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おぱんつものがたり  作者: くま
2/9

2話 課題とおぱんつ

まずいまずいまずいまずい。

すっかり忘れていた。今日は、、、


今日はパンティの日だった。


『い、いや。違う。。』

声が消え入る。

『まっ!待って後ずさらないで!!

聞゛いて!!!』


思ったより声がでかくなっていたようで、廊下にいる、なんかやってる奴らのフォーカスがこちらに集まるのがわかる。


ちっちゃいツインテールは動揺した表情を浮かべている。


とにかく、今ここに留まりたくない。


『お願いです来てください』

ボソッと声をかけて、ある部屋に向かって歩き出す。ツインテール(小)の足音がすぐ後ろに聞こえ続ける。


やがて2人分の足音しか無くなって、足を止めた。

すかさず真横の扉を無言で引く。


少し抵抗を受けながら、扉をねじ伏せる。


「ここって、、」


その言葉を無視して部屋に入る。

相変わらず埃っぽい。窓から入る日差しが、そこかしこにオーブを捉える。


かなりの抵抗を受けながら、(小)は扉を閉めて、2人だけの場所になった。


『課題、、返すよ。どうせやらない』

「あっ!う、、うん。ごめん。

あの、、ほんとごめん」


紙が受け渡される音がパリパリと鳴ったのを最後に、いくばくかの沈黙が流れた。


「・・・さっきの。聞いてってのh」

『パンティの日なんだ』


耐えきれない思いを遮られないよう、伝える。


小さなファルセットが、は。

もしくは、へ。と音を作る。


『・・・(うち)お金なくて。

パンツ買えないんだ。だから、あるもの履くしかなくて』


「・・・そう・・なんだ。

あ、、あのっ!100均にも売ってるんだよ。

100円で買えるよ」


『108円な。

数ヶ月後には110円か。

でもそのお金持って、月一の特売日にスーパー行けば玉ねぎ5つ買えるから』


「キタジマ?」


若者が自らその名を口にすることに驚いて、顔を上げる。

目が合うと、(小)は俯いた。


下町のと言うには小汚い。

昭和チックではどうかしてる。

レトロと例えるにはあまりにもゲテモノ。


ソレは、ご多聞に漏れず消えてゆくべきスーパーのひとつであり、()のダーウィンの名言を否定する唯一の存在である。


スーパー・キタジマだ。


(小)が、月に一度の特売日の存在まで知っているとは。


『そっ、そうだよ。キタジマ』


やれば出来るけど面倒くさいからやらない、に次ぐダサい言葉を言わされてしまった気がした。


「なんか、、ごめん。

・・好きで履いてるわけじゃないなら良かった笑

あと、これ置いとくから。

。。じゃあっ」


そういうと、抵抗するドアをねじ伏せて教室へ戻って行く。


背中を見送ると、長机の上に置かれた課題とやらと、久しぶりに目を合わせた。


寝起きの人間のような目つきをして、課題以上の存在感を放つプリント。


メタボリック先生の英語の課題はたぶん変わっていて、先生自身も少し変わっている。


「ニンゲン、コトバのほかはイッショ!」という口癖を引っさげて教壇から放つ熱量は、少なからず地球温暖化を助長させているはずだ。


見ると、プリントの中央には、外国人が目を見開き頭を両手で抱えながら叫んでいる写真。

その周りにはいくつかの英語が書いてある。

どうやら英語の下のスペースに日本語訳を書けばいいらしい。


「文字と向キアウのタイヘン!人と向キアウのカンタン!!」

というメタボの口癖通り、英語は見ずに写真の外国人をじっくり見る。


びっくりしてるのかな。

涙が滲んでいるような。でも口角は上がってる。


俺がこんな表情になるとしたら。。

クリスマスにサンタがやって来て、次の日靴下の中に5枚くらい新品のパンツ入ってるな。


クスリと笑いがこぼれた。

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