『これから何を植えるんですか?』


「ん?あぁ...玉ねぎだよ」

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