鍋とおぱんつ
我が妹の一言から、我が家は小さなパニックに陥った。
「兄上!初デートはやっぱりサンカク公園がいいよ!
あそこの野良ネコ愛想よくて膝に、にゃって乗って来るから話題にもなるし、もはや猫カフェデートだよ!!」
『確かに乗る時、にゃって声出すし人に慣れてるけどカフェ要素が皆無だろ!あと彼女じゃないから!」
「あんたも年頃の男の子なのねー^^ニヤニヤ
お母さんもあんたの歳の頃は浮ついた話の一つや二つあったものよー^^ニヤニヤ
どうせあんた不器用なんだから、どーんと構えて、ちゅーとかしとけばいいのよー^^ケラケラ」
『我が母の浮ついた話なんて聞きたくないよ!
不器用かもしれないけど、俺は真面目に接する方だよ!
あと彼女じゃないから!!』
一通り我が家族にいじられる。
いつもと同じだけど、色恋沙汰など17年経験したことのない俺としては対処方法がわからぬ。
分からないことを悟られると、恥ずかしいやら何やら。
「ママ上...あと、これも...」
踵を返した声のトーンで、いつになく神妙な面持ちで取り出だしたるは、皮の向かれた玉ねぎ6つ。
それを見た我が母もまた、神妙な面持ちになる。
「あんた...これ...キタジマさんとこの特売に行ったんじゃないの?」
あっ...察するに余りある。
「あんたを泥棒なんてする子に育てた覚えは...グスン」
目に涙を浮かべる我が母。
目に笑いを浮かべる我が妹こと悪魔。
「ママ上...泥棒したんじゃないの!
兄上の彼女が、キタジマさんのお孫さんらしくて、ご家族にご挨拶に行ったら一つ貰ったんだって!」
「家族公認なの!?」
『家族公認だとっ!?!?!?』
その後悪魔には、ひとしきり全身くすぐりの天罰を与えて、すべての誤解を解いた。
我が母の涙は、玉ねぎの臭気にあてられただけだった。
・・・。
「なーるほどねー^^ニヤニヤ
あ゛ぁ゛〜。今日のスープは一段と美味しいねー^^
玉ねぎが効いてるー^^ニヤニヤ」
「ほーんとねー^^にんまり
兄上さまさまだー^^ニタニタ」
昔っから、こうした話題は何度も掘り返され、主に俺がいじられる。
うちにはこうした、出がらしの話題が頭の引き出しにたくさんストックされているのだ。
とにかく早くしまってほしい。
「でも凛ちゃんはキタジマじゃないのねぇ^^
お父さんが婿入りでもしたのかな^^?」
「ママ上、婿入りってなに?」
『まだかなり早いから気にするな』
「でも来年には16歳だよ!婚期なんだから!
兄上なんて婚期をもう1年も逃してるんだよー!
あっ...1年半か!」
「違うわよー^^ニヤリ
17年半よー^^ケラケラ」
光陰矢の如し!!婚期なんて知らん!
生きてる限り婚期はあるんじゃい!
「根気が必要ねー^^ニヤニヤ
お母さんには無理だったわよー^^しんみり」
「ママ上、上手い!!」
「でもあんまり名前のことは聞かない方がいいわねー^^
男ならどんなこともどーんと受け止めて、ちゅーしてなさい^^ケラケラ」
『はいはい。ごちそうさま』
半ば無視して茶碗を片付けた。
聞くなって言われると余計に気になる。
委員長と2人きりになれたら聞いてみるか。
「ちゃんとお礼言っておいてねー^^
おやすみー^^」
そういうと我が母は、化粧を直して仕事に出ていった。